犬さんの健康管理の中でも、神経疾患は見落とされがちな分野の一つです。しかし「てんかん」や「認知機能低下症(Cognitive Dysfunction Syndrome: CDS)」は、高齢犬や特定の犬種に多く見られ、食事管理がその症状緩和において重要なカギを握っています。
目次
1. てんかんの犬さんにおすすめの食事管理
キーワード:MCT(中鎖脂肪酸)・ケトン体・低炭水化物食
てんかんは神経の電気的な興奮異常により起こる発作性疾患です。近年、人医療同様に「ケトジェニックダイエット(高脂肪・低糖質)」の概念が犬にも応用されています。
エビデンス
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Law et al., 2015 (Vet J):てんかんの犬にMCT(中鎖脂肪酸)を含む食事を与えたところ、発作の回数が有意に減少したと報告。
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MCTはケトン体を効率的に生成し、脳のエネルギー代謝をサポート。これは神経細胞の過剰興奮を抑制する作用があると考えられています。
推奨される食事の特徴
項目 | 内容 |
脂質源 | 中鎖脂肪酸(MCTオイル、ココナッツオイル)を多く含む |
炭水化物 | グレインフリー or 低炭水化物(例:ひよこ豆) |
タンパク質 | 良質なたんぱく(消化しやすくアレルゲンの少ないもの) |
添加物 | BHB(β-ヒドロキシ酪酸)、L-カルニチン、タウリンなど |
2. 認知機能低下症(CDS)の犬におすすめの食事管理
キーワード:抗酸化成分・オメガ3・MCT・ビタミンB群
加齢による犬の認知機能低下は、人でいう「犬版アルツハイマー」のようなものです。主な症状には、夜間の徘徊、昼夜逆転、無意味な吠え、家族の認識障害などがあります。
エビデンス
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Pan et al., 2018 (Neurobiol Aging):MCTを長期給与した犬では認知機能の改善傾向がみられた。
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Landsberg et al., 2012 (Vet Med):オメガ3脂肪酸、ビタミンE・C、セレン、L-カルニチンを含む食餌でCDSの症状が軽減。
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Bain et al., 2001 (JAVMA):抗酸化成分の長期投与で認知能力の向上が確認。
推奨される食事の特徴
項目 | 内容 |
脂質 | DHA・EPA(オメガ3)+MCTの併用 |
抗酸化物質 | ビタミンE、ビタミンC、セレン、αリポ酸、L-カルニチン |
サポート成分 | SAMe、ビタミンB群、アルギニン、Ginkgo biloba(イチョウ葉) |
獣医師からのまとめ
てんかんや認知機能の問題を抱える犬さんたちは、「脳のエネルギー源」「酸化ストレス」「神経伝達物質のバランス」という3つのポイントに注目して食事を選ぶことが非常に重要です。
また、薬物療法と併用しつつ、適切な食事によるサポートでQOLの向上が期待できます。食事で全てを治すことは難しくとも、「症状を緩和しやすくする土台」を築くことは可能です。
気になる方は、ぜひご相談ください。
セカンドオピニオン設置
神経症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT(脳構造評価)、(理想的には)脳波検査、CSF(髄液)検査、MRI検査を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「けいれん」「発作」「失神」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。
また、専門診療の神経科(中津 央貴獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返すけいれん発作など、治りが悪い症状の受け入れを行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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