
「昔から鼻水が出ている」
「猫風邪は治ったはずなのに、くしゃみだけが残っている」
「薬を飲むと良くなるけれど、しばらくするとまた鼻水が出てくる」
猫さんでは、このような鼻の症状が長期間続くことがあります。
一時的なくしゃみや鼻水であれば、いわゆる「猫風邪」などの感染症によって起こることも多いですが、症状が数週間から数か月以上続いたり、良くなったり悪くなったりを繰り返したりする場合には、慢性鼻炎・副鼻腔炎を起こしている可能性があります。
今回は、猫の慢性鼻炎・副鼻腔炎について、その原因や症状、検査、治療についてお話しします。
目次
慢性鼻炎・副鼻腔炎とは?
「鼻炎」とは、鼻の中を覆っている粘膜に炎症が起こっている状態です。
また、鼻の周囲には「副鼻腔」と呼ばれる空間があり、そこに炎症が起こった状態を「副鼻腔炎」と呼びます。
鼻腔と副鼻腔はつながっているため、炎症が両方に広がっていることもあります。
炎症によって鼻の粘膜が腫れたり、鼻水や分泌物が増えたりすると、鼻の中の空気の通り道が狭くなります。
その結果、くしゃみや鼻水、鼻づまりなど、さまざまな症状がみられるようになります。
どんな症状がみられるの?
慢性鼻炎・副鼻腔炎では、
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻づまり
- 「ズーズー」「ブーブー」といった鼻からの呼吸音
- 鼻水に血が混じる
- 涙や目やにが増える
- 食欲が低下する
などの症状がみられることがあります。
鼻水は透明でさらさらしていることもあれば、黄色や緑色で粘り気のある鼻水がみられることもあります。
症状が長期間続いている猫ちゃんでは、鼻の中に分泌物がたまることで鼻呼吸がしにくくなり、大きな呼吸音が聞こえることもあります。
また、猫は食べ物の「におい」を感じることが食欲にも大きく関係しています。
鼻づまりによってにおいを感じにくくなると、それだけで食欲が低下してしまうこともあります。
どうして慢性化するの?
猫さんの慢性鼻炎では、過去の猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスなどによる上部気道感染症が関係していることがあります。
特に子猫の頃に強い鼻炎を起こした場合、感染症自体が落ち着いたあとも鼻の粘膜や鼻腔内の構造にダメージが残ることがあります。
鼻の中には、本来、粘液とともに異物や病原体を外へ排出する仕組みがあります。
しかし、強い炎症によってこの働きが障害されると、鼻の中に分泌物がたまりやすくなり、細菌の二次感染なども起こりやすくなります。
その結果、
炎症 → 鼻の粘膜が傷つく → 分泌物を排出しにくくなる → 細菌が増殖する → さらに炎症が起こる
という悪循環が生じ、症状が長期間続くことがあります。
このような状態になった場合、完治は難しくなります。
慢性化した場合、「症状を上手にコントロールして、快適に暮らすこと」が治療の目標になります。
鼻水が続く=慢性鼻炎とは限りません
ここで大切なのは、長期間鼻水やくしゃみが続いているからといって、すべてが単純な慢性鼻炎とは限らないということです。
猫さんが慢性的な鼻症状を引き起こす病気には、
- 鼻腔内の腫瘍
- 真菌感染症
- 鼻腔内異物
- 歯の病気
- 鼻咽頭ポリープ
- 鼻腔内の構造的な異常
などがあります。
そのため、「昔から鼻炎だから」と決めつけず、症状や年齢、経過によっては詳しい検査が必要になります。
鼻水の「色」や「左右」も重要です
診察では、鼻水がどのように出ているかも大切な情報になります。
例えば、透明な鼻水なのか、黄色や緑色の鼻水なのか、血液が混じっているのかなどを確認します。
また、片方の鼻だけから出ているのか、両方から出ているのかも重要です。
片側だけの鼻水が長期間続く場合や、血液が混じった鼻水が繰り返しみられる場合には、鼻腔内の腫瘍や異物、真菌感染症、歯科疾患なども考える必要があります。
一方で、鼻水の色や左右だけで原因を特定することはできません。
症状が続く場合には、経過やほかの症状も合わせて評価することが大切です。
どんな検査をするの?
まずは鼻水やくしゃみがいつから続いているのか、左右どちらから出ているのか、鼻出血があるかなどを確認します。
また、口の中や歯の状態、顔の腫れや左右差などについても確認します。
必要に応じて、
- 血液検査
- レントゲン検査
- CT検査
- 鼻腔内視鏡検査
- 鼻腔内の組織検査
- 細菌培養検査
- 真菌などの感染症検査
などを行います。
特に慢性的な鼻症状の原因を詳しく調べる場合には、CT検査が非常に有用です。
CT検査では、鼻腔内の構造や鼻甲介の状態、副鼻腔、歯の根元、腫瘤の有無などを詳しく確認することができます。
また、腫瘍などが疑われる場合には、鼻の中から組織を採取して病理組織検査を行うこともあります。
どんな治療をするの?
慢性鼻炎・副鼻腔炎の治療は、原因や症状によって異なります。
細菌の二次感染が疑われる場合には、抗菌薬を使用することがあります。
ただし、慢性鼻炎では鼻腔内の構造や粘膜そのものに変化が起きていることも多く、抗菌薬だけで完全に治すことが難しい場合もあります。
また、鼻の中に粘り気のある分泌物がたまっている場合には、ネブライザーなどを用いて鼻腔内の分泌物を排出しやすくする治療を行うこともあります。
症例によっては、鼻腔内を洗浄することでたまった分泌物を取り除く処置を行うこともあります。
大切なのは、症状を完全になくすことだけを目標にするのではなく、鼻づまりや鼻水をできるだけ軽減し、猫ちゃんが快適に生活できる状態を維持することです。
慢性鼻炎では、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、長期間付き合っていく必要がある場合もあります。
お家でできること
慢性鼻炎の猫ちゃんでは、ご家庭でのケアも大切です。
鼻の周りに鼻水が固まっている場合には、ぬるま湯で湿らせたガーゼなどで優しく拭き取ってあげましょう。
室内が乾燥していると鼻の分泌物が固まりやすくなるため、適度な湿度を保つことも大切です。
また、鼻づまりによって食欲が低下している場合には、フードを少し温めることで香りを強くすると食べやすくなることがあります。
タバコの煙や強い香り、ほこりなどは鼻の粘膜を刺激する可能性があるため、できるだけ避けてあげましょう。
まとめ
猫さんの慢性鼻炎・副鼻腔炎は、長期間にわたって鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどが続く病気です。
過去のウイルス感染などをきっかけに鼻の粘膜や構造が障害され、炎症や二次的な細菌感染を繰り返すことで慢性化することがあります。
一方で、長く続く鼻水の中には、腫瘍や真菌感染症、異物、歯科疾患など、別の病気が隠れていることもあります。
特に、
- 片方の鼻だけから鼻水が続いている
- 鼻血が繰り返しみられる
- 顔が腫れてきた、左右差がある
- 鼻づまりが徐々に悪化している
- 食欲や元気が低下している
といった症状がみられる場合には、詳しい検査が必要になることがあります。
「昔から鼻水が出ているから」「猫風邪の後遺症だから」と決めつけず、症状が長期間続いている場合や、これまでと鼻水の様子が変わってきた場合には、一度動物病院にご相談ください。
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