
“糖尿病は悪化する病気”というのをご存知ですか?
適切に管理されている糖尿病ではほとんどありませんが、糖尿病だと気づかずに無治療のままでいたり、治療中でも適切なインスリン量でなかったりすると、“ケトアシドーシス”という危険な状態に陥ります。
今回は、犬猫さんの糖尿病性ケトアシドーシスについて、どのような状態なのか、どんな症状が危険サインなのか、動物病院でどのような治療を行うのかを解説します。
目次
糖尿病性ケトアシドーシスとは?
糖尿病性ケトアシドーシスとは、糖尿病が悪化して起こる重篤な代謝異常です。
体の中でインスリンが足りない、あるいは十分に働かない状態になると、血液中のブドウ糖をうまく利用できなくなります。すると体はエネルギーを得るために脂肪を分解し、その過程でケトン体という物質が多く作られるようになります。
このケトン体が体内に過剰にたまると、体が酸性に傾きます。
さらに高血糖や脱水、電解質異常も加わることで、全身状態が急激に悪化します。これが糖尿病性ケトアシドーシスです。
単なる「血糖値が高い状態」とは異なり、全身に強い負担がかかるため、早急な治療が必要になります。
どうして起こるの?
糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリン不足が中心になって起こります。
糖尿病がまだ診断されていない子で、最初の発症時に起こることもあれば、すでに糖尿病と診断されている子で、治療が不十分なときや別の病気が重なったときに起こることもあります。
きっかけとしては、次のようなものが考えられます。
- 糖尿病の未治療
- インスリン治療の中断
- インスリン量が合っていない状況が長期間続く
- 感染症、炎症性疾患、ストレス、ステロイド投与によるインスリン抵抗性
つまり、糖尿病そのものというよりは、糖尿病の子が何かをきっかけに急に悪くなる状態として理解するとわかりやすいでしょう。
どんな症状がみられるの?
- 急激な食欲の低下
- 元気がない
- ぐったりしている
- 嘔吐・下痢
- 体重が減る
- ふらつき
- 意識がぼんやりしている
すでに糖尿病と診断されている犬猫さんで「最近食べない」「吐いている」「急に元気がなくなる」といった症状がいられたら、特に注意が必要です。
猫さんでは、もともと多飲多尿や体重減少がみられていたところに、急に食欲が落ちてぐったりしている形で気づかれることもあります。
早期の治療介入で救命・回復が十分可能な病態でもある一方で、治療が遅れれば高確率に致死的でもあります。
動物病院で行う検査
糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる場合は、すぐに全身状態を評価しながら検査を行います。
血液検査
血糖値の確認に加えて、脱水の程度、腎機能、肝機能、ミネラル異常、酸とアルカリのバランスを確認します。
特にカリウムやリンなどの異常は治療方針に大きく関わるため重要です。
尿検査
尿中の糖だけでなく、ケトンの有無を確認します。
糖尿病性ケトアシドーシスでは尿中にケトン体が検出さることが多いです。
併発疾患の評価
血糖コントロールが不良の場合、膵炎や基礎疾患が関わっていることも少なくありません。
必要に応じて、画像検査などや外注検査も行います。
原因を見逃さずに対応することが、治療の安定につながります。
治療はどうするの?
糖尿病性ケトアシドーシスは、ご家庭で対応できる状態でなく、数日間の入院治療が必要になります。
点滴治療
まず重要になるのが、脱水と循環の改善です。
点滴により水分と血流を補い、ミネラルのバランスを補正します。
とくに、血中のカリウムやリンの異常がよく見られます。
これらは心臓や筋肉、神経の働きにも関わるため、とても重要です。
インスリン治療
高血糖の改善とケトン体の産生を抑えるために、インスリンを使って慎重に血糖値を下げていきます。
急激に血糖値を下げすぎないように、細かいモニタリングを行いながら調整していきます。
併発疾患の治療
感染症や膵炎などが背景にある場合は、その治療も同時に行います。
単に血糖値を下げれば治療終了というわけではなく、全身状態を支えながら原因に対処しないと、ケトアシドーシスが再発してしまう可能性があります。
こんなときはすぐに受診を
次のような症状がある場合はすぐに受診が必要です。
- 食べない
- 吐いている
- ぐったりしている
- ふらつく
- 反応が鈍い
- 糖尿病の治療中で急に体調が悪くなった
特に、糖尿病の子で食欲がない場合は注意が必要です。
「少し様子を見よう」としている間に悪化してしまうこともあるため、早めの受診が大切です。
まとめ
ケトアシドーシスは糖尿病の中でも特に注意が必要な状態です。進行してしまうと命に関わることもありますが、日々の管理と早期発見によって防ぐことのできる病気です。
大切なご家族が安心して過ごせるように、日ごろのチェックとあわせて当院の健康診断もぜひご活用ください。
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