
ワクチンで予防ができるレプトスピラ症が、犬さんで令和8年5月に横浜市で発生が見られたと報告がありました。

目次
1. 疫学:どこで、いつ感染しやすいの?
レプトスピラ症は世界中で発生が見られる感染症です。日本国内でも毎年発生が報告されており、特に夏から秋にかけての温暖で多湿な時期や、台風・大雨の直後に増加する傾向があります。 自然豊かな場所(キャンプ場、川、山など)だけでなく、都市部の公園や河川敷などでも、野生動物(特にネズミなどの齧歯類)が生息している場所であればどこでも感染のリスクがあります。
日本全国で発生が見られています(参照:ゾエティス感染症ニュースレターより)



2. 原因:何が原因で感染するの?
原因はレプトスピラ(Leptospira)という、らせん状の細菌です。 この菌を保有しているネズミなどの野生動物が、尿と一緒に菌を排泄します。その尿に汚染された水(水たまり、川、池)や土壌に、犬や猫が触れたり、その水を飲んだりすることで感染します。 皮膚に小さな傷があったり、目や口の粘膜から直接入り込む(経皮・経粘膜感染)のが主なルートです。
3. 症状:どんなサインに気をつければいい?
レプトスピラ症の症状は、感染した菌の型(血清型)や動物の免疫力によって大きく異なります。
- 犬の場合
- 軽症〜無症状: 軽い発熱程度で自然に治ることもあります。
- 急性・重症型: 突然の高熱、元気・食欲の消失、嘔吐、下痢、筋肉の痛み(歩くのを嫌がる)が見られます。進行すると、急性腎障害や肝障害を引き起こし、黄疸(白目や歯茎が黄色くなる)、尿が出ない、あるいは血尿が出るといった症状が現れます。重症化すると、肺出血などを起こし、数日で命を落とすこともあります。
- 猫さんの場合
- 猫はレプトスピラに対して比較的抵抗力が強いとされており、感染しても無症状(不顕性感染)であることがほとんどです。まれに軽度の発熱や腎障害を起こすことがある程度と言われています。しかし、無症状であっても菌を排泄し、人や他の動物の感染源になる可能性はゼロではありません。
4. 診断:どうやって見つけるの?
レプトスピラ症が疑われる場合、以下の検査を組み合わせて診断を下します。
- 血液検査・血液化学検査: 炎症の数値、腎臓や肝臓のダメージ(BUN、クレアチニン、肝酵素など)を確認します。
- 尿検査: 腎臓の機能低下や血尿の有無を確認します。
- 病原体検査(PCR検査): 血液や尿の中にレプトスピラ菌の遺伝子がないか調べます。早期発見に非常に有効です。
- 抗体検査(MAT法など): 血液中の抗体価(菌に対する免疫反応)を調べます。時期を空けて2回測定し、数値の上昇を確認することが多いです。
その他に最近では、初期に有用な検査キットも出てきています。
5. 治療:もし感染してしまったら?
レプトスピラは細菌であるため、抗菌薬(抗生物質)の投与が治療の基本となります。初期のうちに適切な抗菌薬(ペニシリン系やドキシサイクリンなど)を投与できれば、重症化を防ぐことができます。 また、腎臓や肝臓にダメージが出ている場合は、それをサポートするための対症療法(点滴による静脈内輸液、吐き気止め、胃薬など)が不可欠です。重度の急性腎不全に陥った場合は、透析治療が必要になることもあります。
6. 予後:治る病気なの?
予後は、「いかに早く発見し、いかに早く治療を開始できるか」にかかっています。 初期段階で治療を始められれば、多くの場合回復が見込めます。しかし、重度の腎障害や肝障害、肺出血などを起こしてからの治療開始となると、救命率が著しく下がり、残念ながら亡くなってしまうケースも少なくありません。
7. 予防:愛犬・愛猫を守るための対策
レプトスピラ症は、防ぐことができる病気です。
- ワクチン接種(※主に犬さん) 犬さんには予防用の混合ワクチンがあります。ただし、レプトスピラには多くの「型」があり、ワクチンに含まれている型にしか効果がありません。お住まいの地域や、よく行くお出かけ先(キャンプや川遊びをするか等)のライフスタイルに合わせて、獣医師と相談のうえ、適切な種類のワクチンを選びましょう。
- 危険な場所に近づけない 大雨や台風の後の水たまりで遊ばせたり、水を飲ませたりしないようにしましょう。また、ネズミが多い場所(ゴミ捨て場、倉庫など)には近づけない工夫も大切です。
- 人への感染予防 もし愛犬が感染してしまった場合、尿の処理には十分な注意が必要です。必ず使い捨ての手袋やマスクを着用し、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒を徹底してください。
獣医師からのメッセージ レプトスピラ症は、愛犬の命を脅かすだけでなく、ご家族様にも感染するリスクのある重要な病気です。「うちの子はアウトドアに行かないから大丈夫」と思っていても、お散歩コースの水たまりに危険が潜んでいるかもしれません。少しでも普段と違う様子(急にぐったりしている、おしっこの様子がおかしいなど)があれば、迷わず動物病院へご相談くださいね。
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