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【獣医師監修】犬猫さんの「心腎連関」と「腸」までつながる話

腎泌尿器科

 

【腎泌尿器科診療】室 卓志 獣医師

【担当科目】総合診療科・腎泌尿器科・消化器科

 

心腎連関とは?

心臓と腎臓が“同時に悪くなる”理由

心臓と腎臓は、役割がまったく違うように見えます。

心臓:全身へ血液を送るポンプ

腎臓:血液をろ過して老廃物や水分・電解質を調整する臓器

しかし両者は「血液」を介して強く結びついています。腎臓は、全身の血液量の中でも特に多くの血流を必要とする臓器です。そのため、心臓のポンプ力が落ちて血流が低下すると、腎臓は真っ先に影響を受けます。

逆に腎臓が悪くなると、血圧やホルモンのバランスが崩れ、心臓に負担がかかりやすくなります。

心臓が悪くなると腎臓が悪くなる仕組み

心不全と腎機能低下はセットになりやすいのです。犬猫さんで心臓が悪化すると、以下のような流れが起こりやすくなります。

1. 心拍出量が低下し、腎血流が減る

心臓の機能が低下すると、全身へ送られる血液量が減ります。腎臓は血液が来ないと、ろ過(尿を作る)ができません。

この結果、腎機能が落ち、血液検査ではBUNやクレアチニンが上がることがあります。

2. 体が「血圧を上げよう」としてホルモンが働く

心臓が弱って血流が落ちると、体は生きるために必死になります。腎臓は「血液が足りない!」と判断し、以下のシステムを強く働かせます。

RAAS(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)

この仕組みは、血管を収縮させる、水分や塩分を体にためることで血圧を上げようとします。

短期的には命を守る働きですが、長期的には、心臓の負担が増える、腎臓の血管も傷む、全身に炎症が起きやすくなるという悪循環に入ります。

3. 心不全で使用する利尿薬などの治療が腎臓に影響することもある

心不全の治療では、肺水腫や胸水を防ぐために利尿薬が必要になることがあります。

ただし利尿薬は、使い方によっては、脱水、腎血流の低下、電解質異常を招き、腎機能に影響することがあります。

ここが心腎連関の難しさであり、心臓を守るための治療が腎臓に影響し、腎臓を守るための調整が心臓に影響するという状況が起こり得ます。

腎臓が悪くなると心臓が悪くなる仕組み

腎臓は“血圧と心臓の司令塔”でもあります。腎臓病は「尿が作れなくなる病気」と思われがちですが、実際にはそれだけではありません。

腎臓は、以下を調整する超重要臓器です。

・血圧

・水分量

・ナトリウム・カリウム

・赤血球(エリスロポエチン)

・酸塩基平衡(体のpH)

これらが崩れると、心臓に強烈な負担がかかります。

1. 高血圧になりやすい

腎臓病では血圧が上がりやすくなります。高血圧は心臓にとって“常に重い荷物を背負って走る”状態です。

その結果、心筋が厚くなる、心臓が硬くなる、心不全が進行しやすくなるという変化が起こります。

猫さんでは特に、高血圧が原因で心臓の肥大が進むケースも少なくありません。

2. 貧血が心臓を疲れさせる

腎臓が悪くなると、赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)が減ります。その結果、腎性貧血が起こります。貧血になると、血液の酸素運搬能力が下がるため、心臓はもっと速く、もっと強く血液を送ろうとします。

つまり心臓は、常にオーバーワークになります。

3. 尿毒素が全身の炎症を起こす

腎臓のろ過機能が落ちると、体に尿毒素(老廃物)がたまりやすくなります。尿毒素は血管や心筋にダメージを与え、慢性炎症を起こします。この慢性炎症が、心臓病の進行を早める一因になると考えられています。

ここからが重要:腸が心臓と腎臓に関わる

「腸内環境」は、第三の臓器ではなく“基盤”です

腸は食べ物を消化するだけの場所ではありません。腸は、免疫の中心であり、炎症の発生源にもなり得ます。

近年、人医療では「心腎腸連関」という概念が注目されており、獣医療でも非常に重要な視点です。

心臓が悪いと腸が荒れやすい理由

腸は血流に敏感な臓器です。心不全が進むと、体は血液を「脳と心臓」に優先的に回そうとします。

すると腸への血流は後回しになり、腸粘膜が弱りやすくなります。

腸粘膜が弱ると、消化吸収が落ちる、下痢や軟便が増える、食欲が落ちるだけでなく、もっと大きな問題が起きます。

腸粘膜バリアが壊れると、毒素や細菌由来物質が体内へ入る

腸の粘膜には、本来必要な栄養だけを通し細菌や毒素は通さないというバリア機能があります。しかし腸が弱ると、このバリアが崩れ、腸内の有害物質が血中へ入りやすくなります。

これが、全身性炎症、血管内皮障害、心臓病の進行、腎臓病の進行に関わると考えられています。

腎臓が悪いと腸が荒れやすい理由

尿毒素と腸内細菌の関係があります。腎臓病では尿毒素が増えます。尿毒素は腸にも影響し、腸内細菌のバランスが乱れやすくなります。腸内細菌が乱れると、悪玉菌が増える、腸内で炎症性物質が増える、さらに尿毒素が増えるという悪循環が起こります。

腸が悪いと心臓と腎臓が悪くなる理由

腸は“炎症の蛇口”になり得ます。腸内環境が乱れ、慢性炎症が続くと、血管が傷む、血圧が上がりやすくなる

、ホルモンバランスが乱れる、酸化ストレスが増えるといった変化が起こります。

これらはすべて、心臓病を進行させる要因、腎臓病を進行させる要因になります。

つまり、腸は心臓と腎臓の“遠い臓器”ではなく、病気のスイッチを押してしまう場所でもあるのです。

心腎腸連関で起こりやすい症状

飼い主さんが気づきやすいサイン

心臓・腎臓・腸の関係が崩れ始めると、以下のような症状が出やすくなります。

心臓病のサイン

・咳(犬で多い)

・呼吸が速い、浅い

・寝ている時の呼吸数が増える

・疲れやすい

・運動を嫌がる

腎臓病のサイン

・水をよく飲む

・尿の量が増える

・体重が減る

・食欲が落ちる

・毛ヅヤが落ちる

・嘔吐が増える

腸のサイン

・軟便、下痢が増える

・便のニオイが強くなる

・ガスが増える

・食べムラが出る

・体重が減る

治療が難しい理由

「片方を守ると、片方に負担がかかる」問題があります。

心腎連関は、治療が難しい病態です。理由はシンプルで、心不全を抑えるために利尿すると腎臓が苦しくなる、腎臓を守るために水分を確保すると心臓が苦しくなるという綱引きが起こるからです。

そのため心腎連関では、治療は「正解が一つ」ではありません。

動物さんの状態、年齢、進行度、体格、食欲、生活環境を踏まえながら、その子にとって最適なバランスを探していく医療になります。

だからこそ、腎泌尿器科と循環器科(心臓病)がいる動物病院で見てもらうことが重要です。

こんな時はすぐ相談してください

心腎腸連関で危険なサインとは

次の症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 呼吸がいつもより速い
  • 寝ている時に呼吸が苦しそう
  • 食欲が急に落ちた
  • 嘔吐が続く
  • ぐったりしている
  • 下痢が続く
  • 尿が急に増えた/減った
  • 体重が急に落ちた

心臓・腎臓・腸のどれが原因でも、放置すると一気に悪化する可能性があります。


まとめ

心臓・腎臓・腸は「別の病気」ではなく「ひとつの流れ」です。犬猫の心腎連関は、単に心臓病と腎臓病が同時にあるという話ではありません。

心臓の状態が腎臓に影響し、腎臓の状態が心臓に影響し、そして腸の状態が両者の炎症と栄養状態を左右するという、全身のつながりの病態です。

だからこそ、治療もケアも心臓だけ、腎臓だけ、腸だけではなく、「全体を見て整える」ことが最も重要になります。

ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制

セカンドオピニオン設置

下部尿路疾患の症状に対して迅速に対応し、必要な検査(血液検査・尿検査・レントゲン・超音波・CT検査など)を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。

特に「頻尿」「血尿」「尿が出ない尿閉」などのケースでは、早期の処置が非常に重要です。

また、専門診療の腎泌尿器科(室 卓志獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには重症化した下部尿路疾患や慢性腎臓病など、長期的なケアが必要なケースの受け入れを行っております。

横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。

 

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