

【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
今回は、特に小型犬を飼育されているご家族からご相談を受けることの多い「水頭症(すいとうしょう)」について詳しく解説します。
脳の病気と聞くと不安になる方も多いと思いますが、正しい知識を持つことが、愛犬・愛猫の命を守る第一歩となります。
目次
1. 疫学:どんな子がかかりやすいの?
水頭症は、圧倒的に犬さん、特に超小型犬や短頭種に多い病気です。猫さんでの発生は比較的稀とされています。
- 好発犬種: チワワ、トイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、マルチーズなど
- 短頭種: パグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、ペキニーズなど
特にチワワでの発生率が高く、先天性(生まれつき)のケースが多く見られます。生後数ヶ月〜1歳未満の若い時期に症状が現れることが一般的ですが、中高齢になってから発症するケースもあります。
2. 原因:なぜ水頭症になるの?
脳と脊髄の周りには「脳脊髄液(のうせきずいえき)」という液体が循環しており、脳を衝撃から守るクッションのような役割を果たしています。この液体の「作られる量」と「吸収される量」のバランスが崩れたり、通り道が塞がれたりすることで、脳室(脳内の空洞)に液体が過剰に溜まり、脳を圧迫してしまうのが水頭症です。
原因は大きく分けて2つあります。
- 先天性(生まれつき): 遺伝的要因、胎児期の感染症、脳の奇形などが原因とされています。小型犬に多いのはこのタイプです。
- 後天性(生まれた後): 脳腫瘍、脳炎・髄膜炎、頭部の外傷、脳出血などによって脳脊髄液の通り道が塞がれることで起こります。年齢を問わず発生します。
3. 症状:気づいてあげたい小さなサイン
脳が圧迫される場所や程度によって、症状は様々です。「性格のせいかな?」と見過ごされてしまうことも少なくありません。
- 見た目の変化: 頭の形がドーム状に丸く膨らむ(アップルヘッド)、目が外側や下を向く(斜視・落陽現象)、頭蓋骨の頂上に隙間がある(泉門開存:ペコが開いている)
- 行動の異常: トイレが覚えられない(学習能力の低下)、ぼーっとしていることが多い、目的もなくグルグル歩き回る(旋回運動)、壁の隅に頭を押し付ける
- 神経症状: まっすぐ歩けない(ふらつき)、足の麻痺、視力障害(物にぶつかる)、てんかん発作、意識障害
これらの症状が複数見られる場合や、徐々に進行している場合は要注意です。
4. 診断:どうやって見つけるの?
水頭症を正しく診断するためには、段階的な検査が必要です。
- 身体検査・神経学的検査: 頭の形、目の動き、歩き方、反射などを丁寧に確認します。
- 超音波(エコー)検査: 頭頂部に泉門(ペコ)の開きがある場合、そこから超音波を当てて脳室の広がりを簡易的に確認することができます。
- MRI・CT検査(画像診断): 確定診断には必須です。全身麻酔が必要になりますが、脳室の拡大具合や、脳腫瘍・脳炎といった後天性の原因が隠れていないかを正確に評価します。
5. 治療:どのような選択肢があるの?
水頭症の治療には、「内科治療」と「外科治療」の2つがあります。
- 内科治療(お薬での治療)
- 目的: 脳圧を下げ、症状を緩和することです。
- 方法: 脳脊髄液の産生を抑えるお薬(ステロイド剤や利尿剤、胃酸分泌抑制剤など)を使用します。発作がある場合は抗てんかん薬を併用します。
- 適応: 症状が比較的軽度な場合や、麻酔のリスクが高く外科手術ができない場合に選択されます。根本的な解決にはなりませんが、生涯にわたってお薬でコントロールできる子もいます。
- 外科治療(手術)
- 目的: 溜まりすぎた脳脊髄液を別の場所に流し、物理的に脳圧を下げる根本的な治療です。
- 方法: 「脳室腹腔シャント術」が一般的です。脳室からお腹の中(腹腔)へ細いチューブ(シャント)を通し、余分な髄液をお腹に流して吸収させます。
- 適応: 内科治療で症状が改善しない場合や、進行が早い場合に検討されます。専門的な技術が必要な手術です。
6. 予後:治療の後はどうなるの?
予後(今後の見通し)は、発見された時の重症度、脳へのダメージの蓄積具合、そして治療への反応によって大きく異なります。
- 軽度の場合: 内科治療によく反応し、一般的な犬猫さんと同じように天寿を全うできる子もたくさんいます。
- 外科治療を受けた場合: 手術が成功すれば、劇的に症状が改善し、元気に走り回れるようになることも多いです。ただし、チューブの詰まりや感染症といった術後合併症のリスク(定期的なメンテナンスや再手術が必要になる可能性)は理解しておく必要があります。
- 重度の場合: 発見が遅れ、脳への不可逆的なダメージが大きい場合は、治療を行っても症状が残ったり、命に関わることもあります。
7. 予防:ご家族にできること
残念ながら、先天性の水頭症を予防する確実な方法はありません。また、遺伝的背景が強いため、水頭症と診断された子は繁殖を控えるべきです。
飼い主様にできる最大の予防・対策は、「早期発見・早期治療」に尽きます。
- 子犬・子猫をお迎えしたら、日頃からスキンシップを兼ねて頭の形や目の動きを観察しましょう。
- 「歩き方がおかしい」「最近怒りっぽくなった」「発作を起こした」など、少しでも気になることがあれば、「まだ若いから」「気のせいかも」と自己判断せず、早めに動物病院をご受診ください。
- 後天性の水頭症を防ぐためには、頭部の打撲を防ぐ環境作りや、感染症予防(ワクチン接種など)が重要です。
愛犬・愛猫の異変は、ご家族が一番よく気づくことができます。水頭症は怖い病気ですが、適切な治療とサポートによって、穏やかな日々を取り戻すことは十分に可能です。不安なことがあれば、いつでもかかりつけの獣医師にご相談ください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
神経症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT(脳構造評価)、(理想的には)脳波検査、CSF(髄液)検査、MRI検査を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「けいれん」「発作」「失神」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。
また、専門診療の神経科(中津 央貴獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返すけいれん発作など、治りが悪い症状の受け入れを行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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