──天候と健康の関係を獣医師が解説──
「雨の日の散歩、うちの子どうしよう…?」と悩まれる飼い主さんも多いのではないでしょうか。室内トイレができる子もいれば、お外でしか排泄できない子もいますし、雨が苦手な子もいれば、水たまりが大好きな子もいます。
では、獣医師としての見解は?
結論からお伝えすると、「健康状態や生活習慣に応じて無理のない範囲で行うべき」です。その理由と注意点について、詳しくご説明いたします。
目次
【1】雨の日の散歩が必要なケース
排泄のために外に出る必要がある子
完全に外トイレ派の犬さんの場合、散歩は単なる運動だけでなく、生命維持の観点からも必要です。我慢し続けると、膀胱炎や尿石症、さらには腎臓病へのリスクが高まります。
【対策】
・短時間で要件を済ませる「排泄だけ散歩」に切り替える
・屋根付きの公園や建物の軒下など、濡れにくい場所を活用する
もちろん排泄後には、適切に処理をしてくださいね。そのままにしておくと、衛生管理上問題が生じます。
【2】健康な犬さんなら適度な雨ならOK
元気な若い犬さんで、かつ雨を嫌がらない子であれば、小雨程度の散歩は問題ありません。できれば、レインコートなど雨よけは使用いただくのが理想的です。
【対策】
・レインコートや防水ハーネスで体温保持してください
・帰宅後の乾燥と足拭きを徹底(肉球間の湿りは皮膚炎の元)してください
【3】雨の日散歩で注意すべき健康リスク
●体温低下(特にシニア犬・子犬)
濡れることで体温が奪われ、風邪様症状(ケンネルコフ)や関節痛・感染症の原因になります。気温が低い日には特に注意が必要です。
●皮膚トラブル(趾間炎・マラセチアなど)
足先やお腹が湿ったままになっていると、皮膚トラブルの原因に。特に趾間(足の指の間)は菌が繁殖しやすい部位です。
●耳の感染
垂れ耳の犬種(例:キャバリア、コッカー、ビーグル)は耳の中が湿りやすく、外耳炎を悪化させることもあります。
【4】雨の日に無理をすべきではない犬さん
以下に該当する犬は、基本的には散歩を控えるか代替策を検討しましょう。
分類 | 該当する犬さん | 理由・注意点 |
高齢犬さん | シニア期(一般的に7歳以上) | 体温調整能力や免疫力が低下。関節痛や寒さに弱く、濡れることで体調悪化のリスクあり。 |
子犬さん | 生後6ヶ月未満など未成熟な場合 | 免疫機能が未発達で、低体温・下痢・体調不良の原因になりやすいです。 |
心臓病・呼吸器疾患を持つ犬さん | 僧帽弁閉鎖不全症、気管虚脱、慢性気管支炎など | 湿気や寒暖差が呼吸や循環に負担をかけ、咳やチアノーゼの悪化リスクとなります。 |
関節疾患を持つ犬さん | 関節炎、股関節形成不全など | 濡れた路面で滑ってしまうことや寒さで関節の痛みが悪化しやすい。 |
皮膚病を持つ犬さん | アトピー性皮膚炎、マラセチア性皮膚炎、趾間炎など | 湿気が皮膚炎を悪化させます。特に足先や腹部は要注意です。 |
垂れ耳犬種 | コッカースパニエル、ビーグル、バセットハウンドなど | 湿気で耳の中が蒸れやすく、外耳炎の温床になりやすいです。 |
被毛の乾きにくい長毛犬種 | シーズー、マルチーズ、プードルなど | 乾かすのに時間がかかり、皮膚トラブルや体温低下のリスクが高いです。 |
雨や風を極度に嫌がる犬さん | 雨音に過敏、パニックになるタイプ | 無理に外に出すことでストレスやトラウマになる可能性もあります。 |
【5】室内でもできる運動代替案
雨の日でも犬さんのストレスをためない工夫は可能です。
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知育トイ(コングやノーズワークマット)
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簡単なトリック練習(おすわり・伏せ・ターンなど)
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廊下での軽い追いかけっこ遊び
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ペット用ルームランナー(高齢犬には不向き)
【6】まとめ:飼い主様が守るべき3つのポイント
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無理に行かず、犬さんの体調・性格を優先すること
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散歩後は必ず全身を清潔に・乾燥を徹底すること
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外でしか排泄できない子は「短時間+対策」で負担軽減
【最後に】
雨の日も、犬さんにとっては大切な日常の一部です。無理に避ける必要はありませんが、健康状態や個性に合わせて「雨の日なりの楽しみ方」を工夫してあげましょう。心地よい暮らしのために、私たち飼い主ができる配慮はたくさんあります。