

【皮膚科専門診療】星野 友哉 獣医師
【担当科目】皮膚科
動物病院での診察において、皮膚病と並んで非常に多く遭遇するのが「耳のトラブル」です。中でも「外耳炎(がいじえん)」は、犬さんや猫さんが強い不快感や痛みを伴う病気であり、慢性化してしまうケースも少なくありません。
今回は、大切なご家族である愛犬・愛猫の耳を守るために知っておきたい、外耳炎の基礎知識から治療、予防法までを詳しく解説します。
目次
疫学(どのくらい発生するの?)
外耳炎は非常に一般的な疾患で、犬さんの10〜20%、猫さんの2〜6%が生涯に一度は経験すると言われています。特に犬さんでの発生が多く、以下のような特徴を持つ犬種は注意が必要です。
- 垂れ耳の犬種: アメリカン・コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリーバーなど(耳の中が蒸れやすいため)
- 耳道に毛が多い犬種: トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザーなど
- アレルギー体質の犬種: フレンチ・ブルドッグ、柴犬、シーズーなど。 猫さんの場合は犬さんほど多くありませんが、耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の感染による若い猫での発生が多く見られます。
原因(なぜ外耳炎になるの?)
外耳炎の治療を難しくしているのは、原因が一つではないことが多い点です。獣医学では、原因を以下の4つの要因(PSPP)に分けて考えます。
- 主原因(Primary causes): アレルギー(アトピー性皮膚炎や食物アレルギー)、寄生虫(耳ダニ)、異物(植物の種など)、内分泌疾患など。これらが外耳炎の引き金となります。
- 素因(Predisposing factors): 垂れ耳、耳道の狭さ、高温多湿な環境、不適切な耳掃除(綿棒で強く擦るなど)。また、多くはありませんが、耳道内のポリープや腫瘤なども原因となり、外耳炎が重症化することもあります。これらは外耳炎になりやすい環境を作ります。
- 持続要因(Perpetuating factors): 慢性化による耳道の肥厚(腫れ)や石灰化など。治りにくくする要因です。
- 二次要因(Secondary causes): 細菌(ブドウ球菌や緑膿菌など)や真菌(マラセチア)の増殖。主原因によって炎症が起きた環境で繁殖し、症状を悪化させます。
いわゆる、体質から犬種、さまざまな要因が絡み合うこともあり、根本的な原因追及が必要ということがわかりますね。
症状(こんなサインに要注意!)
言葉を話せない犬猫さんは、以下のような行動で耳の異常を訴えます。一つでも当てはまる場合は、早めの受診をおすすめします。
- しきりに耳を後ろ足で掻く
- 頭をブルブルと振る、または傾ける(斜頸)
- 耳やその周辺から嫌なニオイ(悪臭)がする
- 耳垢が増えた、色がいつもと違う(黒色、黄色、ドロドロなど)
- 耳の穴の周辺が赤く腫れている
- 耳を触られるのを嫌がる、キャンと鳴く
診断(動物病院では何をするの?)
適切な治療を行うためには、正確な診断が不可欠です。主に以下のような検査を行います。
- 耳鏡検査: 専用の器具(耳鏡)を使って、耳の奥(耳道や鼓膜)の赤み、腫れ、異物、鼓膜の状態を確認します。
- 顕微鏡検査(細胞診): 耳垢を採取して染色し、顕微鏡で観察します。細菌やマラセチア(カビの仲間)、耳ダニがいないかをチェックします。
- 細菌培養・薬剤感受性試験: なかなか治らない場合、どの細菌が原因で、どの抗生物質が効くのかを調べる検査を行います。
治療(どのように治すの?)
原因や症状に合わせて、以下の治療を組み合わせて行います。
- 耳の洗浄: まずは専用の洗浄液を使って、耳垢や汚れを優しく洗い流します。汚れが溜まった状態では、点耳薬の効果が発揮できません。
- 点耳薬の投与: 顕微鏡検査の結果に基づいて、抗生物質、抗真菌薬、抗炎症薬(ステロイドなど)が含まれた点耳薬を処方します。
- 内服薬の投与: 炎症や痒みがひどい場合や、中耳炎まで進行している場合は、飲み薬を併用することがあります。
- 基礎疾患の治療: アレルギーや甲状腺機能低下症などが根本にある場合は、並行してその治療を行わないと再発を繰り返します。
- 外科手術: 慢性化して耳道が塞がってしまったり、薬物治療に反応しない場合は、耳の穴を取り除く手術(全耳道切除術など)が必要になることもあります。
予後(治るの?)
急性で単純な外耳炎であれば、適切な治療により1〜2週間程度で良好に回復します。しかし、アレルギーなどの基礎疾患がある場合や、治療が遅れて慢性化してしまった場合は、長期間の管理が必要になったり、再発を繰り返すことがあります。自己判断で治療を中断しないことが最も重要です。
予防(お家でできるケアは?)
- 定期的なチェック: スキンシップの一環として、耳の中が赤くないか、臭わないか、耳垢が溜まっていないかを定期的に確認しましょう。
- 正しい耳掃除: 綿棒を使って奥までゴシゴシ擦るのは絶対にNGです。汚れを奥に押し込んだり、皮膚を傷つけたりして外耳炎の原因になります。見える範囲の汚れを、洗浄液を含ませたコットンで優しく拭き取る程度にとどめてください。
- シャンプー後のケア: 水に入った後やシャンプー後は、耳の中に水が残らないように外側を優しく拭き取ってあげましょう。
- 基礎疾患のコントロール: アレルギーを持つ子の場合は、食事管理や皮膚のケアを並行して行うことが最大の予防になります。
まとめ
「たかが耳垢」と放置してしまうと、激しい痛みや難聴に繋がることもある恐ろしい病気です。少しでも「いつもと違う」と感じたら、お早めにかかりつけの動物病院へご相談ください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
【皮膚科 セカンドオピニオン外来のご案内】
2026年5月1日より、30分枠でのご予約になりますが、診察時間を拡大いたします。
- 曜日:毎週 月曜日・木曜日
- 診療時間:10:00〜13:00、15:00〜18:00
ハグウェル動物総合病院では、皮膚疾患にお悩みの動物さんとご家族のために、皮膚科専門診療(担当:星野友哉獣医師)によるセカンドオピニオン外来を設けています。
皮膚疾患は「かゆみ」「脱毛」「赤み」など一見似た症状でも、その原因や進行度によって治療法が大きく異なります。アレルギー、感染症、ホルモン疾患、腫瘍など、複数の要因が関与するケースも少なくありません。
そのため当院では、問診・皮膚検査・細胞診・血液検査を活用し、病態を多角的に評価します。そのうえで、専門的な知見に基づき、現在の治療の見直しや新たな選択肢をご提案いたします。
「なかなか良くならない」
「診断や治療方針に不安がある」
「他の治療選択も知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方に、納得と安心を提供することを大切にしています。
また、当院ではトリミング部門と連携し、薬浴やスキンケアまで一貫したサポートが可能です。治療だけでなく、日常管理まで含めた総合的な皮膚ケアをご提案いたします。
大切なご家族にとって最適な選択ができるよう、ぜひ一度ご相談ください。
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