
【循環器診療】森山 寛大
【担当科目】総合診療科・循環器科
【循環器診療】佐藤 貴紀
【担当科目】総合診療科・循環器科・栄養管理科
『運動不耐性』とは、いつもできていた運動(散歩・走る・遊ぶ)ができなくなる、またはすぐ疲れてしまう状態を指します。
厳密には病名ではなく、“体のどこかに問題があり、運動持続能力が低下している症状の総称”です。
こんな症状は注意:
「散歩に行きたがらない」「途中で止まる」「遊びが続かない」「すぐ寝てしまう」などの症状は、年齢のせいだけでなく疾患の初期サインであることが多いです。

目次
循環器(心臓)疾患による運動不耐性
犬猫さんの運動不耐性で最も重要なのが心疾患です。
主なメカニズム
運動時には全身に多くの酸素と血液を送る必要がありますが、心臓が十分な量の血液を送り出せなくなる → 体が酸素不足になる → 運動できないという流れで起こります。
代表的な心疾患
犬さん
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僧帽弁閉鎖不全症(特に小型犬)
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拡張型心筋症(大型犬)
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不整脈(心室性期外収縮、房室ブロックなど)
猫さん
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肥大型心筋症(HCM)
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拘束型心筋症(RCM)
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不整脈
伴いやすい症状
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咳(犬)
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呼吸が早くなる・浅い
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舌や歯茎が紫色(チアノーゼ)
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運動後に座り込む/倒れる(失神)
呼吸器疾患による運動不耐性
運動に必要な酸素が肺からうまく取り込めないことで起こります。
主な原因
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気管虚脱(小型犬さん)
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短頭種症候群(フレブル・パグなど)
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肺炎・肺水腫
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喉頭麻痺(大型犬さん)
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喘息(猫さん)
典型症状
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運動時にゼーゼー、ガーガーと呼吸
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首を伸ばして呼吸する
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口を開けての呼吸(特に猫は要注意)
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咳
代謝・血液の異常による運動不耐性
貧血
血液が酸素を運べないため、少し動いただけで疲れやすくなります。
原因例
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免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
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慢性腎臓病
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消化管出血
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フィラリア症(犬)
症状
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ぐったり
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呼吸が早い
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粘膜が白い
内分泌疾患
ホルモン異常で運動持続力が低下します。
犬さん
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甲状腺機能低下症 … 筋力低下、持久力低下
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クッシング症候群 … 筋萎縮
猫さん
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甲状腺機能亢進症 … 呼吸増加、体重減少で体力低下
電解質異常
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低カリウム血症(猫の慢性腎臓病で多い)
→ 筋力低下、歩行困難
筋肉・神経・骨格の問題による運動不耐性
筋疾患
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特発性多発性筋炎
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ミオパチー(遺伝性を含む)
神経疾患
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変性性脊髄症(大型犬)
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椎間板ヘルニア
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末梢神経障害
整形外科疾患
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前十字靭帯断裂
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股関節形成不全
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膝蓋骨脱臼
→ 痛みや筋力低下により動きたがらなくなる
全身性疾患
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感染症(猫伝染性腹膜炎FIP、猫白血病ウイルス感染症、犬の慢性炎症など)
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腎臓・肝臓病(体力低下)
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熱中症
飼い主さんが注意すべきサイン
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散歩の途中で止まりたがる
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すぐ帰りたがる
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遊んでもすぐ疲れる
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呼吸が早い・苦しそう
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咳が出る
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階段を嫌がる
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運動後にぐったりする
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倒れる(失神)
1つでも該当する場合、心臓・呼吸器疾患や貧血を必ず除外すべきです。
まとめ
運動不耐性=“体がSOSを出しているサイン” であり、心臓・肺・血液・ホルモン・筋肉・神経・骨など、さまざまな疾患が背景に存在します。
特に
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犬さん:心疾患・呼吸器疾患・整形外科疾患
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猫さん:心筋症・呼吸器疾患(喘息)・貧血・低カリウム血症が代表的です。
早期の診断と治療介入で、生活の質(QOL)を大きく改善できます。
ハグウェル動物総合病院の体制
セカンドオピニオン設置
今回の咳か、くしゃみか、逆くしゃみかの判断がわからないケースなど、的確な診断が必要な場合は、ハグウェル動物総合病院の循環器科をご予約ください。症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として身体検査、血液検査、心エコー検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧検査などを実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
早期発見をしながら、どのタイミングで、どの投薬が望ましいのか、循環器認定医としっかり相談し決定することをお勧めいたします。
また、専門診療の循環器科(森山 寛大 獣医師・佐藤 貴紀 獣医師)を設けているため、セカンドオピニオンの受け入れも行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
ご予約・ご相談はお気軽に!
LINE・お電話(045-442-4370)・受付(動物病院総合受付)にて承ります♪

