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腎泌尿器科

【腎泌尿器科診療】室 卓志 獣医師
【担当科目】総合診療科・腎泌尿器科・消化器科
犬猫さんの尿石症の中でも多いのがストルバイト結石です。
しかし「ストルバイトだから療法食」という単純な話ではありません。重要なのは、なぜストルバイトができたのかという原因に基づいた栄養管理です。
ストルバイトはリン酸アンモニウムマグネシウム結晶であり、尿の性状と細菌感染が深く関与します。栄養学的視点から整理します。
原因の違いを理解する
犬さんの場合
多くは尿路感染が原因です。ウレアーゼ産生菌が尿素を分解し、アンモニアを増加させ、尿をアルカリ化させることで結晶が形成されます。この場合、抗菌治療が最優先であり、食事だけでの解決は不十分です。
猫の場合
感染ではなく、特発性にアルカリ尿や濃縮尿が関与するケースが多く見られます。つまり体質、飲水量、ストレス、食事組成などが関係します。原因により、食事設計は変わります。
尿pHのコントロール
ストルバイトはアルカリ尿で形成されやすく、目標尿pHはおおよそ6.0〜6.5です。
栄養学的に重要なのは以下です。
・適切な酸性化
メチオニンや動物性タンパク質は尿を酸性に傾けます。ただし過度な酸性化はシュウ酸カルシウム結石のリスクを高めるため、長期管理では慎重な設計が必要です。
・過剰な植物性原料の回避
植物性タンパク質中心の設計はアルカリ尿になりやすい傾向があります。
マグネシウム、リン、アンモニアの管理
ストルバイトはマグネシウム、リン、アンモニアから構成されます。
食事で重要なのは以下です。
・リンやマグネシウムの過剰を避ける
極端な制限は不要ですが、過剰摂取は避けます。
【特にマグネシウムが多い食材(注意度 高)】
- 大豆製品
豆腐、おから、納豆などで植物性タンパク源はマグネシウム含量が比較的高く、さらに尿をアルカリ化しやすい傾向があります。
- 緑黄色野菜
ほうれん草、小松菜、ブロッコリーは健康食イメージがありますが、手作り食で割合が増えるとミネラル過多になりやすい部分です。
- 全粒穀物・雑穀
玄米、オートミール、大麦などはミネラルが豊富です。
- 魚介類の一部
いわし、さば、煮干し(特に高含有)などの乾燥小魚はカルシウムと同時にマグネシウムも非常に多く含みます。
【リンが非常に多い食材(注意度 高)】
- 骨・骨由来食品
鶏骨、魚骨、骨粉、丸ごと小魚(煮干し・ししゃも)などです。骨を丸ごとあげることは少ないと思いますが、骨にはカルシウムとリンが大量に含まれています。犬猫さん用として与える場合、リン過剰の原因になりやすい代表例です。
- 内臓肉(特に注意)
レバー(鶏・牛・豚)、腎臓、心臓など栄養価は高いですが、リン濃度も非常に高いため常食や大量給与は避けてください。
- 乾燥肉・ジャーキー類
水分が抜けているためリン濃度が濃縮されています。
- 魚類
いわし、さば、まぐろ、かつおは良質タンパク源ですがリン含量は肉より高い傾向があります。
- 卵黄
卵白よりリンが豊富です。
- 乳製品
チーズやヨーグルトは犬猫さんでは少量嗜好品レベルに留めるのが安全です。
- 大豆製品
豆腐、納豆、おからなど植物性ながらリン含量は比較的高い食材です。
・適切なタンパク質量
タンパク質不足は尿がアルカリ化しやすくなります。
一方で過剰タンパクはアンモニア産生を増やすため、適正量が重要です。
・消化性の高いタンパク源
未消化タンパクは腸内発酵を促進し、アンモニア負荷を高めます。
最も重要なのは尿の希釈
結晶形成に最も影響する因子の一つが尿比重です。
・飲水量の確保
・ウェットフードの活用
・ナトリウムを適度に利用した飲水促進設計
・複数の給水ポイント設置
尿を薄くすることは、結晶形成リスクを大きく下げます。特に猫さんではここが最重要ポイントになります。
再発予防で気をつけること
溶解後も注意が必要です。
・長期的な極端な酸性化は避ける
・尿pHの定期モニタリング
・体重管理
肥満は活動量低下や飲水量低下につながります。
また猫さんではストレス管理も極めて重要です。特発性膀胱炎との関連が強いため、環境改善も食事管理と同じくらい重要です。
よくある誤解
・マグネシウムだけ減らせばよい
・療法食にすれば完全に安心
・一度治ればもうできない
これらはすべて誤りです。
原因、尿pH、尿比重、感染の有無、体質
これらを総合的に評価しなければなりません。
まとめ
ストルバイトの食事管理で最も重要なのは、結晶そのものではなく形成環境を理解することです。
犬さんでは感染管理が最優先。猫さんでは尿濃縮とアルカリ化への対策が中心。
そして共通して重要なのは、適切な栄養設計と十分な水分摂取です。
結石は結果であり、原因を是正しなければ再発します。食事は単なる制限ではなく、尿環境を整える治療の一部として設計することが重要です。
予防から高度医療までを目指す医療現場でも、尿石症は健診での早期発見が非常に重要な疾患の一つです。定期的な尿検査と適切な栄養管理が、将来の閉塞リスクを大きく下げます。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
下部尿路疾患の症状に対して迅速に対応し、必要な検査(血液検査・尿検査・レントゲン・超音波・CT検査など)を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「頻尿」「血尿」「尿が出ない尿閉」などのケースでは、早期の処置が非常に重要です。
また、専門診療の腎泌尿器科(室 卓志獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには重症化した下部尿路疾患や慢性腎臓病など、長期的なケアが必要なケースの受け入れを行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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