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【横浜鶴ヶ峰院】愛犬・愛猫の心臓腫瘍と言われたら。獣医師が伝える、知っておくべき症状と治療の選択肢

【循環器診療】森山 寛大

【担当科目】総合診療科・循環器科

 

 

 

【循環器診療】佐藤 貴紀

【担当科目】総合診療科・循環器科・栄養管理科

 

 

愛犬愛猫の心臓に腫瘍があると言われたら、目の前が真っ暗になるほどのショックを受けられることと思います。心臓という命の要にできる腫瘍は、決して軽い病気ではありません。しかし、病気について正しく知ることで、愛犬愛猫にとって一番負担のない治療や、残された大切な時間をどう過ごすかという「最善の選択」が見えてきます。

今回は、犬猫さんの心臓腫瘍について、発生しやすい犬種や原因、そして治療の選択肢について獣医師が詳しく解説します。

疫学(どれくらい起こりやすいのか)

犬さんや猫さんの腫瘍全体の中で、心臓に発生するものは極めてまれです。犬さんでは全腫瘍の数パーセント以下、猫さんではさらに少ないとされています。 ただし、犬では高齢(およそ7歳から10歳以上)の中大型犬での発生が比較的多く見られます。特にゴールデン・レトリバー、ジャーマン・シェパード、ボクサーなどの犬種は、特定の心臓腫瘍が発生しやすい傾向があります。猫さんでは特定の好発品種は明確になっていませんが、やはり高齢での発生が中心です。

原因

なぜ心臓に腫瘍ができるのか、その明確な原因は残念ながら分かっていません。遺伝的な要因や加齢、環境要因などが複雑に絡み合っていると考えられています。予防が難しい病気だからこそ、早期に気づくことと、発生したときにどう対応するかが重要になります。

なお、心臓腫瘍には「心臓自体から発生する原発性腫瘍」と、「他の臓器の癌が転移してくる転移性腫瘍」があります。犬さんで最も多い原発性腫瘍は血管肉腫と呼ばれる悪性腫瘍で、右心房という場所に好発します。他には大動脈基部にできる心基部腫瘍(化学受容器腫など)があります。猫さんでは、リンパ腫と呼ばれる血液の癌が心臓に発生することが比較的多いと言われています。

症状と診断:早期発見の難しさ

症状

心臓腫瘍の恐ろしいところは、初期にはほとんど症状が出ないことです。腫瘍が大きくなったり、心臓の機能を邪魔したりするようになって初めて症状が現れます。

主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 元気がない、疲れやすい(散歩に行きたがらない)

  • 呼吸が苦しそう、ハァハァという呼吸(パンティング)が続く

  • 咳が出る

  • 突然倒れる(失神)

  • お腹が膨れてくる(腹水)

特に注意が必要なのが、血管肉腫などでよく見られる「腫瘍からの出血」です。心臓は心膜という薄い袋に包まれていますが、腫瘍から出た血がこの袋の中に溜まると(心タンポナーデという状態)、心臓が外側から圧迫されて膨らむことができなくなり、急激なショック状態に陥ります。昨日まで元気だった子が、突然ぐったりして命に関わる事態になることも少なくありません。

診断

心臓腫瘍が疑われる場合、以下のような検査を組み合わせて診断を進めます。

  • 超音波検査(エコー検査) もっとも重要な検査です。動いている心臓のなかに腫瘍の塊があるかどうか、心膜の中に液体(血)が溜まっていないかをリアルタイムで確認できます。

  • 針生検・細胞診 可能であれば、心膜に溜まった液体を注射針で採取し、そこに腫瘍細胞が含まれていないかを顕微鏡で確認します。ただし、心臓という場所の特性上、腫瘍そのものに針を刺して組織を採ることはリスクが高いため、慎重に判断されます。

  • レントゲン検査 心臓のシルエットが大きくなっていないか、肺への転移や胸水がないかを確認します。

  • CT検査 腫瘍の正確な大きさや、周囲の組織への浸潤具合、他の臓器への転移の有無を調べるために非常に有用です。

治療と予後、そして予防について

治療法

心臓腫瘍の治療は、腫瘍の種類、発生している場所、ステージ、そして動物の体力を考慮して決定します。

  • 外科手術 腫瘍の場所によっては、手術で切除できる場合があります。例えば、心基部腫瘍の一部や、心膜に発生した隔離可能な腫瘍などです。また、心タンポナーデを起こしている場合は、命を救うための緊急処置として、心膜に針を刺して血を抜く処置や、心膜の一部を切り取る手術(心膜切除術)が行われます。

  • 化学療法(抗がん剤) 猫さんのリンパ腫や、犬さんの血管肉腫で手術が難しい場合、あるいは手術後の転移を防ぐ目的で使用されます。

  • 放射線治療 一部の施設では、心基部腫瘍などに対して進行を遅らせる目的で放射線治療が選択されることもあります。

  • 緩和ケア・対症療法 根治が難しい場合、痛みや苦痛を和らげる治療が最優先されます。利尿薬で体液の貯留をコントロールしたり、酸素ハウスを利用して呼吸を楽にしたりします。

予後

厳しい現実ですが、犬さんや猫さんの心臓腫瘍、特に悪性度の高い血管肉腫などの予後は一般的にかなり厳しいとされています。発見された時点で進行していることも多く、治療を行っても数ヶ月、あるいはそれ未満の生存期間となるケースは少なくありません。 一方で、良性の腫瘍や進行の遅い心基部腫瘍、あるいは抗がん剤がよく効いた猫さんのリンパ腫などでは、治療によって数年にわたり良好な生活の質を維持できることもあります。

予防

現在の獣医療では、心臓腫瘍を確実に予防する方法はありません。 そのため、最大の対策は「早期発見」と「定期検診」になります。特にシニア期に入った中大型犬などは、健康診断の際にレントゲンだけでなく、心臓のエコー検査も項目に含めることをおすすめします。また、日頃から愛犬・愛猫の呼吸の様子や疲れやすさに目を配り、違和感があればすぐに動物病院を受診することが大切です。

飼い主様へ

心臓腫瘍という病名は、受け入れるまでに時間がかかる大変重いものです。しかし、診断がついたからといって、すぐに全ての希望が消えるわけではありません。

根治は難しくても、お家での環境を整え、お薬で症状をコントロールすることで、愛犬・愛猫が苦しまずに家族との穏やかな時間を過ごすことは十分に可能です。

これからどのような治療を選択していくか、あるいはあえて積極的な治療はせずにお家で穏やかに看取るか。正解は一つではありません。動物たちの「今の心地よさ」を一番に考えながら、信頼できる獣医師としっかり話し合って、納得のいく道を一緒に歩んでいきましょう。

ハグウェル動物総合病院の体制

セカンドオピニオン設置

今回の咳か、くしゃみか、逆くしゃみかの判断がわからないケースなど、的確な診断が必要な場合は、ハグウェル動物総合病院の循環器科をご予約ください。症状に対して迅速な対応を行います。

必要な検査として身体検査、血液検査、心エコー検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧検査などを実施して、原因を特定し適切な治療を行います。

早期発見をしながら、どのタイミングで、どの投薬が望ましいのか、循環器認定医としっかり相談し決定することをお勧めいたします。

また、専門診療の循環器科(森山 寛大 獣医師・佐藤 貴紀 獣医師)を設けているため、セカンドオピニオンの受け入れも行っております。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。

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