

【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
脳炎とは、その名の通り「脳」に炎症が起こる病気です。脳は運動、感覚、感情など全身をコントロールする非常に重要な器官であるため、ここに炎症が起こると命に関わる重篤な症状を引き起こすことがあります。
本コラムでは、犬さんと猫さんの脳炎について、疫学から予防まで詳しく解説します。
目次
1. 疫学(かかりやすい犬種・猫種)
脳炎はすべての犬猫さんで発症する可能性がありますが、原因によって好発しやすい年齢や品種が存在します。
- 犬さんの場合: 免疫の異常による脳炎(非感染性脳炎)が非常に多く見られます。特にパグ、チワワ、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、フレンチ・ブルドッグなどの小型犬で発症リスクが高く、若齢から中高齢(1〜7歳頃)での発症が多く報告されています。
- 猫さんの場合: 犬さんに比べて非感染性の脳炎はまれで、ウイルスなどの感染症(特に猫伝染性腹膜炎:FIPなど)を原因とする脳炎が多く見られます。
2. 原因
脳炎の原因は、大きく「感染性」と「非感染性(免疫介在性)」の2つに分けられます。
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原因の分類 |
詳細・主な病名 |
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感染性脳炎 |
ウイルス(犬ジステンパーウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルスなど)、細菌、真菌(カビ)、原虫(トキソプラズマなど)、寄生虫の感染によって起こります。 |
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非感染性脳炎 |
自分の免疫が誤って脳を攻撃してしまう「免疫介在性」のものが大半です。肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)、壊死性髄膜脳炎(NME/通称パグ脳炎)、壊死性白質脳炎(NLE)などがこれに該当し、総称してMUE(原因不明の髄膜脳炎)とも呼ばれます。 |
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症状
脳のどの部分に炎症が起きているかによって症状は多彩ですが、以下のような異変が見られた場合は一刻も早く動物病院を受診してください。
- けいれん発作(全身が突っ張る、手足をバタバタさせる)
- 意識の混濁(ボーッとしている、呼びかけに反応しない)
- 異常な行動(同じ場所をぐるぐる回る、壁に頭を押し付ける、性格が急に攻撃的になる)
- 運動器の異常(足がふらつく、首が斜めに傾く=斜頸)
- 視覚異常(物にぶつかる、目が見えていない様子)
4. 診断
脳炎の確定診断には、高度な検査機器が必要となります。
- 一般検査・血液検査: 脳以外の臓器(肝臓や腎臓など)に異常がないか、代謝性のけいれんではないかを除外します。
- 神経学的検査: 反射や歩様をチェックし、神経のどの部分に異常があるかを推測します。
- MRI検査: 脳の内部を詳細に画像化し、脳炎特有の病変や、脳腫瘍などの他の病気がないかを確認します。脳炎の診断において最も重要な検査です。
- 脳脊髄液検査(CSF検査): 脳と脊髄の周りを流れる液を採取し、細胞の種類や数、タンパク質量を調べます。感染症が疑われる場合は、PCR検査などを追加します。
5. 治療
原因に合わせた治療を行うと同時に、今起きている脳のダメージを最小限に抑える治療を行います。
- 対症療法: けいれんが起きている場合は「抗けいれん薬」を、脳の腫れ(脳浮腫)がある場合は「脳圧降下剤」を投与し、症状をコントロールします。
- 感染性脳炎の治療: 原因となっている病原体に合わせて、抗生剤、抗ウイルス薬、抗真菌薬、駆虫薬などを投与します。
- 非感染性(免疫介在性)脳炎の治療: 暴走している免疫を抑えるため、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)をメインに投与します。ステロイドの副作用を軽減したり効果を高めたりするために、免疫抑制剤を併用することが一般的です。
6. 予後
予後は、原因、病変の広がり、そして治療開始の早さによって大きく異なります。
感染性の場合は、病原体を排除できれば完治する可能性がありますが、ダメージが残ることもあります。 一方、犬さんに多い非感染性(免疫介在性)の脳炎は、残念ながら完治させることが難しく、生涯にわたる投薬(ステロイドや免疫抑制剤)が必要になるケースがほとんどです。お薬で症状をコントロールできれば長生きできる子もいますが、進行が早く、数日〜数ヶ月で命を落としてしまう厳しいケース(特に壊死性脳炎など)も存在します。
7. 予防
- 感染性脳炎の予防: ワクチン接種(犬ジステンパーなど)や、ノミ・マダニ・蚊などの外部寄生虫予防、室内飼育の徹底が有効な予防線となります。
- 非感染性脳炎の予防: 遺伝的・体質的な要因が絡んでいると考えられているため、明確な予防法は現在確立されていません。
だからこそ、「早期発見・早期治療」が何よりの予防線となります。愛犬・愛猫のわずかな行動のサインを見逃さず、少しでも「おかしいな」と思ったら、ためらわずに獣医師にご相談ください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
神経症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT(脳構造評価)、(理想的には)脳波検査、CSF(髄液)検査、MRI検査を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「けいれん」「発作」「失神」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。
また、専門診療の神経科(中津 央貴獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返すけいれん発作など、治りが悪い症状の受け入れを行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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