愛犬が「ケホケホ」と咳をしたり、「ハクション」とくしゃみをしたり、「ガーガー」と逆くしゃみをしている様子を見ると、飼い主さんとしてはとても心配になりますよね。これらの症状はすべて「呼吸器のトラブル」としてくくられがちですが、それぞれ異なる原因や仕組みで起こっています。
本ブログでは、「咳」「くしゃみ」「逆くしゃみ」の違いや、考えられる原因について詳しくご紹介します。
目次
【循環器診療】森山 寛大
【担当科目】総合診療科・循環器科
【循環器診療】佐藤 貴紀
【担当科目】総合診療科・循環器科・栄養管理科
咳(せき)とは
定義:
肺や気管内の気道にたまった分泌物や、外から入ってきたウイルスやほこりなどの異物を気道の外に排除しようとする体の防御反応のこととされています。
咳の音:
「ケホッ、コンコン」「カッカッ」や「カハッカハッ」など様々な咳の音があります
発生部位:
下気道(気管・気管支・肺)です
主な原因:
分類 | 原因の例 |
感染性 |
気管支炎、ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)、肺炎など
|
アレルギー性 | 気道過敏症、アレルギー性気管支炎 |
心臓病 | 僧帽弁閉鎖不全症などの心臓病による肺水腫や心臓拡大による気管圧迫 |
気道構造異常 | 気管虚脱、気管低形成など |
異物 | 気管内への異物吸引 |
咳は、気道に異物や分泌物がたまったときにそれを排出しようとする自然な反射ですが、慢性的な咳が続く場合、感染症や心疾患が背景にある可能性もあります。特に「夜間に咳が出る」「運動後に悪化する」「ガチョウの鳴き声のような咳」などの症状は、疾患による咳の可能性が高く、精密検査が必要です。
くしゃみとは
定義
鼻や喉に刺激が加わった際に、異物を排除しようとする体の防御反応です。犬さんの場合は鼻から強く空気を吹き出すような鋭い音が特徴です。
くしゃみの音:
「ハクション」「クシュンッ」「フシュッ」「ピシュッ」「ヘックシュ」などがくしゃみの音です
発生部位:
上気道(鼻腔)です
主な原因:
分類 | 原因の例 |
感染性 |
ウイルス性鼻炎(犬ジステンパー、パラインフルエンザなど)、細菌性副鼻腔炎など
|
アレルギー | 花粉、ハウスダスト、カビなど |
異物 | 草の種子、土ぼこり、毛、虫など |
腫瘍性 | 鼻腔内の腫瘍など |
解剖学的要因 | 短頭種での鼻腔狭窄など |
くしゃみは、鼻腔内の異物や刺激を外へ出そうとする反射反応です。数回のくしゃみで治まるようであれば心配ありませんが、鼻水(とくに膿や血が混じる)を伴う持続的なくしゃみが見られる場合や毎日頻度が多いようであれば、病的原因を考慮する必要があります。
逆くしゃみとは
定義
鼻咽頭(鼻の奥から喉にかけての部分)の粘膜が刺激され、急激に息を吸い込む反射的な現象であり、正式には「吸気性発作性呼吸」と呼ばれる。
逆くしゃみの音:
「ガーガー」「ブーブー」鼻を鳴らしながら吸い込む
発生部位:
鼻咽頭(のどの奥)です
主な原因:
分類 | 原因の例 |
鼻咽頭の刺激 | 興奮、運動後、急な温度変化によるものなど |
軽度のアレルギーや炎症 | 粘膜の過敏反応や細菌などの炎症によるものなど |
軟口蓋の過長 | 粘膜の構造的な理由 |
軽度の異物 | 粘膜への一時的な接触など |
逆くしゃみは、喉奥(鼻咽頭)への刺激によって引き起こされる発作的な「吸気反射」です。とくに小型犬(チワワ、ポメラニアン、パグなど)に多く見られ、「発作のようで心配」と相談を受けることもありますが、ほとんどは無害で数十秒で自然に収まります。
ただし、頻繁に繰り返す場合や、粘膜の異常(ポリープ、異物など)が疑われる場合は、内視鏡検査などが必要となるケースもあります。
見分け方と受診の目安
症状 | 観察ポイント | 受診すべきサイン |
咳 | 頻度、音の性質、時間帯 | 長引く咳、苦しそうな呼吸、失神などの他の症状 |
くしゃみ | 鼻水の性状、左右差 | 血や膿の混じった鼻水、くしゃみの連発 |
逆くしゃみ | 発作時間、きっかけ | 頻回発作、発作中に呼吸困難が見られる場合 |
どの症状にしても、1度きりではなく頻回繰り返す場合や、他に気になることがあれば動物病院を受診しましょう。
最後に
咳やくしゃみ、逆くしゃみは、それぞれ体の違う部位からのサインです。原因を正確に見極めることで、早期の治療や予防につながります。愛犬が「いつもと違う呼吸音をしている」「咳が続く」など、気になる様子があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
呼吸の仕方ひとつにも、大切な命を守るヒントが隠されています。
私たちはその小さなサインを見逃さず、一緒に健康を守っていきたいと考えています。
ハグウェル動物総合病院の体制
セカンドオピニオン設置
今回の咳か、くしゃみか、逆くしゃみかの判断がわからないケースなど、的確な診断が必要な場合は、ハグウェル動物総合病院の循環器科をご予約ください。症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として身体検査、血液検査、心エコー検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧検査などを実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
早期発見をしながら、どのタイミングで、どの投薬が望ましいのか、循環器認定医としっかり相談し決定することをお勧めいたします。
また、専門診療の循環器科(森山 寛大 獣医師・佐藤 貴紀 獣医師)を設けているため、セカンドオピニオンの受け入れも行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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