

【皮膚科専門診療】星野 友哉 獣医師
【担当科目】皮膚科
愛犬や愛猫が体をしきりに掻いていたり、皮膚に赤いブツブツができているのを見つけたことはありませんか?
それはもしかすると、「膿皮症(のうひしょう)」という皮膚の病気かもしれません。 膿皮症は動物病院の日常診療でも非常に多く見られる疾患です。今回は、膿皮症がどのような病気なのか、獣医師の視点から詳しく解説します。
目次
1. 疫学:どれくらい一般的な病気なの?
- 犬さんの皮膚疾患の中で最も発生頻度が高い病気の一つです。年齢や性別に関わらず発症しますが、フレンチ・ブルドッグ、パグ、シーズー、ゴールデン・レトリーバーなどの犬種では特に多く見られます。
- 猫さんでは発生頻度は低く、膿皮症を発症した場合は、背後に免疫力を低下させるような別の病気(アレルギーやウイルス感染症など)が隠れていることが多いため、より注意深いアプローチが必要です。
2. 原因:なぜ膿皮症になるの?
膿皮症の直接的な原因は、細菌(主にブドウ球菌)の異常増殖です。 実は、これらの細菌は健康な犬さんや猫さんの皮膚にも普段から住み着いている「常在菌」です。普段はおとなしくしているのですが、以下のような要因で皮膚のバリア機能が低下したり、皮膚の環境が悪化したりすると、細菌が異常に増殖して悪さを始めます。
- 基礎疾患(これが最も重要です): アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、ホルモン疾患(甲状腺機能低下症など)、寄生虫感染など
- 環境要因: 高温多湿、不適切なシャンプー(洗いすぎ、すすぎ残し)、不衛生な生活環境
- 物理的刺激: 摩擦、掻き壊し、クリッパー(バリカン)による負傷
3. 症状:どんなサインに気をつけるべき?
症状は感染の深さによって「表在性(皮膚の浅い部分)」と「深在性(皮膚の深い部分)」に分けられますが、一般的に多く見られるのは表在性膿皮症です。
- 赤いブツブツ(丘疹): お腹や内股、脇の下などにできやすいです。
- 膿を持った水ぶくれ(膿疱): ニキビのような見た目をしています。
- フケやカサブタ(表皮小環): 膿疱が破れた後、リング状にフケが残ることがあります。
- かゆみ: 軽度から重度まで様々ですが、掻きむしることでさらに悪化します。
- 脱毛: 毛根に感染が及ぶと、毛が部分的に抜けることがあります。
- 悪臭: 皮膚から特有のニオイがすることがあります。
4. 診断:動物病院ではどんな検査をするの?
見た目の症状からある程度推測できますが、正確な診断のためには以下の検査を行います。
- 細胞診(テープ検査・スタンプ検査): 皮膚の表面にテープをペタッと貼ったり、スライドガラスを押し当てたりして細胞を採取し、顕微鏡で細菌や白血球(炎症細胞)を確認します。最も基本的な検査です。
- 細菌培養・薬剤感受性試験: 治りにくい場合や再発を繰り返す場合、どの細菌が原因で、どの抗生物質が効くのか(または効かないのか=耐性菌の有無)を調べます。
- 基礎疾患の検査: 血液検査やアレルギー検査などを通じて、膿皮症を引き起こしている「根本的な原因」を探ります。
5. 治療:どうやって治すの?
治療の2本柱は「抗菌療法(菌を減らす)」と「スキンケア(バリア機能を整える)」です。近年は、抗生物質の効かない「耐性菌」を増やさないため、飲み薬に頼りすぎない治療が推奨されています。
- 外用薬(塗り薬・スプレー): 局所的な病変には、抗菌成分を含む塗り薬を使用します。
- シャンプー療法(薬浴): 抗菌作用のある薬用シャンプーで優しく洗い、菌を減らします。全身に症状が広がっている場合に効果的です。保湿もセットで行うことが重要です。
- 全身療法(飲み薬): 症状が重い場合や広範囲に及ぶ場合、適切な抗生物質を処方します。(※途中で勝手に薬をやめると耐性菌を生む原因になるため、獣医師の指示通りに飲ませきることが大切です)
- 基礎疾患の治療: アレルギーやホルモン疾患などがある場合は、その治療を並行して行わなければ、膿皮症は何度でも再発します。
6. 予後:しっかり治る病気?
基礎疾患がなく、適切な治療を行えば、予後は非常に良好です。通常は数週間で症状が改善します。 しかし、根本的な原因(アレルギーなど)が解決されていない場合や、耐性菌が関与している場合は、治療が長期化したり、何度も再発を繰り返したりすることがあります。
7. 予防:おうちでできるケアは?
日頃からのケアで、皮膚のバリア機能を正常に保つことが最大の予防策です。
- 適切なスキンケア: その子に合ったシャンプーと保湿剤を使用し、皮膚を清潔かつ潤った状態に保ちます。洗いすぎには注意しましょう。
- こまめなブラッシング: 皮膚の通気性を良くし、汚れや抜け毛を取り除きます。
- 生活環境の整備: 高温多湿を避け、寝床を清潔に保ちましょう。
- 基礎疾患のコントロール: アレルギーなどがある子は、かかりつけ医と相談しながらしっかりコントロールを続けることが重要です。
8. まとめ
膿皮症は決して珍しい病気ではありませんが、放っておくと犬猫さんにとって大きなストレスになります。「ただの湿疹かな?」と自己判断せず、赤いブツブツやかゆみなどのサインに気づいたら、早めに動物病院をご受診ください。 また、膿皮症は「氷山の一角」であり、水面下には別の病気が隠れていることも少なくありません。目に見える症状を治すだけでなく、獣医師と二人三脚で「なぜ膿皮症になったのか」を見極め、根本から健やかな皮膚を目指していきましょう!
【皮膚科 セカンドオピニオン外来のご案内】
- 曜日:毎週 月曜日・木曜日
- 診療時間:10:00〜13:00、15:00〜18:00
ハグウェル動物総合病院では、皮膚疾患にお悩みの動物さんとご家族のために、皮膚科専門診療(担当:星野友哉獣医師)によるセカンドオピニオン外来を設けています。
皮膚疾患は「かゆみ」「脱毛」「赤み」など一見似た症状でも、その原因や進行度によって治療法が大きく異なります。アレルギー、感染症、ホルモン疾患、腫瘍など、複数の要因が関与するケースも少なくありません。
そのため当院では、問診・皮膚検査・細胞診・血液検査を活用し、病態を多角的に評価します。そのうえで、専門的な知見に基づき、現在の治療の見直しや新たな選択肢をご提案いたします。
「なかなか良くならない」
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このようなお悩みをお持ちの方に、納得と安心を提供することを大切にしています。
また、当院ではトリミング部門と連携し、薬浴やスキンケアまで一貫したサポートが可能です。治療だけでなく、日常管理まで含めた総合的な皮膚ケアをご提案いたします。
大切なご家族にとって最適な選択ができるよう、ぜひ一度ご相談ください。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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