「去勢手術の相談に行ったら、『潜在精巣ですね』と言われた」
「普通の去勢手術と何が違うの?」
「腹腔鏡手術もできると聞いたけれど、どちらが良いの?」
このようなご質問をいただくことがあります。
今回は、犬さんや猫さんの潜在精巣について、原因やリスク、そして開腹手術と腹腔鏡手術の違いについて分かりやすくご紹介します。
目次
潜在精巣とは?
通常、子犬さんや子猫さんの精巣は出生後しばらくするとお腹の中から陰嚢(いんのう)へ下降します。
しかし、何らかの理由で精巣が正常に下降せず、
- お腹の中(腹腔内)
- 鼠径部(そけいぶ)
に残ったままになることがあります。
この状態を『潜在精巣』と呼びます。
片側だけの場合もあれば、両側とも下降していない場合もあります。
潜在精巣は治療が必要?
「元気だから様子を見てもいいですか?」
というご相談もありますが、潜在精巣は手術による摘出をおすすめしています。
その理由は、正常な位置にない精巣は将来的に病気を起こすリスクが高いためです。
放置するとどんなリスクがあるの?
① 精巣腫瘍のリスク
潜在精巣は正常な精巣に比べてかなり腫瘍化しやすいことが知られています。
特に高齢になるほど発生リスクが上昇します。
② 精索捻転(せいさくねんてん)
精巣がねじれてしまう病気です。
突然の腹痛や元気消失を起こし、緊急手術が必要になることがあります。
③ 遺伝的な問題
潜在精巣は遺伝的な要因が関与すると考えられています。
そのため繁殖には適さないとされています。
潜在精巣の診断方法
診察では、
- 触診
- 超音波検査
- CT検査(必要時)
などを行い、精巣の位置を確認します。
鼠径部にある場合は触知できることもありますが、腹腔内にある場合は画像検査が必要になります。
潜在精巣の手術方法
潜在精巣の治療は、停留している精巣を摘出する手術です。
手術方法には主に
- 開腹手術
- 腹腔鏡手術
があります。
開腹手術とは?
お腹を切開し、腹腔内の精巣を直接探して摘出する方法です。
昔から多くの動物病院で行われている標準的な術式です。
メリット
- 幅広い症例に対応できる
- 特殊な機器が不要
- 腫瘍化した精巣にも対応しやすい
- 多くの施設で実施可能
デメリット
- 傷口が比較的大きい
- 見つからない場合そのままお腹を閉じられてしまうこともある
- 術後の痛みが出やすい
- 回復までやや時間がかかる
腹腔鏡手術とは?
小さな傷からカメラと専用器具を挿入し、モニターを見ながら潜在精巣を摘出する方法です。
人医療では一般的な手術ですが、近年は動物医療でも導入が進んでいます。
メリット
傷が小さい
数か所の小さな切開で手術を行うため、体への負担を軽減できます。
術後の痛みが少ない
傷が小さいため術後の疼痛が軽減されます。
回復が早い
術後の活動性の回復が早く、当日退院といった早期退院が可能なケースがほとんどです。
精巣を見つけやすい
画像診断に加えて腹腔鏡カメラによる拡大視野で腹腔内を詳細に観察できます。
デメリット
専門設備が必要
腹腔鏡システムや専用の器具が必要です。
実施できる病院が限られる
設備と経験を持つ施設でのみ実施可能です。
症例によっては適応外
精巣が非常に大きい場合や腫瘍化している場合などは、開腹手術が適していることがあります。
腹腔鏡手術が向いているケース
- 腹腔内の潜在精巣が疑われる
- 傷をできるだけ小さくしたい
- 術後の回復を重視したい
- 若齢で健康状態が良好
まとめ
潜在精巣は、犬さんや猫さんで比較的よくみられる先天的な異常です。
放置すると精巣腫瘍や精索捻転などのリスクが高まるため、早期の摘出手術が推奨されます。
開腹手術と腹腔鏡手術にはそれぞれ特徴がありますが、腹腔鏡手術は「傷が小さい」「痛みが少ない」「回復が早い」といったメリットが期待できます。
当院では、動物の体格や精巣の位置、年齢などを総合的に評価し、それぞれの症例に適した手術方法をご提案しています。
「潜在精巣かもしれない」「去勢手術について詳しく知りたい」という方は、是非お気軽に当院にご相談ください。

