【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
犬さんや猫さんの体に「しこり」を見つけたとき、多くの飼い主さんは「脂肪のかたまりかな?」「年齢のせいかな?」と様子を見てしまいがちです。しかし、そのしこりが肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)という腫瘍である可能性もあります。肥満細胞腫は、早期発見・早期治療がとても重要な腫瘍のひとつです。
肥満細胞腫とは
肥満細胞腫は、皮膚や皮下に存在する肥満細胞が腫瘍化したもので、炎症やアレルギーに関わるヒスタミンなどの化学物質を放出します。
そのため、しこりを触ると急に赤く腫れたり、かゆみが出たりすることがあります。
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犬さんの肥満細胞腫は基本的に悪性腫瘍と見なされますが、グレードによって予後に大きな差があるため、早期の診断と対応が重要です。
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猫では皮膚型は比較的良性の傾向にあるものの、内臓型や多発型では悪性度が高く、注意が必要とされています。
しこりを見つけたときの注意サイン
サイン | ポイント |
しこりが急に大きくなった |
炎症やヒスタミン放出でサイズが変化することがある
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赤み・かゆみ・潰瘍がある |
触ったあとに赤くなるのは肥満細胞腫の特徴です
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1cm以上で2週間以上変化なし | 良性しこりでもこの条件では検査推奨されます |
多発している・全身に出ている |
内臓転移の可能性も含めて早期診断が重要です
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診断と治療の流れ
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細胞診(針吸引検査)
しこりに細い針を刺し、顕微鏡で腫瘍細胞を確認します。肥満細胞腫は細胞診で比較的診断がつきやすい腫瘍です。 -
外科切除+病理検査
手術でしこりを取り、悪性度(グレード)や切除マージンを評価します。 -
追加治療
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高悪性度や転移がある場合:抗がん剤・放射線治療などを検討
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内臓型(猫さんなど):外科手術だけでなく全身治療が必要になることもあります
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飼い主さんへのメッセージ
しこり=すべて悪性腫瘍ではありませんが、肥満細胞腫は「早期発見・早期治療」が予後を大きく左右します。
「様子を見る」よりも、見つけたらすぐに動物病院で検査を受けることが大切です。