
「食事のあとから咳をするようになった。」
「嘔吐した後から呼吸が速い」
「急に元気や食欲がなくなり、呼吸が苦しそう」
このような症状がみられる場合、考えられる病気の一つに「誤嚥性肺炎」というものがあります。
誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物、胃の内容物などが誤って気管や肺に入り込むことで起こる肺の炎症です。
犬さん猫さんどちらにも発症する可能性があり、軽症で済むこともありますが、重症になると低酸素血症を引き起こし、命に関わることもあります。
今回は、犬猫さんの誤嚥性肺炎について、その原因や症状、検査、治療についてお話しします。
目次
誤嚥性肺炎とは?
通常、食べ物や飲み物は口から食道を通り、胃へと運ばれていきます。
一方で、呼吸によって取り込まれた空気は、鼻や口から咽頭、気管、気管支を通って肺へと送られます。
食べ物と空気はどちらも喉を通りますが、食べ物を飲み込む際には、喉頭蓋などの働きによって、食べ物が気管に入り込まないようになっています。
しかし、何らかの原因でこの仕組みがうまく働かないと、食べ物や飲み物、唾液、胃の内容物などが気管に入ってしまうことがあります。
これを「誤嚥」と呼びます。
誤嚥によって肺に異物や胃酸などが入り込むと、肺の組織が傷害され、炎症を起こします。
また、誤嚥したものに含まれる細菌などによって、二次的な感染が起こることがあります。
このように、誤嚥がきっかけで肺に炎症が生じた疾患のことを「誤嚥性肺炎」と呼びます。
どうして誤嚥性肺炎になるの?
誤嚥性肺炎は、さまざまな原因によって起こります。
しかし、誤嚥そのものが目撃されることは非常に稀です。
代表的なものとして、以下のようなものがあります。
嘔吐や吐出
誤嚥性肺炎の原因として重要なのが、嘔吐や吐出です。
嘔吐によって胃の内容物が口まで逆流した際に、その一部が気管へ入り込むことがあります。
また、食道の中にたまった食べ物などが口へ戻ってくる「吐出」でも、誤嚥が起こる可能性があります。
特に、巨大食道症などによって食道の働きが低下している犬では、食べ物が食道内に停滞しやすく、吐出や誤嚥性肺炎を繰り返すことがあります。
嚥下機能の低下
食べ物を飲み込む働きを「嚥下」と呼びます。
通常、嚥下の際には気道が保護され、食べ物が気管へ入り込まないようになっています。
しかし、神経や筋肉の病気、喉頭の異常などによって嚥下機能が低下すると、食べ物や飲み物が誤って気管へ入り込むことがあります。
また、高齢の犬猫では、基礎疾患などによって嚥下機能が低下している場合もあります。
全身麻酔や意識レベルの低下
全身麻酔中や麻酔からの覚醒時には、嚥下反射や咳反射など、気道を保護する働きが低下することがあります。
そのため、胃の内容物が逆流した場合などに、誤嚥が起こる可能性があります。
また、けいれん発作や意識障害などによって意識レベルが低下している場合にも、誤嚥のリスクが高くなります。
強制給餌や投薬
食欲が低下している犬猫に対して、シリンジなどを使用して食事や水分、薬を与えることがあります。
しかし、嚥下機能が低下していたり、嫌がって十分に飲み込めていなかったりすると、食べ物や液体が気管へ入り込んでしまうことがあります。
特に、意識状態が悪い場合や、呼吸が苦しそうな場合には注意が必要です。
どんな症状がみられるの?
誤嚥性肺炎では、肺に炎症が起こることによってさまざまな症状がみられます。
代表的な症状には、
- 咳
- 呼吸数の増加(とくに安静時の呼吸数)
- 開口呼吸
- 発熱
- 元気や食欲の低下
- 運動を嫌がる
- ぐったりしている
などがあります。
症状の程度は、誤嚥した内容物や量、肺の炎症の広がりなどによって異なります。
また、誤嚥性肺炎では必ずしも激しい咳がみられるわけではありません。
特に猫では、咳が目立たず、呼吸数の増加や元気・食欲の低下などが主な症状となることもあります。
重症になると、肺で十分な酸素交換ができなくなり、低酸素血症や呼吸不全を引き起こすことがあります。
どのような検査をするの?
誤嚥性肺炎が疑われる場合には、まず嘔吐や吐出の有無、麻酔歴、嚥下機能の異常などについて確認します。
そのうえで、身体検査や聴診、画像検査などを行います。
レントゲン検査
胸部レントゲン検査は、誤嚥性肺炎の診断において重要な検査の一つです。
肺炎が起こっている場合には、肺の一部が白く写る「肺胞パターン」などが認められることがあります。
ただし、誤嚥してから間もない場合には、レントゲン検査で明らかな異常が確認できないこともあります。
そのため、誤嚥が疑われる経過や症状がある場合には、必要に応じて時間をおいて再検査を行うこともあります。
血液検査
血液検査では、白血球数や炎症マーカーなどを確認します。
細菌感染を伴っている場合には、白血球数の増加などが認められることがあります。
ただし、血液検査だけで誤嚥性肺炎を診断することはできません。
その他の検査
呼吸状態が悪い場合には、パルスオキシメーターによる酸素飽和度の測定や、必要に応じて血液ガス検査などを行い、酸素化の状態を評価します。
また、症例によっては気道内の分泌物を採取し、細胞診や細菌培養検査などを行うこともあります。
誤嚥を繰り返している場合には、巨大食道症や嚥下障害など、誤嚥の原因となっている病気についても調べる必要があります。
どんな治療をするの?
誤嚥性肺炎の治療は、症状の程度や原因によって異なります。
酸素吸入
呼吸困難や低酸素血症がみられる場合には、酸素室などで酸素投与を行います。
重症の場合には、入院管理が必要になることもあります。
抗生物質
誤嚥性肺炎では多くの場合に抗生物質が使用されます。
細菌感染が伴わない場合に、抗生物質は基本的に不要とされています。
しかし、実際に細菌感染の有無を検査で区別することは困難であることがほとんどです。
気管洗浄液などによって細菌感染を証明することが理想ではありますが、誤嚥性肺炎を疑う症例は呼吸状態が悪いために、このような検査の実施が難しいのです。
そのため、多くの場合に、想定される起因菌を基に抗生剤が選択されます。
その他の治療
症状に応じて、点滴や栄養管理などを行います。
また、誤嚥の原因となっている嘔吐や吐出、嚥下障害などがある場合には、それらに対する治療も重要です。
誤嚥性肺炎は、肺炎そのものが改善しても、原因となる病気が残っていると再発する可能性があります。
そのため、肺炎の治療だけでなく、誤嚥を引き起こしている原因への対応も大切です。
お家で気をつけること
誤嚥性肺炎を予防するためには、誤嚥を起こしやすい状況をできるだけ避けることが大切です。
特に、嘔吐や吐出を繰り返している犬猫では、その原因を調べ、適切な治療を行う必要があります。
また、食欲が低下しているときに無理に食べ物や水分を与えると、誤嚥の原因になることがあります。
シリンジなどを使った給餌や投薬については、動物病院の指示に従い、無理に行わないようにしましょう。
巨大食道症など、誤嚥のリスクが高い病気を持っている場合には、食事の姿勢やフードの形状などを工夫することが必要になる場合もあります。
また、嘔吐や吐出のあとに咳が出始めた、呼吸が速くなった、元気がなくなったといった場合には、誤嚥性肺炎を起こしている可能性があります。
そのような場合には、早めに動物病院へ相談しましょう。
まとめ
誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物、胃の内容物などが誤って気管や肺に入り込むことで起こる肺の炎症です。
嘔吐や吐出、嚥下障害、全身麻酔、意識レベルの低下など、さまざまな状況で発症する可能性があります。
誤嚥性肺炎では咳や発熱、呼吸数の増加、元気・食欲の低下などがみられ、重症になると呼吸困難や低酸素血症を引き起こすこともあります。
また、誤嚥による肺の炎症には、胃酸などによる化学的な障害と細菌感染が関係しており、原因や状態によって治療方法が異なります。
特に、
- 嘔吐や吐出のあとから咳が出始めた
- 呼吸がいつもより速い
- 呼吸が苦しそう
- 急に元気や食欲が低下した
といった症状がみられる場合には注意が必要です。
誤嚥性肺炎は、早期に適切な治療を行うことが重要な病気です。
嘔吐や吐出のあとに呼吸の異常がみられた場合や、食事のたびに咳き込むなどの症状がある場合には、早めに動物病院へご相談ください。
ハグウェル動物総合病院 吉川美南院の体制
ハグウェル動物総合病院 吉川美南院でもレントゲンによる気管虚脱の診断を実施しています。
動物さんの小さな変化も気兼ねなくご相談ください。動物さんとご家族のみなさまが満足のいく治療方針をご提案させていただきます。
ご予約・ご相談はお気軽に!
LINE・お電話(048-940-0337)にて承ります♪

