
【循環器診療】森山 寛大
【担当科目】総合診療科・循環器科
【循環器診療】佐藤 貴紀
【担当科目】総合診療科・循環器科・栄養管理科
呼吸が苦しそうなとき、体の中で何が起きているのか 。
肺水腫(はいすいしゅ)は、犬さん猫さんともにみられる命に直結する呼吸器(循環器からの二次的)の緊急疾患です。
肺の中に水分が異常に貯留することで、酸素交換が障害され、短時間で重篤な低酸素状態に陥ります。
本記事では、獣医師の視点から
①肺水腫の仕組み/②犬さんと猫さんの違い/③原因分類/④症状/⑤診断/⑥治療/⑦在宅での注意点
を、獣医学的背景を含めて詳しく解説します。
目次
肺水腫とは?|「肺が水に溺れる」状態
肺は無数の肺胞という小さな袋の集まりで構成され、ここで酸素と二酸化炭素の交換が行われます。
肺水腫では、
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肺の毛細血管から水分が漏れ出す
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肺胞や気道内に液体が貯留する
結果として、
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酸素が取り込めない
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二酸化炭素が排出できない
という呼吸不全の状態になります。
肺水腫の大きな分類
① 心原性肺水腫(最も多い)
心臓病が原因で起こる肺水腫です。
犬さんで多い心原性疾患
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僧帽弁閉鎖不全症(小型犬・高齢犬)
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拡張型心筋症(大型犬)
猫さんで多い心原性疾患
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肥大型心筋症
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拘束型心筋症
発生メカニズム
心臓のポンプ機能低下
→ 肺静脈圧の上昇
→ 血管内圧に耐えきれず水分が肺へ漏出
② 非心原性肺水腫
心臓以外の要因で起こる肺水腫です。
主な原因:
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重度ストレス・強い興奮
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てんかん発作後
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感電、溺水
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外傷、窒息
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重症感染症(敗血症など)
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神経原性肺水腫
若齢の犬猫でも起こり得る点が重要です。
犬さんと猫さんで異なる「肺水腫の現れ方」
犬さんの特徴
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咳が目立ちやすい
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ピンク色の泡状痰を吐くことがある
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呼吸数の増加に飼い主さんが気づきやすい
猫さんの特徴(特に注意)
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咳をほとんどしない
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突然の呼吸困難として発症
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口を開けて呼吸する時点で重症
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ストレスに非常に弱く、受診時に急変することも
猫さんでは「気づいた時点でかなり進行している」ケースが少なくありません。
こんな症状は要緊急受診
犬猫さん共通で見られる症状です。
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呼吸が速い・浅い・努力呼吸
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口を開けて呼吸する
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横になれず、胸を張った姿勢を取る
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舌や歯肉が紫色(チアノーゼ)
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元気消失、ぐったりする
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夜間・早朝の急変
呼吸が苦しそう=すでに危険な状態と考えてください。
動物病院での診断
肺水腫が疑われる場合、検査よりもまず救命処置が優先されます。
主な診断手段:
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胸部レントゲン検査(肺の白い浸潤影)
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心臓超音波検査(心原性かの判断)
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血液検査
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酸素飽和度測定
※重症例では、検査を最小限にしながら治療を進めます。
治療の基本
急性期治療
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酸素投与(酸素室・マスク)
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利尿薬(肺内の水分を減らす)
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血管拡張薬・強心薬(心原性の場合)
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鎮静(特に猫で重要)
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徹底した安静管理
安定後の長期管理
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心臓病の内服治療
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体重・塩分管理
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定期的な胸部・心臓検査
肺水腫は再発リスクが高い病態であり、慢性的な管理が重要です。
ご家庭でできる重要な観察ポイント
犬猫さん共通
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安静時呼吸数
・犬:30回/分以上
・猫:40回/分以上
は要注意 -
咳・呼吸音の変化
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夜間の呼吸状態
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食欲・活動性の低下
呼吸の様子を動画で記録しておくと、診断に非常に役立ちます。また、首につけるIoTのデバイスなどで管理することをおすすめします
まとめ|肺水腫は「迷わず、すぐ受診」
肺水腫は、
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心臓病の重大なサインであることが多い
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発症から悪化までが非常に早い
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早期治療で改善が期待できる
という特徴を持つ疾患です。
「呼吸がいつもと違う」その違和感を、どうか見逃さないでください。
犬さん・猫さんの命を守るために、正しい知識と、早い行動を一緒に大切にしていきましょう。
ハグウェル動物総合病院の体制
セカンドオピニオン設置
今回の咳か、くしゃみか、逆くしゃみかの判断がわからないケースなど、的確な診断が必要な場合は、ハグウェル動物総合病院の循環器科をご予約ください。症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として身体検査、血液検査、心エコー検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧検査などを実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
早期発見をしながら、どのタイミングで、どの投薬が望ましいのか、循環器認定医としっかり相談し決定することをお勧めいたします。
また、専門診療の循環器科(森山 寛大 獣医師・佐藤 貴紀 獣医師)を設けているため、セカンドオピニオンの受け入れも行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
ご予約・ご相談はお気軽に!
LINE・お電話(045-442-4370)・受付(動物病院総合受付)にて承ります♪

