

【皮膚科専門診療】星野 友哉 獣医師
【担当科目】皮膚科
目次
1. 疫学(どのくらい発生するの?)
アトピー性皮膚炎は、特に犬さんで非常に多く見られる皮膚疾患です。
- 発症年齢: 多くは若齢(生後6ヶ月~3歳頃)で発症します。
- 好発犬種: 柴犬、フレンチ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバー、シーズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなど、遺伝的な素因が強く関与しています。
- 猫さんの場合: 猫さんにアトピー性皮膚炎があるかどうかは分かっていません。猫さんでは、皮膚症状・呼吸器症状(喘息など)・消化器症状を複合的に示す疾患を「猫アトピー様症候群」と呼んでいます。また、食物アレルギーなどの痒みを起こす他の疾患を除外した場合に「猫アトピー様皮膚症候群」という名前で呼ばれています。
2. 原因(なぜ痒くなるの?)
アトピー性皮膚炎は単一の原因ではなく、以下の3つの要素が複雑に絡み合って発症します。
- 遺伝的素因: 抗原に対し、免疫に関わるタンパク質(IgE抗体)の過剰産生を起こしやすい体質。
- 環境アレルゲン: 主にダニ(ハウスダストマイト)に感作されることが原因のひとつと考えられています。
- 皮膚バリア機能の低下: 皮膚の水分が保てず乾燥し、外部からのアレルゲンや細菌が侵入しやすい状態(セラミドなどの不足)。
- 皮膚や消化管の常在細菌バランスの乱れ:近年では皮膚の常在細菌叢のバランスを是正したり、糞便移植でアトピー性皮膚炎が改善されたとの報告もあり、皮膚や腸の常在細菌叢が注目されています。
3. 症状(どんなサインが出るの?)
最大の特徴は「痒み」と「赤み」です。
- 犬さんの好発部位: 目や口の周り、耳、脇の下、内股、足先(指の間)など、皮膚が薄く擦れやすい場所。慢性化すると皮膚が黒ずんで分厚くなる「苔癬化(たいせんか)」や「色素沈着」が見られます。


- 猫さんの症状: 頭や首を激しく掻きむしる(頭頚部掻破)、お腹や内股の毛を過剰に舐めてハゲてしまう(外傷性脱毛)、粟粒大の湿疹ができる(粟粒性皮膚炎)、赤いただれや盛り上がりが生じる(好酸球性肉芽腫群)など、犬さんよりも多様な症状を示します。
4. 診断(どうやって見つけるの?)
アトピー性皮膚炎は「これ一発で確定できる」という検査がありません。一般に、アトピー性皮膚炎は「除外診断」とされていますが、当院では「確定診断」として診断をしています。特に赤字の項目を重点的に調べています。
- Favrotの診断基準
- 初発年齢が3歳未満
- 飼育環境のほとんどが室内
- グルココルチコイド(ステロイド)治療で痒みが改善する
- 慢性・再発性のマラセチア感染症がある
- 前肢に皮膚病変がある
- 耳介に皮膚病変がある
- 耳介の辺縁には病変がない
- 腰背部には病変がない
- 犬アトピー性皮膚炎の診断基準案
- かゆみが主体である
- 左右対称性に生じている
- 紅斑(赤み)から苔癬化(皮膚のごわごわ)に至る皮膚病変がある
- 脂漏などの過剰な付着物がみられない
上記2つの診断基準に照らし合わせるとともに、以下の点にも配慮します。
- 他の痒い病気の除外: ノミやダニなどの寄生虫、細菌やマラセチア(カビ)の感染、食物アレルギーなど。特に食物アレルギーについては併発がみられる場合もあるため注意が必要です。
- アレルギー検査(血液検査、IgE検査): アトピー性皮膚炎では、多くの症例が「コナヒョウヒダニ」という項目につよいIgEの産生を認めます。
5. 治療(どうやって治すの?)
アトピー性皮膚炎は体質によるものであり、「完治」を目指す疾患ではありません。また、炎症(赤み)やかゆみについては個人差が大きい疾患です。「症状をコントロールし、快適に過ごせるようにする」ことが目標になります。主に以下の4つの柱を組み合わせます。
- お薬による炎症やかゆみのコントロール: ステロイド剤、免疫抑制剤(シクロスポリン)、分子標的薬(ゼンレリア、アポキル)、抗体医薬(サイトポイント)など、症状やライフスタイルに合わせて選択します。
- スキンケア: 保湿剤や適切なシャンプーを用いて、低下した皮膚のバリア機能を補います。ATOP7やアンチノールなどのサプリメントを併用することもあります。
- 環境改善: 一般に環境の清浄化は必要ありません。多くの研究により、むしろ綺麗すぎる環境ではアトピーやアレルギーの発症が多いことが分かっています。
- 減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法): 原因物質を少しずつ体に入れて慣れさせる、根本的な体質改善を目指す治療です。IgE検査の結果をもとに抗原を決定し行実施します。
6. 予後(これからの生活は?)
命に関わる病気ではありませんが、生涯にわたるお付き合い(管理)が必要です。しかし、現代は優れたお薬やスキンケア製品が多数開発されています。獣医師と飼い主様が二人三脚で適切な管理を行えば、かゆみのない健康な子と変わらない、良好なQOL(生活の質)を維持することが十分に可能です。
7. 予防(防ぐことはできる?)
遺伝的な体質そのものを予防することは困難ですが、発症を遅らせたり、症状を軽くしたりするための工夫はできます。
- 子犬・子猫期からのスキンケア: 幼い頃から保湿を心がけ、皮膚バリアを健やかに保つ。過剰なシャンプーやブラッシングを控える。
- 早期発見・早期治療: 「ちょっと痒がっているな」と思った段階で早めに受診し、皮膚がボロボロになる前にケアを始める。
まとめ
アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返すため、飼い主様も途中で心が折れそうになることがあるかもしれません。焦らず、「この子に合った治療のペース」を見つけていくことが大切です。痒みで眠れない夜をなくし、穏やかな日々を取り戻すために、私たち獣医師が全力でサポートいたします。どんな小さなことでも、お気軽にご相談くださいね。
【皮膚科 セカンドオピニオン外来のご案内】
- 曜日:毎週 月曜日・木曜日
- 診療時間:10:00〜13:00、15:00〜18:00
ハグウェル動物総合病院では、皮膚疾患にお悩みの動物さんとご家族のために、皮膚科専門診療(担当:星野友哉獣医師)によるセカンドオピニオン外来を設けています。
皮膚疾患は「かゆみ」「脱毛」「赤み」など一見似た症状でも、その原因や進行度によって治療法が大きく異なります。アレルギー、感染症、ホルモン疾患、腫瘍など、複数の要因が関与するケースも少なくありません。
そのため当院では、問診・皮膚検査・細胞診・血液検査を活用し、病態を多角的に評価します。そのうえで、専門的な知見に基づき、現在の治療の見直しや新たな選択肢をご提案いたします。
「なかなか良くならない」
「診断や治療方針に不安がある」
「他の治療選択も知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方に、納得と安心を提供することを大切にしています。
また、当院ではトリミング部門と連携し、薬浴やスキンケアまで一貫したサポートが可能です。治療だけでなく、日常管理まで含めた総合的な皮膚ケアをご提案いたします。
大切なご家族にとって最適な選択ができるよう、ぜひ一度ご相談ください。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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