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【横浜鶴ヶ峰院】愛犬・愛猫に赤いしこりを見つけたら?皮膚腫瘍で最も注意すべき「肥満細胞腫」のサインと治療法

 

【専門診療】中津  院長

【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科

 

 

「肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)」という名前を聞くと、多くの飼い主様が「うちの子が太っているからなったのでしょうか?」と心配されます。しかし、この病気と体重の増加(肥満)は一切関係ありません。

肥満細胞とは、アレルギー反応や炎症に関わる免疫細胞の一種です。細胞内にヒスタミンなどの化学物質をたっぷり含んで「丸々と太って見える」ことからこの名前がつきました。この細胞が腫瘍化(ガン化)したものが肥満細胞腫です。

1.疫学(かかりやすい犬種・猫種)

犬さんの場合: 皮膚に発生する悪性腫瘍の中で最も発生率が高く、全皮膚腫瘍の約15〜20%を占めます。あらゆる犬種で発生しますが、特にパグ、ボクサー、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグなどの短頭種や、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーでの発生が多いことが知られています。

猫さんの場合: 猫さんでも皮膚腫瘍のなかで2番目に多く見られますが、犬さんとは異なり内臓(特に脾臓や腸などの消化器)に発生することも珍しくありません。シャム猫などで比較的多く見られる傾向があります。

2.原因:なぜ肥満細胞腫になるのか

はっきりとした原因は完全には解明されていません。しかし、遺伝子の突然変異が深く関わっていることがわかってきています。 特に「c-kit(シーキット)」と呼ばれる、細胞の増殖に関わる遺伝子の変異が、犬さんの肥満細胞腫の約20〜30%、猫でも一定割合で確認されており、これが細胞を異常増殖させるスイッチになっていると考えられています。

3.症状:赤いしこりに要注意

肥満細胞腫は「偉大なる詐欺師」という異名を持ちます。虫刺されのような小さな赤いポッチ、柔らかい脂肪の塊のようなしこり、あるいはジクジクとただれたしこりなど、見た目が非常に多様だからです。

  • 皮膚のしこり: 大きくなったり小さくなったりを繰り返すことがあります。
  • ダリエ徴候: しこりを触ったり刺激したりすると、細胞からヒスタミンが放出され、周囲が赤く腫れたり痒みが出たりする特異的な反応です。
  • 全身症状(腫瘍随伴症候群): 腫瘍から大量のヒスタミンが血中に放出されると、胃酸の分泌が過剰になります。これにより、嘔吐、食欲不振、胃潰瘍、黒色便(血便)などの消化器症状が引き起こされることがあります。

 

4.診断:スピーディーな検査で早期発見を

  • 細胞診(針生検・FNA): しこりに細い注射針を刺し、細胞を採取して顕微鏡で確認します。麻酔なしで数十秒で終わり、肥満細胞特有の「顆粒(かりゅう)」が見えれば、その場でほぼ診断がつきます。
  • ステージング(進行度の確認): 診断がついた後は、リンパ節への転移の有無、超音波検査による肝臓や脾臓の確認、血液検査などを行い、病気がどこまで広がっているかを評価します。
  • 病理組織検査: 手術で切除したしこりを専門の検査センターに送り、悪性度(グレード)や、完全に取り切れているか(マージン)を確定診断します。

5.治療:悪性度と広がりに応じたアプローチ

  1. 外科手術: 最も基本かつ重要な治療です。肥満細胞腫は周囲の組織に根を張るように広がるため、目に見えるしこりよりも「広く、深く」切り取る(拡大切除)必要があります。
  2. 放射線治療: 足先や顔まわりなど、構造上どうしても大きく切り取ることが難しい場所で、細胞が残ってしまった場合に追加で行われます。
  3. 内科治療(抗がん剤・分子標的薬): 悪性度が高く転移のリスクがある場合や、すでに転移している場合に選択されます。近年は、原因となるc-kit遺伝子の異常な働きをピンポイントで抑える「分子標的薬(トセラニブなど)」が獣医療でも普及し、治療の選択肢が大きく広がりました。
  4. 対症療法: ヒスタミンによる胃潰瘍やアレルギー症状を和らげるため、ステロイド剤、抗ヒスタミン薬、胃薬などを併用します。

6.予後:犬猫さんでの違いとグレードの重要性

犬さんの予後: 病理組織検査で判定される「グレード(悪性度)」に大きく左右されます。 低悪性度(グレード1、またはKiupel分類のLow grade)であれば、適切な手術で完治が見込めます。しかし、高悪性度(グレード3、High grade)の場合は進行が早く、転移率も高いため、手術と内科治療を組み合わせても予後が厳しいケースがあります。

猫さんの予後: 皮膚にできる肥満細胞腫の多くは良性の挙動を示し、切除による予後は非常に良好です。自然に退縮(消えていく)する特殊なタイプもあります。脾臓の肥満細胞腫は転移していても、脾臓を摘出することで劇的な症状の改善と長期生存が見込めることが多いです。ただし、腸管にできるタイプは非常に進行が早く、予後不良となる傾向があります。

予防:日常のスキンシップが最大の防御

残念ながら、肥満細胞腫を確実に防ぐワクチンやサプリメントはありません。最大の予防策は「早期発見・早期治療」です。 日々のブラッシングやスキンシップの中で、愛犬・愛猫の体をよく触り、小さな「しこり」や「赤み」がないかチェックしてください。もししこりを見つけた場合は、絶対に強く揉んだり潰したりせず(ヒスタミンが放出されショック状態になる危険があるため)、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

まとめ

肥満細胞腫は犬猫さんともに遭遇することの多い身近な腫瘍ですが、「ただのイボ」と放置すると命に関わることもある恐ろしい病気です。しかし、小さいうちに発見し、正確な悪性度の評価に基づいた治療を行えば、決して打ち勝てない病気ではありません。毎日のスキンシップを楽しみながら、小さな変化を見逃さないようにしてあげてください。不安なことがあれば、いつでもかかりつけの獣医師にご相談ください。

ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制

セカンドオピニオン設置

ハグウェル動物総合病院では、腫瘍疾患に直面した飼い主様と動物さんに、より良い選択をしていただけるよう セカンドオピニオン外来 (専門診療の腫瘍科、中津 央貴獣医師)を設けています。

腫瘍は種類や進行度によって治療方法が大きく異なり、外科手術・化学療法・放射線治療・緩和ケアなど多様な選択肢があります。そのため、診断や治療方針について複数の視点から検討することが大切です。

当院ではCTなどの高度画像診断を用い、腫瘍の性質や広がり、転移の有無を的確に把握したうえで、専門的な知見をもとに治療方針をご提案いたします。セカンドオピニオンを通じて、飼い主様が納得し、安心して治療に臨んでいただけることを第一に考えています。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。

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