

【栄養管理科専門診療】佐藤 貴紀 獣医師
【担当科目】 循環器科、栄養管理科
今回は、犬猫さんの健康診断で異常が見つかることの多い「肝臓」の病気と、その治療の要となる「食事療法(療法食)」について詳しく解説します。
「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、病気が進行するまで症状が出にくいという厄介な特徴があります。だからこそ、病態を正しく理解し、毎日の食事でしっかりケアしていくことが非常に大切です。

引用:https://portal.v.royalcanin.jp/health-and-foods/hepatic/
目次
肝臓の働きと、病気が起こるメカニズム
肝臓は、お腹の右上部にある体内最大の臓器です。生きていくために不可欠な、主に以下の3つの重要な役割を担っています。
- 栄養素の代謝(合成と貯蔵):食事から摂った栄養を、体が使える形に変えたり、エネルギーとして蓄えたりします。
- 解毒作用:体内で発生した有害な物質(アンモニアなど)や、薬の成分などを無毒化します。
- 胆汁の生成:脂肪の消化吸収を助ける「胆汁」を作ります。

引用:https://portal.v.royalcanin.jp/health-and-foods/hepatic/
【代表的な肝疾患とメカニズム】
肝炎、胆管炎、門脈体循環シャント、猫さんの肝リピドーシス(脂肪肝)などが挙げられます。
肝臓の機能が低下すると、有害なアンモニアが解毒されずに全身を回り、神経症状(痙攣やよだれなど)を引き起こす「肝性脳症」に陥る危険があります。また、胆汁の排泄がうまくいかなくなると、白目が黄色くなる「黄疸」が現れます。
初期症状は「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」「嘔吐・下痢」など非常に曖昧なため、血液検査などで早期に異常を見つけることが鍵となります。
なぜ「肝臓療法食」が必要なのか?
肝臓病の治療では、お薬と同様に「食事」が極めて重要です。
肝臓療法食は、弱った肝臓を休ませ、再生を促すために以下のような特別な栄養設計がされています。
- 高消化性の良質なタンパク質:アンモニアの発生を最小限に抑えつつ、肝臓の再生に必要な栄養を補給します。
- 銅の制限:肝臓に蓄積しやすい「銅」の含有量を制限し、肝細胞のダメージを防ぎます。
- エネルギー密度が高い:食欲が落ちた子でも、少量でしっかりカロリーが摂れるようになっています。
ここからは、当院でもよく処方する代表的なメーカーの肝臓療法食を抜粋してご紹介します。
1. ロイヤルカナン(ROYAL CANIN)
嗜好性が高く、種類も豊富で世界中で使われているスタンダードな療法食です。植物性タンパク質(大豆など)をうまく活用し、アンモニアの発生を抑える工夫がされています。
- 犬さん用 肝臓サポート(ドライ / 缶詰)
高消化性の植物性タンパク質を使用し、肝性脳症のリスクに配慮しています。銅を制限しつつ、抗酸化成分を配合。ドライフードだけでなく、食欲が落ちた子向けのペースト状の缶詰があるのも強みです。 - 猫さん用 肝臓サポート(ドライ)
犬さん用同様にタンパク質の種類を厳選し、銅を制限しています。猫は特に食欲不振から肝リピドーシス(脂肪肝)を起こしやすいため、少ない量でも十分なエネルギーを摂取できるよう高カロリーに設計されています。
2. ヒルズ(Hill’s Prescription Diet)
科学的な根拠に基づいた栄養学で知られるヒルズ。脂質代謝をサポートする成分などがバランスよく配合されています。
- 犬さん用 l/d(エルディー)ドライ / 缶詰
高品質で消化性の高いタンパク質を使用。肝臓での脂質代謝をサポートする「L-カルニチン」が配合されているのが特徴です。肝臓の組織再生に必要なビタミン類も強化されています。 - 猫さん用 l/d(エルディー)ドライ / 缶詰
猫の肝臓の健康維持のために特別に調整されたフードです。こちらもL-カルニチンや抗酸化成分が豊富で、免疫力の維持をサポートします。嗜好性を高める工夫もされており、よく食べてくれる子が多い印象です。
3. Dr’s(ドクターズケア)
日本の獣医師が監修し、日本の犬猫の飼育環境に合わせて作られた国産の療法食ブランドです。
- 犬さん用 ドクターズケア 肝臓ケア(ドライ)
国産にこだわる飼い主様に人気の療法食です。肝臓の健康維持のために、分岐鎖アミノ酸(BCAA)という特殊なアミノ酸を増強し、有害なアンモニアの産生に配慮してタンパク質を最適に調整しています。 - (※補足)おやつ等の活用
療法食を食べている間は、市販のおやつをあげると療法食の計算された栄養バランスが崩れてしまいます。Dr’sシリーズなどからは療法食に対応したトリーツ(おやつ)が出ていることもあるため、「おやつを我慢させるのが可哀想」という方はぜひご相談ください。
まとめ:自己判断でのフード切り替えはNG!
肝臓の数値が高いからといって、飼い主様の自己判断で療法食に切り替えるのは大変危険です。
肝臓病には様々な種類があり、状態によっては「タンパク質を制限すべきか、むしろしっかり摂らせるべきか」など、必要な栄養バランスが全く異なります。
愛犬・愛猫の血液検査で肝臓の数値に異常があった場合や、フード選びに迷った際は、必ず私たち獣医師にご相談ください。その子に一番合った「美味しい治療薬(療法食)」を一緒に見つけていきましょう!
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