
「最近、うちの子がよく体を掻いている」「軟便が続いている気がする」——そんなお悩みはありませんか? もしかすると、その原因は毎日食べている「ごはん」にあるかもしれません。今回は、犬猫さんの食物アレルギーについて、獣医師の視点から詳しく解説します。
目次
1. 疫学(どれくらい一般的なの?)
食物アレルギーは決して珍しい病気ではありません。皮膚のかゆみを訴えて来院する犬猫さんのうち、約10~20%が食物アレルギーに関与していると言われています。しかしながら、診断や治療が複雑であり、「かゆい=食物アレルギー」と誤診されてしまうケースも少なくありません。発症年齢は様々ですが、1歳未満の若齢で発症することもあれば、何年も同じフードを食べていて、ある日突然発症することもあります。また、アトピー体質と併発することも知られています。
2. 原因(何がアレルギーを引き起こすの?)
主な原因は、フードに含まれるタンパク質です。
- 犬さんで多いアレルゲン: 牛肉、乳製品、鶏肉、小麦、ラム肉など
- 猫さんで多いアレルゲン: 牛肉、乳製品、魚肉、鶏肉など
「このお肉が悪い」というわけではなく、その子の免疫システムが特定のタンパク質を「敵」と勘違いして過剰に反応してしまうことが原因です。
3. 症状(どんなサインに気をつければいい?)
大きく分けて「皮膚症状」と「消化器症状」が現れます。両方が同時に出る子もいます。
- 皮膚症状: 激しいかゆみ(特に顔回り、耳、足の先)、皮膚の赤み、脱毛。季節を問わず一年中かゆがるのが特徴です。
- 消化器症状: 慢性的な下痢、軟便、嘔吐、おならが多い、排便回数の増加など。
4. 診断(どうやって見つけるの?)
食物アレルギーの診断は、実は「血液検査」だけでは確定できません。最も確実なのは「除去食試験」です。
- 除去食試験:食物アレルギーに対するスタンダードな対応です。今まで食べたことのないタンパク質(新奇タンパク)や、アレルギー反応が起きないよう細かく分解されたタンパク質(加水分解タンパク)を使った特別療法食を、約1~2ヶ月間与えます。
- 症状の確認: その期間中、かゆみや下痢が治まるかを確認します。この間は、おやつや人間の食べ物は一切NGです。
- 負荷試験: 症状が治まったら、あえて元のフードを少し与え、再び症状が出るかを確認して確定診断とします。
5. 治療(ごはんを変えれば治る?)
治療の基本は、原因となるアレルゲンを食べさせないことです。
- 除去食試験:アレルゲンにならないと考えられる食餌に統一します。方法として以下の2つがあります。
- 加水分解食:タンパク質を、アレルゲンになり得ないレベルの小ささ(=低分子)にすることで理論上食物アレルギーを起こさないと考えられているフードを使います。一般に売られている低アレルゲンのごはんは、皮膚の食物アレルギーのチェックには使えません。現在では、アミノペプチドフォーミュラというフードのみが食物アレルギーに用いることができます。
- 手作り食:今まで食べたことのある食べ物(タンパク質、米などを中心に)をリストアップし、確実に食べていない食餌を使って手作りのごはんを用意します。例えば、鹿肉を食べたことがない場合には「鹿肉生活」を1~2か月間続けることになります。
- 対症療法: 一般に食物アレルギーはつよい痒みが生じると言われています。まずは本人の辛さを取り除くため、ステロイドやかゆみ止めを使って痒みを抑えます。その後もかゆみ止めを使いながら除去食試験を行っていきます。
6. 予後(一生付き合っていくもの?)
食物アレルギー自体を「完治」させることは難しく、基本的には生涯にわたる食事管理が必要です。しかし、原因となる食物をしっかり避けることができれば、健康な子と全く変わらない、快適で穏やかな生活を送ることができます。
7. 予防(防ぐことはできるの?)
残念ながら、食物アレルギーを確実に予防する方法は現在のところありません。しかし、「早期発見・早期治療」が何より重要です。
8. まとめ
食物アレルギーは、飼い主様の「気づき」と「毎日の食事管理」が治療の鍵を握ります。根気のいる診断・治療になることもありますが、体に合ったごはんが見つかれば、見違えるように快適に過ごせるようになります。単に除去食試験と言ってもごはんの調整は難しく、その子に応じた適切なやり方を探す必要があります。「もしかして?」と思ったら、自己判断でフードを変える前に、ぜひ一度かかりつけの獣医師にご相談くださいね。
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