

【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
元気いっぱいに走り回る時期の子犬が、急に後ろ足を引きずったり、触られるのを嫌がったりすることはありませんか?もしかするとそれは、「大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)」かもしれません。別名「レッグ・ペルテス病」とも呼ばれるこの病気について、獣医師が詳しく解説します。
目次
1. 疫学(どんな子になりやすいの?)
この病気は、生後4ヶ月〜11ヶ月齢の成長期にある「小型犬」に圧倒的に多く見られます。 トイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、パグ、チワワ、ミニチュア・ピンシャーなどの犬種での発生が多く報告されています。
猫さんでの発生は非常に稀ですが、ゼロではありません。また、多くは片側の後ろ足に起こりますが、約10〜15%の確率で両足に同時に発症することもあります。
2. 原因(なぜ起こるの?)
太ももの骨(大腿骨)の先端で、骨盤と関節を作っている球状の部分を「大腿骨頭」と呼びます。この病気は、何らかの理由で大腿骨頭への血流が途絶えてしまい、骨の細胞が死んでしまう(壊死する)ことで起こります。
なぜ血流が止まってしまうのか、明確な原因は現在も解明されていません。しかし、遺伝的な要因、解剖学的な骨の構造、ホルモンの異常、あるいは軽い外傷などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。
3. 症状(どんなサインに気づけばいい?)
骨が壊死して脆くなり、体重がかかることで潰れてしまうため、関節に強い痛みが生じます。以下のようなサインが見られたら要注意です。
- 跛行(はこう): 後ろ足をかばって歩く、ピョコピョコとスキップするように歩く。
- 挙上(きょじょう): 痛い方の足を常に地面から浮かせている。
- 筋肉の萎縮: 足を使わないため、健康な足に比べて太ももの筋肉が細くなる。
- 行動の変化: お尻や足を触られるとキャンと鳴いて怒る、元気がなくなる、ジャンプや段差を嫌がる。
4. 診断(動物病院で何をするの?)
主に以下の方法で診断を行います。
- 触診・歩様検査: 歩き方を観察し、股関節を動かした際の痛みの有無や、関節が動くときの摩擦音(クリック音)を確認します。また、左右の太ももの筋肉量を比較します。
- X線(レントゲン)検査: 診断において最も重要です。初期では骨の密度にムラが見られ、進行すると大腿骨頭が変形して平たく潰れたり、関節の隙間が広くなっている様子が確認できます。
- CT・MRI検査: レントゲンでは分かりにくいごく初期の病変を早期発見するために用いられることがあります。
5. 治療(どのように治すの?)
痛みを根本的に取り除き、歩行機能を取り戻すためには、「外科手術」が第一選択となります。
- 大腿骨頭頸部切除術(FHO): 壊死して痛みの原因となっている大腿骨頭を、根本から切り取ってしまう手術です。「骨を取ってしまって歩けるの?」と驚かれるかもしれませんが、小型犬や猫さんの場合、体重が軽いため、切除した周りの筋肉や繊維組織が回復過程で「偽関節(ぎかんせつ:関節の代わりとなる組織)」を形成します。これにより、痛みなく歩けるようになります。
- 股関節全置換術(THR): 人工関節を入れる手術です。以前は大型犬向けでしたが、近年は小型犬向けのインプラントも開発されています。専門的な設備と技術が必要になります。
- 内科的治療(保存療法): 鎮痛剤(NSAIDsなど)と絶対安静で痛みをコントロールしますが、進行を止めることはできず、最終的に筋肉が痩せ細ってしまうため、推奨されるケースは限定的です。
獣医師からのワンポイント:リハビリの重要性 手術をしたら終わり、ではありません。術後はいかに早く、そして適切に足を使わせるか(リハビリテーション)が、スムーズな歩行を取り戻すための最大の鍵となります。
6. 予後(手術のあとはどうなるの?)
適切な時期に手術を行い、しっかりとリハビリを行えば、予後は非常に良好です。 多くの犬さんが痛みから解放され、走ったりジャンプしたりと、発症前と同じように元気に生活できるようになります。ただし、治療が遅れて筋肉が極度に落ちてしまっていると、回復に時間がかかることがあります。
7. 予防(防ぐことはできるの?)
残念ながら、明確な原因が分かっていないため、確実な予防法はありません。 しかし、遺伝的な背景が強く疑われているため、この病気を発症した個体は繁殖を控えるべきです。飼い主様にできる最大の予防(対策)は、「歩き方の異常に早く気づき、早期に動物病院を受診すること」に尽きます。
少しでも「おかしいな」と思ったら、様子を見すぎず、お早めにかかりつけの獣医師にご相談ください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
関節や骨などの症状に対して迅速な対応を行います。
整形疾患に必要な検査として、身体検査、レントゲン検査に加え、症状に応じて神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT検査(脳構造評価)、CSF(髄液)検査、を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「手足を上げる」「ケンケンとスキップをする」「足を引きずる」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。
また、外部より整形外科専門の岩田 宗峻 獣医師を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返す症状などの受け入れを行っております。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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