

【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
日々の診察で「最近、年のせいか寝てばかりで…」「お散歩を途中で嫌がるようになったんです」というご相談をよく受けます。実はそれ、単なる「老化」ではなく、変形性関節症(OA:Osteoarthritis)という関節の病気による「痛み」が原因かもしれません。
今回は、犬さんと猫さんの変形性関節症について、原因から最新の治療法まで詳しく解説します。
目次
1. 疫学:どれくらいの犬さんや猫さんがなっているの?
変形性関節症は、決して珍しい病気ではありません。
- 犬さんの場合: 成犬の約20%、シニア犬(8歳以上)になると80%以上が罹患しているというデータがあります。
- 猫さんの場合: 過去には「猫は関節炎になりにくい」と思われていましたが、近年の研究で、12歳以上の猫の60〜90%の関節にレントゲン上の異常(変形性関節症のサイン)が見られることが分かっています。
特に猫さんは「痛みを隠す天才」であるため、飼い主様も獣医師も気づきにくく、過少診断されやすいのが現状です。
2. 原因:なぜ関節が変形してしまうの?
関節のクッションの役割をしている「軟骨」がすり減り、周囲の骨が変形して炎症と痛みを引き起こすのが変形性関節症です。主な原因は以下の通りです。
- 加齢(一次性): 長年の関節への負荷により、自然と軟骨が摩耗します。
- 基礎疾患(二次性): 股関節形成不全、膝蓋骨脱臼(パテラ)、前十字靭帯断裂などの整形外科疾患が引き金となります。
- 肥満: 体重が重いことは、関節への物理的な負担を増大させるだけでなく、脂肪細胞から炎症を促進する物質が分泌されるため、関節炎を悪化させます。
- 外傷: 過去の骨折や強い打撲などのダメージ。
3. 症状:犬さんと猫さんでサインは違います!
痛みの表現方法が大きく異なります。以下のサインを見逃さないことが重要です。
犬さんに見られるサイン
- 足を引きずる(跛行)、スキップする
- 散歩に行きたがらない、途中で座り込む
- 起き上がる時に時間がかかる、動きがぎこちない
- 関節を触ると嫌がる、怒る
猫さんに見られるサイン(行動の変化に現れます)
- 高いところに登らなくなった、または登る前に「躊躇」するようになった
- 階段を降りる時に一段ずつゆっくり降りる
- 毛づくろい(グルーミング)が減り、毛玉ができやすくなった
- トイレの段差を越えるのが億劫で、粗相をしてしまう
- 以前より怒りっぽくなった、触られるのを嫌がる
4. 診断:どのように見つけるの?
動物病院では、以下のような手順で診断を進めます。
- 問診: ご自宅での様子(歩き方、ジャンプの有無など)を詳しく伺います。スマートフォンで撮影した歩様や日常の動画を見せていただけると、非常に有力な手がかりになります。
- 触診・整形外科検査: 関節の腫れ、熱感、可動域(どこまで関節が曲がるか)、痛みの有無を直接触って確認します。
- 画像診断(レントゲン検査): 骨棘(こつきょく:骨のトゲのような変形)の形成や、関節の隙間が狭くなっていないかを確認します。必要に応じてCTやMRI、関節液検査を行うこともあります。
5. 治療:痛みをコントロールし、QOL(生活の質)を高める
すり減った軟骨を元通りにすることはできませんが、痛みを和らげ、進行を遅らせるための「マルチモーダル療法(複数の治療法を組み合わせるアプローチ)」を行います。
- 体重管理(減量): 最も重要で、最も効果的な治療です。体重を数%落とすだけで、劇的に症状が改善することも珍しくありません。
- 環境の改善: 滑りにくいマットを敷く、ソファやベッドにスロープを設置する、トイレの段差を低くするなど、関節に負担をかけない生活環境を作ります。
- お薬による痛みの管理:
- NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤): 従来の代表的なお薬です。
- 抗NGF抗体薬(月1回の注射): 近年登場した革新的なお薬です(犬さん用:リブレラ、猫さん用:ソレンシア)。痛みの原因物質(NGF)をピンポイントでブロックするため、肝臓や腎臓への負担が少なく、シニア期でも安全に使用しやすいのが特徴です。
- サプリメント・関節用療法食: オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)やグルコサミン、コンドロイチンなどを含んだものが推奨されます。
- リハビリテーション: マッサージ、レーザー治療、水中トレッドミルなどで筋肉を維持し、関節の可動域を保ちます。
6. 予後:この病気とどう向き合うか
変形性関節症は「慢性進行性」の病気であり、完治することはありません。しかし、悲観する必要はありません。 早期に発見し、適切な体重管理と痛みのコントロールを継続すれば、天寿を全うするまで、その子らしく走ったり遊んだりできる良好な生活の質(QOL)を保つことが十分に可能です。
7. 予防:若いうちからできること
関節炎を予防、あるいは発症を遅らせるために、飼い主様ができる最大のプレゼントは「適正体重の維持(肥満にさせないこと)」です。 また、滑るフローリングでのボール遊びなどは避け、適度で規則正しい運動を心がけてください。特定の犬種・猫種(大型犬、ダックスフント、スコティッシュフォールドなど)は関節疾患のリスクが高いため、若齢期からの定期的な健康診断や関節チェックをおすすめします。
最後に
「年のせいだから仕方ない」と諦めないでください。現代の獣医療では、動物たちの痛みを取り除く多くの選択肢があります。愛犬・愛猫のちょっとした変化に気づいたら、ぜひお気軽に動物病院へご相談ください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
関節や骨などの症状に対して迅速な対応を行います。
整形疾患に必要な検査として、身体検査、レントゲン検査に加え、症状に応じて神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT検査(脳構造評価)、CSF(髄液)検査、を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「手足を上げる」「ケンケンとスキップをする」「足を引きずる」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。
また、外部より整形外科専門の岩田 宗峻 獣医師を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返す症状などの受け入れを行っております。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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