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【横浜鶴ヶ峰院】心臓の周りに水がたまる?獣医師が教える『心タンポナーデ』から愛犬・愛猫を守る知識

【循環器診療】森山 寛大

【担当科目】総合診療科・循環器科

 

 

 

【循環器診療】佐藤 貴紀

【担当科目】総合診療科・循環器科・栄養管理科

 

 

今回は、ある日突然、愛犬や愛猫の命を脅かす危険性のある「心タンポナーデ」という状態についてお話しします。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、心臓の働きを物理的に邪魔してしまう非常に恐ろしい病態です。いざという時に慌てないよう、どのような病気なのか、原因やサインについて一緒に学んでいきましょう。

1. 疫学(どんな子に多いの?)

心タンポナーデは、猫さんよりも圧倒的に犬さんで多く見られる病態です。 犬さんの中でも、特に中〜高齢の大型犬(ゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパードなど)に発生しやすい傾向があります。また、フレンチ・ブルドッグなどの短頭種でも特定の原因によって引き起こされることがあります。

一方、猫さんでの発生は比較的まれですが、決して起こらないわけではありません。

2. 原因(なぜ起こるの?)

心臓は「心膜(しんまく)」という薄い袋に包まれています。通常、この袋の中には少量の液体(心嚢水:しんのうすい)が入っており、潤滑油の役割を果たしています。 しかし、何らかの原因でこの袋の中に大量の液体(血液など)が急激に溜まると、心臓が外側から圧迫されて膨らむことができなくなり、全身に血液を送り出せなくなります。これが「心タンポナーデ」です。

主な原因は以下の通りです。

  • 犬さんの主な原因:
    • 腫瘍(ガン): 最も多い原因です。血管肉腫(特にゴールデンに多い)や、心基底部腫瘍、中皮腫などが心臓から出血を起こします。
    • 特発性(原因不明): 腫瘍などの明らかな原因がないのにも関わらず、心膜から出血が起こるものです。
    • その他: 左房破裂(重度の僧帽弁閉鎖不全症の末期)、外傷、重度の感染症など。
  • 猫さんの主な原因:
    • 猫伝染性腹膜炎(FIP)
    • 心筋症による重度の心不全
    • リンパ腫などの腫瘍

3. 症状(どんなサインに気づくべき?)

心臓から全身に血液が回らなくなるため、「突然のショック状態」に陥ることが多いのが特徴です。

  • 突然ぐったりして動かなくなる(虚脱)
  • 呼吸が浅く速い、苦しそうにしている
  • 歯茎や舌の色が白っぽい、または青紫になっている(チアノーゼ)
  • ふらつく、倒れる
  • お腹が膨れてきた(腹水:右心不全により血液が滞留するため)

これらの症状が見られた場合は、一刻を争う救急疾患です。夜間であってもすぐに動物病院へ向かってください。

4. 診断(病院でどんな検査をするの?)

動物病院では、スピーディーかつ正確に診断を下す必要があります。

  • 超音波(エコー)検査: 最も重要で、確実な検査です。心臓の周りに水が溜まっているか、心臓が圧迫されているか(特に右心房・右心室の虚脱)、腫瘍のしこりがないかを確認します。
  • レントゲン検査: 心臓のシルエットが丸く大きく拡大しているか(球形心)や、肺・胸の状態を確認します。
  • 心電図検査: 波形の大きさが一拍ごとに変わる「電気的交代現象」という特異的なサインが出ることがあります。

5. 治療(どうやって命を救うの?)

心タンポナーデを起こしている場合、まずは「心膜穿刺(しんまくせんし)」という救命処置を行います。 これは、胸の外側から細い針を刺し、心臓の周りに溜まった液体を抜き取る処置です。液体が抜けると心臓が再び膨らむことができるようになり、劇的に症状が改善します。

状態が落ち着いた後、原因疾患に対するアプローチを行います。

  • 腫瘍の場合: 外科手術による腫瘍の切除や心膜切除(液体が溜まっても心臓が圧迫されないようにする手術)、抗がん剤治療などを検討します。
  • 特発性の場合: 一度の水抜きで治ることもありますが、再発を繰り返す場合は心膜切除術が推奨されます。

6. 予後(これからの見通しは?)

予後(今後の見通し)は、「何が原因で水が溜まったのか」によって大きく異なります。

  • 特発性(原因不明)の場合: 予後は比較的良好です。
  • 血管肉腫の場合: 非常に悪性度が高く進行が早いため、残念ながら予後は厳しい(数週間〜数ヶ月)ことが多いです。
  • 心基底部腫瘍の場合: 成長がゆっくりなことが多く、心膜切除などを併用することで年単位で長生きできることもあります。

7. 予防(飼い主様にできること)

残念ながら、心タンポナーデ自体を直接予防する方法はありません。 しかし、「早期発見」が何よりも重要になります。

  • 定期的な健康診断: 特に中〜高齢の大型犬は、年に1〜2回、血液検査だけでなく「胸部レントゲンや心臓のエコー検査」を含めた健康診断を受けることを強くお勧めします。症状が出る前に腫瘍を見つけられる可能性があります。
  • 日々の観察: 「散歩ですぐに疲れやすくなった」「最近少しお腹が張っている気がする」といった些細な変化を見逃さないことが、早期発見の糸口になります。

獣医師からのメッセージ 

心タンポナーデは、飼い主様にとっても動物にとっても非常に恐ろしい緊急事態です。しかし、迅速に病院で処置を受ければ、ひとまずの危機を脱することができる病態でもあります。愛犬・愛猫の「いつもと違う」サインに気づいたら、迷わずご相談ください。

ハグウェル動物総合病院の体制

セカンドオピニオン設置

今回の咳か、くしゃみか、逆くしゃみかの判断がわからないケースなど、的確な診断が必要な場合は、ハグウェル動物総合病院の循環器科をご予約ください。症状に対して迅速な対応を行います。

必要な検査として身体検査、血液検査、心エコー検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧検査などを実施して、原因を特定し適切な治療を行います。

早期発見をしながら、どのタイミングで、どの投薬が望ましいのか、循環器認定医としっかり相談し決定することをお勧めいたします。

また、専門診療の循環器科(森山 寛大 獣医師・佐藤 貴紀 獣医師)を設けているため、セカンドオピニオンの受け入れも行っております。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。

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