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【横浜鶴ヶ峰院】「ある日突然、首が傾いて歩けない!?慌てないための『前庭疾患』完全ガイド」

 

【専門診療】中津  院長

【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科

 

 

ある日突然、愛犬や愛猫の首が片方に傾き、目がぐるぐると回り、酔っ払ったようにふらついて立てなくなる。嘔吐してしまい、ご飯も食べられない……。

このようなショッキングな症状を目の当たりにすると、多くの飼い主様は「脳梗塞や脳腫瘍かもしれない」と非常に強い不安を抱かれます。しかし、これらは「前庭疾患(ぜんていしっかん)」と呼ばれる病気の典型的な症状です。

「前庭」とは、耳の奥(内耳)から脳にかけて存在し、体のバランスを保つための「平衡感覚」を司る重要な器官です。ここになんらかの異常が生じることで、激しいめまいやふらつきが起こります。

今回は、この前庭疾患について詳しく解説します。

1. 疫学(どんな子に多いの?)

前庭疾患は、犬さんにも猫さんにも比較的よく見られる病気です。 特に、原因不明で突然発症する「特発性前庭疾患」は、高齢の犬さん(特に10歳以上のシニア犬)や、中高齢の猫に多く発症する傾向があります。一方で、耳の感染症(中耳炎・内耳炎)が原因となる場合は、年齢に関係なく若い子でも発症することがあります。

2. 原因(なぜ起こるの?)

前庭疾患は、異常が起きている場所によって大きく「末梢性(まっしょうせい)」と「中枢性(ちゅうすうせい)」の2つに分けられます。

  • 末梢性前庭疾患(耳の奥の異常)
    • 特発性前庭疾患: 最も多く見られますが、実は「原因不明」です。ある日突然発症します。
    • 内耳炎・中耳炎: 外耳炎が悪化し、炎症が耳の奥まで波及することで起こります。
    • 甲状腺機能低下症: 犬さんで時折見られ、代謝の低下が神経に影響を与えます。
  • 中枢性前庭疾患(脳の異常)
    • 脳腫瘍、脳炎、脳梗塞、脳出血など、脳の幹(脳幹)に異常が起きることで発症します。末梢性に比べて重症化しやすく、注意が必要です。

3. 症状(どんなサインが出るの?)

平衡感覚が失われるため、重度の「乗り物酔い」のような状態になります。

  • 捻転斜頸(ねんてんしゃけい): 首が片方に傾いたまま戻らなくなります。
  • 眼振(がんしん): 黒目が左右や上下に揺れ動いたり、ぐるぐると回ったりします。
  • 運動失調・旋回運動: まっすぐ歩けず倒れてしまったり、同じ方向にぐるぐると円を描くように歩き回ったりします。
  • 嘔吐・食欲不振: 激しいめまいによって気持ち悪くなり、吐いてしまったりご飯を食べられなくなったりします。

4. 診断(どうやって調べるの?)

動物病院では、まず症状が「末梢性」か「中枢性」かを見極めるための検査を行います。

  1. 身体検査・神経学的検査: 眼振の揺れ方、姿勢、反射などを確認し、脳に異常がないか探ります。
  2. 耳鏡検査: 耳の奥にひどい炎症(外耳炎や中耳炎)がないかを確認します。
  3. 血液検査: 基礎疾患(甲状腺機能低下症など)や全身状態を調べます。
  4. 画像診断(MRI/CT検査): 神経学的検査で「脳(中枢性)の異常」が疑われる場合や、耳の奥の腫瘍などを調べるために、全身麻酔下での精密検査を提案することがあります。

5. 治療(どうやって治すの?)

原因によって治療法は大きく異なります。

  • 特発性前庭疾患の場合(原因不明の場合) 特効薬はありませんが、時間経過とともに自然に回復することが多いため、対症療法(症状を和らげる治療)が中心となります。めまいを抑えるための吐き気止め、食欲不振による脱水を防ぐための点滴などを行いながら、安静に過ごさせます。
  • 内耳炎・中耳炎の場合 抗生剤や消炎剤を長期間投与し、耳の奥の感染を治療します。
  • 中枢性(脳炎や脳腫瘍)の場合 原因に応じたステロイド剤の投与、抗てんかん薬、外科手術、放射線治療など、より高度で専門的な治療が必要になります。

6. 予後(治るの?)

こちらも原因によって異なります。

  • 最も多い「特発性前庭疾患」の予後は非常に良好です。発症から最初の数日間は症状が強く出ますが、適切なサポートをしてあげれば、通常は数日〜数週間で自力で歩けるように回復します。(※ただし、首の傾きだけが後遺症として少し残ることがあります)
  • 内耳炎は適切な治療で改善が見込めますが、中枢性(脳の病気)の場合は、残念ながら病状の進行具合によって厳しい予後になることもあります。

7. 予防(防ぐことはできるの?)

  • 特発性前庭疾患の予防 原因が不明なため、残念ながら確実な予防法はありません。
  • 内耳炎由来の予防 日頃からの耳のケアが最大の予防です。こまめに耳の汚れや臭いをチェックし、外耳炎のサイン(耳を痒がる、頭を振るなど)が見られたら、放置せずに早めに動物病院で治療を受けましょう。
  • 生活環境の工夫(発症時・シニア期) もし発症してしまったら、めまいで転倒して怪我をしないよう、部屋の角にクッションを置く、滑りにくいマットを敷くなど、安全に過ごせる環境づくりが何より大切です。

最後に

ペットが突然パニックになったようにふらつき、目を回している姿を見るのは非常に辛いものです。しかし、最も発生頻度の高い「特発性前庭疾患」であれば、時間とともに回復してくれることが多い病気です。

慌てずに、まずは安全を確保してペットを落ち着かせ、なるべく早めに動物病院を受診してください。私たち獣医師と一緒に、焦らず治療とケアに取り組んでいきましょう。

ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制

セカンドオピニオン設置

神経症状に対して迅速な対応を行います。

必要な検査として神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT(脳構造評価)、(理想的には)脳波検査、CSF(髄液)検査、MRI検査を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。

特に「けいれん」「発作」「失神」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。

また、専門診療の神経科(中津 央貴獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返すけいれん発作など、治りが悪い症状の受け入れを行っております。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。

 

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