

【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
目次
犬猫さんの骨肉腫について
骨肉腫は、骨に発生する悪性腫瘍(がん)の中で最も一般的なものです。非常に進行が早く、痛みや骨折を伴うため、ご家族にとっても大変ショックの大きい病気ですが、病態を正しく理解し、適切な治療を選択することが動物たちのQOL(生活の質)維持に繋がります。
1. 疫学(発生傾向と特徴)
- 犬さんの場合
原発性骨腫瘍の約80〜90%を占めます。ゴールデン・レトリーバー、ロットワイラー、ドーベルマンなどの大型犬・超大型犬に多く見られます。中高齢(7〜10歳)での発症が多いですが、1〜2歳の若齢で発症するピークも存在します。発生部位は「肘から遠く、膝に近い(肩関節、手首、膝周辺)」四肢の骨(長管骨)が約75%を占めます。
- 猫さんの場合
犬さんに比べると発生は稀です。高齢の猫(平均10歳前後)で見られ、犬さんと同様に四肢の骨に発生することが多いですが、後肢での発生がやや多い傾向があります。また、犬さんほど転移性が高くないのが特徴です。
2. 原因
明確な原因は解明されていません。しかし、大型犬に多いことから「成長期の急速な骨の発育」や、体重の負荷による「骨への微小なダメージの蓄積」が関与していると考えられています。また、遺伝的要因や、過去の骨折治療で埋め込んだ金属プレート等の影響、放射線治療の既往がリスク因子になるという報告もあります。
3. 症状
最も多い初期症状は、患肢をかばうような跛行(足を引きずる・挙げたままにする)です。
- 腫れと強い痛み: 進行すると、骨が破壊されて周囲が腫れ上がり、触るだけで強く痛がるようになります。
- 病的骨折: 腫瘍によって骨がスカスカになるため、少しジャンプをしただけ、あるいは普通に歩いているだけで骨折してしまうことがあります。
- 全身症状: 進行したり肺などへ転移したりすると、食欲低下、体重減少、元気消失、呼吸異常(咳や浅い呼吸)が見られます。
4. 診断
- X線検査(レントゲン): 骨が溶けている様子(骨融解)や、腫瘍が骨の表面に新しく異常な骨を作っている様子(骨膜反応)を確認します。「サンバースト(旭日様)サイン」と呼ばれる特徴的な影が見られることもあります。
- 細胞診・病理組織検査: 腫瘍の一部に細い針を刺して細胞を採取したり(FNA)、専用の器具で組織を採取(生検)したりして、顕微鏡で悪性かどうかを確定診断します。
- 画像診断(CT・MRI): 手術の計画を立てるため、腫瘍の正確な広がりを評価します。
- 転移の評価: 犬さんの骨肉腫は診断時にすでに微小な肺転移を起こしていることが多いため、胸部X線検査やCT検査で肺転移の有無を必ず確認します。
5. 治療
骨肉腫の治療は「痛みの緩和(局所支配)」と「転移の抑制(全身治療)」の2本柱で行います。
- 外科治療(断脚術): 強い痛みの原因となっている病変部を取り除くため、患肢の切断(断脚)が第一選択となることが多いです。犬さんや猫さんは3本足でも上手にバランスを取って歩くことができるようになります。
- 四肢温存術: 条件を満たせば、足を残したまま腫瘍の骨だけを取り除き、人工骨等で置き換える手術を行うこともあります(主に犬さん)。
- 放射線治療: 手術が困難な場合や希望されない場合に、痛みを和らげる(緩和ケア)目的で照射します。
- 化学療法(抗がん剤): 犬さんの場合、断脚のみでは肺転移により短期間で命を落とすことが多いため、カルボプラチンやドキソルビシンなどの抗がん剤を併用し、生存期間の延長を目指します。猫さんは転移しにくいため、四肢の骨肉腫であれば外科手術のみで完治を目指せるケースもあります。
- 痛みのケア(鎮痛剤): 医療用麻薬やNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)などを組み合わせて、徹底的な疼痛管理を行います。
6. 予後
犬さんの場合: 極めて進行が早く、外科手術のみ(断脚)の場合は生存期間の中央値が約4〜5ヶ月とされています。外科手術と化学療法を併用することで、生存期間の中央値は約10〜12ヶ月程度に延び、中には2年以上生存するケースもあります。
猫さんの場合: 犬さんよりも予後が良く、四肢に発生した骨肉腫を早期に断脚できた場合、生存期間の中央値は2〜4年以上に達することもあり、天寿を全うする子も少なくありません。
7. 予防
残念ながら、骨肉腫を確実に予防する方法はありません。そのため、早期発見・早期治療がすべてとなります。 日頃からスキンシップを取りながら足の関節や骨を触り、「しこりや不自然な腫れがないか」「触って痛がる場所はないか」をチェックしてください。特に大型犬の飼い主様は、少しでも足を引きずる様子があれば「ただの捻挫だろう」と自己判断せず、すぐに動物病院を受診することが重要です。
8. まとめ
骨肉腫は、愛犬・愛猫に強い痛みをもたらす厄介な病気です。「足を切断する」という選択は、飼い主様にとって非常に辛く苦しい決断ですが、動物たちから「耐え難い痛みを取り除く」ための最も効果的な手段でもあります。犬と猫で病気の振る舞いや予後が異なるため、状態に合わせた最適な治療方針を主治医としっかり話し合うことが大切です。毎日のふれあいの中で小さな変化を見逃さず、少しでも異常を感じたら早めに獣医師にご相談ください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
ハグウェル動物総合病院では、腫瘍疾患に直面した飼い主様と動物さんに、より良い選択をしていただけるよう セカンドオピニオン外来 (専門診療の腫瘍科、中津 央貴獣医師)を設けています。
腫瘍は種類や進行度によって治療方法が大きく異なり、外科手術・化学療法・放射線治療・緩和ケアなど多様な選択肢があります。そのため、診断や治療方針について複数の視点から検討することが大切です。
当院ではCTなどの高度画像診断を用い、腫瘍の性質や広がり、転移の有無を的確に把握したうえで、専門的な知見をもとに治療方針をご提案いたします。セカンドオピニオンを通じて、飼い主様が納得し、安心して治療に臨んでいただけることを第一に考えています。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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