目次
1. はじめに
皮膚をかゆがったり、耳をよくかいたり、下痢や軟便が続いたり……。
そんなとき、「食べ物が関係しているかもしれませんね」と獣医師から言われたことはありませんか？
食物アレルギーは、犬さんの体の免疫が特定の食材を「敵」と勘違いして反応してしまう状態です。原因となる食材を特定し、症状をやわらげるために使われるのが「低アレルギーフード」です。
今回は、動物病院でよく相談を受けるこのフードについて、わかりやすく解説します。
2. 低アレルギーフードとは？
低アレルギーフードとは、犬さんがアレルギー反応を起こしにくいように設計された特別なごはんのことです。一般的なフードと比べて、使われるたんぱく質や製法に工夫がされています。
主に次の2つのタイプがあります。
① 加水分解タンパク質食
たんぱく質を細かく分解し、免疫が「異物」と認識しにくくしたフードです。
アレルギーは、たんぱく質の分子が大きいほど起こりやすくなります。加水分解によって分子を小さくすることで、免疫反応を起こしにくくします。
代表的な例は、ヒルズの「z/d」やロイヤルカナンの「アミノペプチドフォーミュラ」などです。
② 新奇（しんき）タンパク質食
犬さんが今まで食べたことのない種類のたんぱく質を使うことで、反応を避けるタイプです。
たとえば、鹿肉・馬肉・カンガルー・ダック・魚などを主原料にしたものがあります。
「チキンやビーフで症状が出たけれど、鹿肉なら大丈夫だった」というケースもあります。
3. 食物アレルギーと不耐性の違い
「食物アレルギー」と「食物不耐性」は似ていますが、原因が異なります。
- 食物アレルギー：免疫反応が関係。少量でも症状が出る。
- 食物不耐性：消化吸収の問題。酵素の欠損などにより、特定成分を分解できずに不調を起こす。
どちらも下痢やかゆみなど似た症状が見られるため、自己判断では区別がつきません。
正確に判断するためには、獣医師による問診や除去食試験が欠かせません。
4. 犬さんに見られる主な症状
食物アレルギーによる症状は、皮膚と消化器に出ることが多いです。
- 顔や耳、足先のかゆみ
- 外耳炎を繰り返す
- 皮膚の赤み、フケ、脱毛
- 下痢や軟便、嘔吐
- 毛づやの悪化
特に耳のかゆみや外耳炎は、食物アレルギーが関係していることが多く、長引く場合は食事の見直しが必要になることもあります。
「季節に関係なくかゆい」「薬を飲むと治るけれどすぐ再発する」といった場合は、一度フードを疑ってみるのも大切です。
5. 低アレルギーフードの始め方（除去食試験）
アレルギーが疑われる犬さんには、除去食試験という方法を行います。
これは6～8週間、特定の低アレルギーフードだけを与えて症状の変化を観察するものです。
この期間中は、
- おやつ
- サプリメント
- 人の食べ物
- 味付きのお薬
などもすべて中止します。
フード以外のものを少しでも食べてしまうと、正確な判断ができなくなってしまうため、家族全員での協力が必要です。
症状が改善したら、以前のフードを少しだけ戻して再び症状が出るかを確認し、原因食材を特定します。この工程は時間がかかりますが、根気よく続けることが何より大切です。
6. フードを与えるときの注意点
低アレルギーフードは「療法食」に分類されることが多く、医療的な目的で使われます。そのため、自己判断で選ばず、必ず獣医師の指導のもとで与えましょう。
また、「低アレルギー」や「アレルギー対応」と書かれていても、すべてが同じではありません。
原料や加水分解の程度が異なるため、症状が出ている犬さんに市販品を選ぶと、かえって原因食材が含まれているケースもあります。フードの切り替えは、徐々に混ぜて1～2週間かけて行うとお腹への負担が少なくなります。ただし除去食試験中は、完全に切り替えてから試験を開始するのが原則です。
7. 飼い主さんができるサポート
犬さんのアレルギー管理は、日々の積み重ねが大切です。
次のような工夫が役立ちます。
- 食事内容・便の状態・皮膚の様子をメモする
- 家族全員で「おやつ禁止」を徹底する
- ノミダニ予防・定期的なシャンプーで皮膚環境を整える
- ストレスを減らす環境づくり（運動・睡眠・清潔な寝床）
食事だけでなく、皮膚のケアや生活環境の見直しも大切なポイントです。
8. まとめ
低アレルギーフードは、犬さんのアレルギー症状を和らげ、より快適に過ごしてもらうための大切なサポートツールです。
症状の原因を突き止めるには時間がかかりますが、適切なフードを続けることで「かゆみがなくなった」「耳をかかなくなった」という変化が見られる犬さんも多くいます。
「皮膚をよくかく」「お腹の調子が安定しない」などの小さなサインを感じたら、まずは動物病院へ相談してみてください。
犬さんに合ったフードを見つけていくことが、健康で幸せな毎日への第一歩です。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
ハグウェル動物総合病院では、皮膚疾患に直面した飼い主様と動物さんに、より良い選択をしていただけるよう セカンドオピニオン外来 を設けています。
難治性の皮膚病を始め、繰り返す痒みや脱毛、さらには慢性的な外耳炎などの対処も行なっております。
また、慢性外耳炎により手術が必要な場合などには、CTなどの高度画像診断を用い的確に把握したうえで、外科治療を行います。セカンドオピニオンを通じて、飼い主様が納得し、安心して治療に臨んでいただけることを第一に考えています。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
📢ご予約・ご相談はお気軽に！
LINE・お電話（045-442-4370）・受付（動物病院総合受付）にて承ります♪
