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【獣医師コラム】犬さんや猫さんの「尿管外科」ってどんな治療?

<監修>

【腎泌尿器科診療】室 卓志 獣医師

【担当科目】総合診療科・腎泌尿器科・消化器科

 

〜詰まった“おしっこの通り道”を救う外科手術の世界〜

尿管とは、腎臓でつくられた尿を膀胱へと運ぶ細い管のこと。この尿管に障害が起こると、腎臓に大きなダメージを与える可能性があります。とくに猫では尿管結石による閉塞が多く、外科的対応が必要になることも少なくありません。

今回は、犬さんや猫さんに行われる尿管外科について、獣医師の視点から詳しくご紹介します。

どんな時に「尿管の外科手術」が必要?

尿管に以下のようなトラブルが起こると、外科的な治療が検討されます。

 尿管結石 尿管内に結石が詰まって尿が流れなくなる状態(特に猫さんで多発)
 尿管狭窄 炎症・線維化・腫瘍・先天異常などで尿管が狭くなった状態
 尿管破裂 尿管の損傷により尿が腹腔内に漏れて、尿腹症を起こす緊急状態
異所性尿管 尿管が先天的に膀胱以外の場所(尿道や膣、大腸など)に繋がった状態で、尿漏れを引き起こす
 尿管瘻の形成 尿管の末端部が瘤(こぶ)状に膨らんだ状態で、尿の流れが悪くなる状態
 その他(尿管ポリープ、腫瘍 など) まれに腫瘍性病変が関与する場合もあります

代表的な尿管外科の種類

以下のような術式が、状態に応じて選択されます。

1. 腎瘻設置術(Nephrostomy

一時的な尿流確保のため腎臓に直接カテーテルを挿入する手術です。緊急時に短時間で処置が可能で、尿が排出されることで劇的に改善が得られることも少なくありません。また、小さい尿管結石であれば、腎盂圧や尿管圧の軽減により結石が排石されることもあり、内科治療により尿管炎が改善する時間を稼ぐことも可能です。設置後は腎臓の尿産生能を直接評価でき、腎瘻を介して尿管の開通性を評価することもできます。尿管外科の術後管理や検査、治療にもなる縁の下の力持ちのような手術手技です。

2. 尿管切開術(Ureterotomy)

結石などを取り除くために、尿管に小さく切開を加える術式です。術後の尿管狭窄や繊維化などを引き起こす可能性があるため、縫合に高度な技術が求められます。尿管外科の基本的な手術方法です

3. 尿管膀胱新吻合術(Ureteroneocystostomy)

尿管切開後や尿管切除後に尿管と膀胱を吻合する方法です。尿路変更術の一つであり、尿管外科だけでなく膀胱腫瘍後の再建にも用いられる手術手技です。腎臓に近い部位の尿管における吻合は狭窄などのリスクがありますが、腎臓や膀胱を移動させることで実施可能となることもあります。尿管結石を摘出後に拡張した尿管と膀胱を吻合することで尿管結石の再発を低減することが可能であり、尿管結石に対する主な手術方法となりつつあります。手術難易度が高く、時間もかかりやすいですが、当院では尿管結石に対する手術として尿管切開後の尿管膀胱新吻合術を主に実施しております。

4. 尿管切除吻合術(Ureterectomy + Anastomosis)

結石や腫瘍、狭窄部分を含む尿管の一部を切除し、残った尿管を再接合します。尿管同士を吻合するため、尿管の長さや腫れ具合だけでなく、特に術後の狭窄に注意が必要です。

5. SUBシステム(Subcutaneous Ureteral Bypass)※主に猫

尿管のバイパス路を皮下に人工的に設置するものです。再閉塞しにくく、長期的な管理が可能ですが、軽度なものも含めて術後の長期的な合併症が比較的多く、定期的な洗浄が必要という欠点があります。

SUB(サブ)とは:腎臓から膀胱へ尿を通す細いチューブとリザーバーを皮下に埋め込み、定期的に洗浄して機能維持します。

6. 尿管ステント留置術

尿管内に細いチューブ(ステント)を挿入し、狭窄部位を広げて尿の流れを確保する方法です。腫瘍などの進行性疾患に緩和治療として用いられることもあります。術後合併症が多いため、現在はほとんどの症例で実施されない手術方法です。

症例の多い「猫の尿管結石」は要注意!

猫の尿管閉塞は、シュウ酸カルシウム結石が原因となることが多く、内科管理が困難なケースでは外科治療が必要です。以下のような症状があれば、早期受診が重要です。

  • 食欲不振

  • 嘔吐

  • 体重減少

  • 多飲多尿あるいは排尿減少

  • 元気消失

  • 血液検査でクレアチニンやBUNの上昇

術後の注意点と管理

尿管外科は、十分に適応を見極め、適切な処置を実施しなければ、術後トラブルや再閉塞や感染のリスクが高い繊細な手術です。術後には以下のような対応が求められます。

  • 定期的な超音波・血液検査によるモニタリング

  • 食事管理・水分管理(結石再発予防)

  • 慢性腎臓病の進行抑制

  • SUB装着動物は定期的な洗浄・管理(外来で対応)

まとめ

尿管外科は、犬や猫の命を救うための重要な選択肢のひとつです。とくに猫の尿管結石は早期発見と的確で様々な対応が鍵となります。拡大鏡や顕微鏡手術が一般的になってきており、尿管外科が確実に安全に実施できるようになっています。尿管切開術と尿管膀胱新吻合術は結石の摘出だけでなく、SUBシステムで頻発する術後合併症が少なく、再発率も低下させることができるため、第一選択の手術方法となっております。

ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制

セカンドオピニオン設置

下部尿路疾患の症状に対して迅速に対応し、必要な検査(血液検査・尿検査・レントゲン・超音波・CT検査など)を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。

特に「頻尿」「血尿」「尿が出ない尿閉」などのケースでは、早期の処置が非常に重要です。

また、専門診療の腎泌尿器科(室 卓志獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには重症化した下部尿路疾患や慢性腎臓病など、長期的なケアが必要なケースの受け入れを行っております。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。

 

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