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腎泌尿器科

【腎泌尿器科診療】室 卓志 獣医師
【担当科目】総合診療科・腎泌尿器科・消化器科
多飲多尿という症状
多飲多尿(たくさん水を飲む、たくさん尿をする)は、犬猫さんの診療現場で非常によく遭遇する症状であり、単なる「水をよく飲む」という変化の裏に、全身性の疾患や命に関わる病気が隠れていることも少なくありません。ここでは獣医師の立場から、多飲多尿が起こる代表的な疾患と、その病態生理を疾患ごとに整理します。
まず理解しておきたいのは、多飲多尿とは「尿量が増える結果として水分摂取量が増える」か、「異常な喉の渇きによって水を多く飲み、その結果として尿量が増える」状態です。多くの場合、腎臓での尿濃縮障害が中心にあります。
多飲(polydipsia)の定義
犬さん
- 正常飲水量の範囲
体重1kgあたり40〜60ml/日程度 - 多飲の定義
体重1kgあたり 100mL/日以上 を持続的に示す場合
ただし、環境・食事(水分含有量)、活動量などで飲水量は変動するため、100ml/kg/日未満でも異常が疑われることがもあります。正常範囲内で60ml/kg/日を超えると、異常を疑う目安として扱うケースもあります。
猫さん
- 正常範囲
体重1kgあたり 約20〜45mL/日 - 多飲の定義
体重1kgあたり 50mL/日以上 を持続的に示す場合
猫さんが1日にどれだけの量の水を必要としているかというと、体重1kgあたり20~45ml程度。猫さんの平均的な体重は4kg程度なので、だいたい80~180ml程度ということになります。
多尿 (polyuria)の定義
犬・猫さん共通
- 正常尿量
体重1kgあたり 25〜40mL/日 - 多尿の定義
体重1kgあたり 50mL/日以上 - 重度の多尿
体重1kgあたり 100mL/日以上
尿量を計測するのはとても難しいことです。なぜなら犬さんの場合は散歩に行くことや、猫さんでも猫砂などを使用することで正確な尿量が把握しづらい状況といえます。また、日々の生活による正常な尿量を把握することが大事であり、個体差もあるため事前に見ておきましょう。
多飲多尿を示す疾患とは
- 慢性腎臓病
犬猫さんともに高齢で多く見られます。腎臓は本来、体に必要な水分を再吸収して濃い尿を作りますが、慢性腎臓病ではネフロンが徐々に破壊され、この尿濃縮能力が低下します。その結果、薄い尿が大量に作られ、水分が体外へ失われるため、脱水を防ぐために喉が渇き多飲が起こります。初期は元気食欲が保たれていることも多く、最初に気づく症状が多飲多尿であることが少なくありません。
- 糖尿病
血糖値が高くなることで、腎臓の尿細管で再吸収しきれなかったブドウ糖が尿中に排泄されます。尿中の糖は浸透圧を高め、水分を一緒に引き込むため、尿量が増加します。これを浸透圧利尿と呼びます。結果として体内の水分が失われ、強い喉の渇きが生じ、多飲多尿となります。食欲はある、あるいは増えているのに体重が減るという特徴を伴うことが多いです。
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
主に中高齢犬で多くみられます。過剰なコルチゾールは、抗利尿ホルモン(ADH)の作用を阻害し、腎臓での水の再吸収を妨げます。その結果、尿が薄くなり尿量が増加します。またコルチゾール自体が喉の渇きを強める作用もあり、多飲多尿が顕著になります。腹部膨満、脱毛、筋力低下などを伴うこともあります。
- 子宮蓄膿症
未避妊の中高齢雌犬で重要な鑑別疾患です。細菌感染により産生される毒素が腎臓の尿細管に影響を与え、尿濃縮障害を引き起こします。これにより多尿となり、結果的に多飲が生じます。発情後しばらくしてから多飲多尿が見られる場合は特に注意が必要です。
- 高カルシウム血症
悪性腫瘍、副甲状腺機能異常、特定の中毒などで起こります。血中カルシウム濃度が高い状態では、腎臓の尿細管が障害され、ADHへの反応性が低下します。その結果、尿を濃縮できず多尿となります。腫瘍関連疾患が背景にあることも多く、見逃せない原因です。
- 肝疾患
重度の肝機能低下では、尿素の産生が減少し、腎髄質の浸透圧勾配が維持できなくなります。これにより腎臓は尿を濃縮できず、多尿が起こります。多飲はその結果として現れます。若齢犬では門脈シャント、高齢では慢性肝疾患が背景にあることがあります。
- 心因性多飲
明らかな器質的疾患がなく、行動学的・心理的要因により過剰に水を飲むケースです。犬さんで比較的多く、ストレスや環境変化が関与します。ただし、診断は必ず他の疾患を除外した上で慎重に行う必要があります。
- 尿崩症
抗利尿ホルモンの分泌不足、あるいは腎臓がADHに反応しないことで起こります。極めて薄い尿が大量に作られ、極端な多飲多尿がみられます。比較的まれですが、若齢から症状が続くケースでは鑑別に挙げられます。
- 薬剤性
ステロイド、利尿薬、抗けいれん薬などは多飲多尿を引き起こすことがあります。病気そのものではありませんが、服薬歴の確認は非常に重要です。
多飲多尿は単独では診断できず、血液検査、尿検査、画像検査を組み合わせて原因を特定する必要があります。「年のせい」「水をよく飲むのは良いこと」と見過ごされがちな症状ですが、早期発見によって進行を抑えられる疾患も多く存在します。
まとめ
獣医師が多飲多尿を重要視する理由
多飲多尿は腎臓病、内分泌疾患、感染症、腫瘍など、全身性疾患の初期サインであることが非常に多い症状です。特に慢性腎臓病や糖尿病では、他の症状がほとんど出ない段階で最初に現れることも珍しくありません。
そのため、多飲多尿は「症状が軽いから様子見」ではなく、「体からの早期警告」として捉えるべき変化です。不安なことがあればご相談ください
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
下部尿路疾患の症状に対して迅速に対応し、必要な検査(血液検査・尿検査・レントゲン・超音波・CT検査など)を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「頻尿」「血尿」「尿が出ない尿閉」などのケースでは、早期の処置が非常に重要です。
また、専門診療の腎泌尿器科(室 卓志獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには重症化した下部尿路疾患や慢性腎臓病など、長期的なケアが必要なケースの受け入れを行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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