

【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
「あれ? うちの子、右目と左目で目の大きさが違うような…」「片方のまぶただけが下がっている気がする」 もし、愛犬や愛猫にこのような症状が見られたら、それは「ホルネル症候群(Horner’s syndrome)」という神経の病気かもしれません。
痛みや痒みがないことが多いため、飼い主様も「気のせいかな?」と見過ごしてしまいがちですが、実は体の中の重要なサインである可能性があります。今回は、獣医師の視点からホルネル症候群について詳しく解説します。
目次
1. 疫学(かかりやすい犬種・猫種)
ホルネル症候群は、犬さんでも猫さんでも発生する可能性があります。 年齢や性別に関係なく見られますが、特にゴールデン・レトリーバーなどの一部の大型犬種では、原因不明(特発性)のホルネル症候群を発症しやすい傾向があることが知られています。猫さんの場合は、外傷や中耳炎・内耳炎に起因するケースが比較的多く見られます。
2. 原因(なぜ起こるの?)
ホルネル症候群は、目や顔の一部をコントロールしている「交感神経」という神経の通り道に何らかの障害が起こることで発症します。 交感神経は、脳から出発し、首の脊髄を通って、耳の奥(中耳)を抜け、目に到達するという非常に長い経路をたどります。この経路のどこかでトラブルが起きると、ホルネル症候群の症状が現れます。
主な原因としては以下のものが挙げられます。
- 特発性(とくはつせい): 検査をしても明らかな原因が見つからないケースです。犬さん(特にゴールデン・レトリーバー)で最も多く見られます。
- 耳の病気: 重度の中耳炎や内耳炎。神経が耳の奥を通っているため、炎症が神経に波及することがあります。
- 外傷: 交通事故や高所からの落下、首まわりの強い圧迫や噛み傷など。
- 腫瘍: 脳、首回り、胸の中などの腫瘍が神経を圧迫している場合。
- その他: 椎間板ヘルニア、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、血管の異常など。
3. 症状(見逃さないで! 4つのサイン)
ホルネル症候群の最大の特徴は、「顔の片側(右半分、または左半分)だけ」に症状が現れることです。以下の4つの症状(4大徴候)が代表的です。
- 縮瞳(しゅくどう): 瞳孔(黒目)が小さくなり、光を当てても・暗いところにいても大きさが変わりません。
- 眼瞼下垂(がんけんかすい): 上まぶたがだらんと下がってしまい、目が小さく見えます。
- 眼球陥没(がんきゅうかんぼつ): 眼球が正常な位置よりも奥に引っ込んでしまいます。
- 瞬膜突出(しゅんまくとっしゅつ): 目頭にある「第三のまぶた(瞬膜)」が、常に飛び出した状態になります。
これ以外にも、顔の片側だけが温かく感じたり(血管の拡張)、耳介(耳たぶ)が赤くなったりすることがあります。
4. 診断(どうやって調べるの?)
動物病院では、症状の確認に加えて、以下のようなステップで診断を進めます。
- 神経学的検査: 光に対する瞳孔の反応や、他の神経症状がないかを確認します。
- 薬理学的検査(点眼テスト): 交感神経を刺激する特別な目薬(フェニレフリンなど)を点眼し、症状が改善するかどうか、またその反応の早さを見ます。これにより、長い神経経路の「どこが」ダメージを受けているのか(脳側か、首側か、目側か)をある程度推測することができます。
- 画像診断・その他の検査: 原因を特定するために、耳の中の検査(耳鏡)、レントゲン検査、血液検査などを行います。腫瘍や脳の病気が疑われる場合は、MRIやCTといった高度な画像診断が必要になることもあります。
5. 治療(どうやって治すの?)
ホルネル症候群の治療は、「原因となっている病気を治すこと」が基本です。
- 中耳炎・内耳炎が原因の場合: 抗生剤や消炎剤の投与、必要に応じた耳の洗浄を行います。
- 外傷や腫瘍が原因の場合: それぞれに応じた外科手術や内科治療が必要です。
- 特発性(原因不明)の場合: 特別な治療は行わず、経過観察となることがほとんどです。見た目の症状が気になる場合は、症状を緩和するための点眼薬を処方することもあります。
6. 予後(治るの?)
予後は「何が原因で起きているか」によって大きく異なります。
- 最も多い特発性の場合、命に関わることはなく、通常は数週間から数ヶ月(長いと半年程度)かけて自然に症状が回復していくことが多いです。
- 中耳炎や内耳炎によるものも、元の病気が治れば神経症状も改善する見込みがあります。
- しかし、脳や胸の腫瘍、重度の神経損傷が原因の場合は、完全な回復が難しいケースもあり、原因疾患の重大さによって予後が決まります。
7. 予防(防ぐことはできる?)
特発性のホルネル症候群を予防することは困難ですが、その他の原因については日頃のケアで防げるものもあります。
- 耳のケア: 定期的に耳のチェックを行い、外耳炎を放置して中耳炎に悪化させないことが大切です。ただし、家庭での過度な耳掃除は逆に耳を傷つける原因になるため、綿棒などを奥まで入れすぎないようにしましょう。
- 事故の防止: 猫さんの完全室内飼育、犬さんの散歩中の安全確認(首輪ではなくハーネスを使用するなど)で、交通事故や外傷・首への強い負担を防ぎましょう。
まとめ
ホルネル症候群は、見た目の変化が強いため飼い主様はとても驚かれると思います。原因不明で自然治癒するケースも多い病気ですが、その裏に重大な病気が隠れている可能性もゼロではありません。 「片方の目がおかしいな」と感じたら、自己判断せず、なるべく早く動物病院にご相談ください。早期発見・早期診断が、愛犬・愛猫の健康を守る第一歩です。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
神経症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT(脳構造評価)、(理想的には)脳波検査、CSF(髄液)検査、MRI検査を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「けいれん」「発作」「失神」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。
また、専門診療の神経科(中津 央貴獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返すけいれん発作など、治りが悪い症状の受け入れを行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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