

【皮膚科専門診療】星野 友哉 獣医師
【担当科目】皮膚科
愛犬や愛猫がしきりに体を掻いている、皮膚がベタベタしてフケが出ている、そして「なんだか少しすっぱいような、独特のニオイがする」…。 そんな症状にお悩みの飼い主様、それはもしかすると「マラセチア性皮膚炎」かもしれません。
今回は、動物病院でも非常に遭遇する頻度の高いこの皮膚炎について、獣医師が詳しく解説します。
疫学(どんな子がかかりやすいの?)
マラセチア性皮膚炎は、特に犬さんで非常に多く見られる皮膚疾患です。猫さんでの発生は犬さんほど多くありませんが、特定の猫種や基礎疾患がある場合に発症します。 また、高温多湿を好むため、日本では梅雨から夏にかけて発症・悪化するケースが急増します。
- 好発犬種: シーズー、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリーバーなど。(皮脂の分泌が多い犬種や、皮膚にシワが多い犬種)
- 好発猫種: スフィンクス、デボンレックス、ヒマラヤンなど。
- 注意すべき猫さんのケース: 猫さんでマラセチア皮膚炎が重症化する場合、裏に免疫力を低下させるウイルス感染症(猫エイズなど)や糖尿病などの全身性疾患が隠れていることがあります。
原因(なぜ発症するの?)
実は「マラセチア」というのは、健康な犬猫さんの皮膚や耳、粘膜に普段から住み着いている「常在菌(酵母様真菌=カビの一種)」です。普段は悪さをしません。
しかし、以下のような要因で皮膚の環境が悪化すると、マラセチアが異常増殖し、皮膚炎を引き起こします。
- 基礎疾患の存在: アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)
- 皮膚のバリア機能低下: 過度なシャンプー、乾燥、擦れ
- 局所的な環境悪化: 垂れ耳、皮膚のシワ(通気性が悪く、湿気と皮脂が溜まりやすい)
症状
マラセチア性皮膚炎のサインは非常に特徴的です。以下の症状が見られたら要注意です。
- 強い痒み: 昼夜問わず執拗に舐めたり掻いたりします。
- 発赤と脂漏(しろう): 皮膚が赤くなり、ベタベタとした黄色〜茶色のフケや脂が出ます。
- 独特のニオイ: 酵母(カビ)特有の、すえたような、発酵したようなニオイがします。
- 慢性化のサイン(苔癬化・色素沈着): 炎症が長引くと、皮膚が「ゾウの皮膚」のように分厚くゴワゴワになり(苔癬化)、黒ずんできます(色素沈着)。
できやすい場所 耳の中(マラセチア性外耳炎)、指の間、脇の下、内股、首のシワの間、尻尾の付け根など、「皮膚同士が擦れて蒸れやすい場所」に好発します。
診断
診断は比較的シンプルで、痛みも伴いません。
- テープスタンプ検査・スワブ検査: 病変部にセロハンテープをペタッと押し当てたり、綿棒でこすったりして細胞を採取します。
- 顕微鏡検査: 染色液で染めて顕微鏡で覗くと、雪だるまやピーナッツのような特徴的な形をしたマラセチアが多数観察されます。
- 基礎疾患の除外: マラセチアの増殖は「結果」であることが多いため、必要に応じて血液検査やアレルギー検査を行い、根本的な原因(アトピーやホルモン異常など)が隠れていないかを探ります。

治療
治療は、マラセチアそのものを減らす治療と、皮膚環境を整える治療を並行して行います。
- 外用療法(シャンプー・塗り薬): ミコナゾールやクロルヘキシジンなどの抗真菌成分が配合された薬用シャンプーによる週1〜2回の薬浴が非常に効果的です。局所的であれば塗り薬(外用薬)を使用します。
- 内服療法(飲み薬): 全身に重度の症状が広がっている場合は、抗真菌薬(イトラコナゾールなど)の飲み薬を処方することがあります。痒みがひどい場合は、かゆみ止めを併用し、掻きむしりによる悪化を防ぎます。
- 基礎疾患の治療: ここが一番重要です。アレルギーや内分泌疾患がある場合は、その治療を並行して行わなければ、一時的に良くなっても必ず再発します。
予後
マラセチア性皮膚炎自体の予後は「良好」です。適切な抗真菌治療を行えば、数週間で痒みや赤みは劇的に改善します。 しかし、根本的な原因(アレルギーや体質)が解決されていない場合、非常に再発しやすい(予後要注意)という特徴があります。完治を目指すというより、「いかに良い状態を維持するか(コントロール)」が目標になることも多いです。
予防
愛犬・愛猫をマラセチアから守るためには、日々のスキンケアが欠かせません。
- こまめなチェックと清拭: シワの間や指の間、耳の中など、蒸れやすい場所はこまめにチェックし、イヤークリーナーやノンアルコールのペット用ウェットティッシュで優しく汚れを拭き取り、乾燥させましょう。
- 適切なシャンプー: 皮膚がベタつきやすい子は、獣医師に相談の上、その子の肌質に合ったシャンプー剤を選び、適切な頻度で洗ってあげましょう。しっかり乾かすことも重要です。
- 早期発見・早期治療: 「いつもより体を掻いているな」「ニオイが変わったな」と思ったら、重症化して皮膚が分厚くなる前に、早めに動物病院を受診してください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
【皮膚科 セカンドオピニオン外来のご案内】
2026年5月1日より、30分枠でのご予約になりますが、診察時間を拡大いたします。
- 曜日:毎週 月曜日・木曜日
- 診療時間:10:00〜13:00、15:00〜18:00
ハグウェル動物総合病院では、皮膚疾患にお悩みの動物さんとご家族のために、皮膚科専門診療(担当:星野友哉獣医師)によるセカンドオピニオン外来を設けています。
皮膚疾患は「かゆみ」「脱毛」「赤み」など一見似た症状でも、その原因や進行度によって治療法が大きく異なります。アレルギー、感染症、ホルモン疾患、腫瘍など、複数の要因が関与するケースも少なくありません。
そのため当院では、問診・皮膚検査・細胞診・血液検査を活用し、病態を多角的に評価します。そのうえで、専門的な知見に基づき、現在の治療の見直しや新たな選択肢をご提案いたします。
「なかなか良くならない」
「診断や治療方針に不安がある」
「他の治療選択も知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方に、納得と安心を提供することを大切にしています。
また、当院ではトリミング部門と連携し、薬浴やスキンケアまで一貫したサポートが可能です。治療だけでなく、日常管理まで含めた総合的な皮膚ケアをご提案いたします。
大切なご家族にとって最適な選択ができるよう、ぜひ一度ご相談ください。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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