

【皮膚科専門診療】星野 友哉 獣医師
【担当科目】皮膚科
愛犬や愛猫が、昼夜を問わず体を激しく掻きむしっていたり、皮膚に分厚いフケやかさぶたができていたりしませんか? もし心当たりがあるなら、それはただの乾燥やアレルギーではなく、「疥癬(かいせん)」という皮膚の病気かもしれません。疥癬は激しい痒みを伴い、時には飼い主様にもうつってしまう厄介な病気ですが、正しく診断し、適切な治療を行えば必ず治る病気です。
今回は獣医師の視点から、犬と猫の疥癬について詳しく解説します。
目次
1. 疫学:どんな子がなりやすい?
疥癬は、世界中で見られる一般的な皮膚疾患です。年齢、性別、品種に関係なく感染しますが、特に以下のようなケースで多く見られます。
- 免疫力が未発達な子犬・子猫や、免疫力が低下している高齢動物
- 多頭飼育崩壊の現場や、屋外で生活していた保護犬・保護猫
- 散歩中に野生動物(キツネ、タヌキ、ハクビシンなど)の生活圏に出入りする犬さん
非常に感染力が強いため、一緒に暮らしている他の動物さんはもちろん、人間にも一時的に感染して痒みを引き起こすことがあります(人獣共通感染症)。
2. 原因:皮膚に潜む目に見えない「ダニ」
疥癬の原因は、「ヒゼンダニ」という非常に小さなダニの寄生です。主に 犬さんには「イヌセンコウヒゼンダニ」、猫さんには「ネコショウセンコウヒゼンダニ」という種類が寄生します。
このダニは被毛に付くノミやマダニとは異なり、皮膚の表面(角質層)にトンネルを掘って潜り込み、そこで生活して卵を産みます。 ダニが皮膚の表面で皮膚を刺激することで大量のフケが出ます。疥癬はダニに対するアレルギー反応を起こすものと、大量寄生による感染症になるものが知られています。犬さんではアレルギーが多く、猫さんでは感染症になることが一般的です。
3. 症状:特徴は「夜も眠れないほどの激しい痒み」
最も顕著な症状は、尋常ではない激しい痒みです。痒みで夜も眠れず、性格が神経質になってしまう子もいるほどです。野良猫など長期にわたって治療が行われない動物ではストレスで痩せてしまうほどの痒みがでます。
- 犬さんの場合: 耳のフチ(耳介縁)、肘、踵(かかと)、お腹などから症状が始まり、全身へ広がっていきます。猫に比べてフケは少ないことが多く、代わりに赤い発疹が多くみられます。耳のフチを軽くこすると後ろ足で掻こうとする反射(掻痒反射)が見られるのも特徴です。また、症状が100%お腹に出るというのもひとつの特徴です。犬さんは疥癬「アレルギー」であり、体に寄生するダニの数は少ないことが多いです。
- 猫さんの場合: 耳、顔面、頭部から始まり、首や足先へと広がっていくことが多いです。猫さんでは「感染症」のため大量のダニが寄生し、激しいフケの産生が起こります。
4. 診断:見つけるのが少し難しい病気
診断には「皮膚掻爬(そうは)検査」を行います。これは、症状が出ている部分の皮膚の表面をメスなどで少し削り取り、顕微鏡でダニの成虫や卵を探す検査です。また、痒みがでる体の場所を中心に皮膚をこすり、大量のふけを顕微鏡で調べる検査も行われます。
しかし、特に犬さんではアレルギー症状のため、ヒゼンダニは非常に数が少なくても激しい痒みを引き起こし顕微鏡検査で見つからない(陰性)ことも珍しくありません。 そのため、症状や経過から疥癬が強く疑われる場合は、ダニが見つからなくても「試験的治療(診断的治療)」としてお薬を投与し、症状が改善するかどうかで診断を確定させることがよくあります。
5. 治療:よく効くお薬でしっかり駆虫!
疥癬の治療は大きく進化しており、現在では非常に効果的で安全な治療法があります。
- ダニの駆虫: 背中に垂らすスポットオンタイプのお薬や、飲み薬(最近では「イソキサゾリン系」と呼ばれるノミ・マダニ駆除薬が非常に効果的です)を使用します。
- 痒みと皮膚のケア:特に犬さんの疥癬アレルギーは適切なかゆみ止め(アポキル)を併用することで、3日間で症状が消退することが知られています。猫さんでは多数のダニが寄生するため、治療に時間がかかることがあります。また、掻き壊して細菌感染(化膿)を起こしている場合は、抗菌薬を使用したり薬用シャンプーで皮膚を清潔に保つケアを行います。
⚠️ 重要なポイント: 非常に感染力が強いため、症状が出ていなくても同居している犬猫さん全員を同時に治療する必要があります。
6. 予後:きちんと治療すれば元通りに!
激しい痒みと痛々しい皮膚の見た目に不安になる飼い主様も多いですが、予後は非常に良好です。 適切な駆虫薬を投与すれば、数週間で劇的に痒みが治まり、抜けてしまった毛や分厚くなった皮膚も、時間はかかりますが元の綺麗な状態に戻っていきます。途中で治療をやめず、獣医師の指示通りにお薬を最後まで続けることが完治へのカギです。
7. 予防:ダニをもらわない工夫を
疥癬の予防には以下のポイントが重要です。
- 感染動物との接触を避ける: 散歩中、野生動物(タヌキやハクビシンなど)が出没しそうな茂みには近づけないようにしましょう。症状が出る前に、茂みが多い場所などに散歩ルートを変えた場合に疥癬にかかってしまう犬猫がいるため散歩ルートの選択は慎重に行いましょう。
- 定期的な予防薬の投与: 毎月投薬している「ノミ・マダニ予防薬」の中には、ヒゼンダニも同時に予防・駆除できるものがあります。かかりつけの動物病院でご相談ください。
- 新しく動物さんを迎えたら: 保護犬や保護猫を新しく迎える際は、先住のペットと合わせる前に必ず動物病院で健康チェック(皮膚のチェック含む)を受けましょう。
8.自宅の犬猫さんが疥癬に罹ったら
疥癬は免疫力の低いこどもやお年寄りに感染することがあります。特に人では老人ホームなどの施設で爆発的に感染が拡大することが知られています。ご家族の犬猫さんが疥癬に罹ってしまった場合、こども、お年寄り、また抗がん治療などを実施している人とは接触を避けましょう。
おわりに
疥癬は動物さんにとっても飼い主様にとっても辛い病気ですが、現代の獣医療ではしっかり治すことができる病気です。「最近やたらと体を掻いているな」「フケが増えたな」と感じたら、自己判断で市販のシャンプーなどを試す前に、なるべく早く動物病院にご相談くださいね。早期発見・早期治療で、愛犬・愛猫の穏やかな生活を取り戻しましょう!
【皮膚科 セカンドオピニオン外来のご案内】
- 曜日:毎週 月曜日・木曜日
- 診療時間:10:00〜13:00、15:00〜18:00
ハグウェル動物総合病院では、皮膚疾患にお悩みの動物さんとご家族のために、皮膚科専門診療(担当:星野友哉獣医師)によるセカンドオピニオン外来を設けています。
皮膚疾患は「かゆみ」「脱毛」「赤み」など一見似た症状でも、その原因や進行度によって治療法が大きく異なります。アレルギー、感染症、ホルモン疾患、腫瘍など、複数の要因が関与するケースも少なくありません。
そのため当院では、問診・皮膚検査・細胞診・血液検査を活用し、病態を多角的に評価します。そのうえで、専門的な知見に基づき、現在の治療の見直しや新たな選択肢をご提案いたします。
「なかなか良くならない」
「診断や治療方針に不安がある」
「他の治療選択も知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方に、納得と安心を提供することを大切にしています。
また、当院ではトリミング部門と連携し、薬浴やスキンケアまで一貫したサポートが可能です。治療だけでなく、日常管理まで含めた総合的な皮膚ケアをご提案いたします。
大切なご家族にとって最適な選択ができるよう、ぜひ一度ご相談ください。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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