

【循環器診療】森山 寛大
【担当科目】総合診療科・循環器科

【循環器診療】佐藤 貴紀
【担当科目】総合診療科・循環器科・栄養管理科
「診察中に“心雑音があります”と言われて不安になった…」。そのようなお気持ちを抱かれる飼い主さまはとても多いです。
今回は、犬さん・猫さんの心雑音(しんざつおん)とは何か?どうして起こるのか?どんな病気が隠れているのか?
ハグウェル獣医師がわかりやすく解説します。
目次
心雑音とは?
本来、心臓は「ドクン」「ドクン」と規則正しく弁が閉じる音だけが聞こえます。
しかし、血液の流れが乱れると「ザー」「シュッ」といった異常な音が混ざることがあり、これを心雑音と呼びます。
つまり、
『血液がスムーズに流れず、渦を巻いた時に発生する“濁った音”』です。
心雑音の大きさ(グレード分類)
聴診で評価される一般的なグレード分類(Levine分類)は以下の通りです。
| グレード | 程度 | 特徴 |
| Ⅰ | 軽度 |
とても小さく、聞き逃すことも
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| Ⅱ | 中等度 |
明瞭に確認できる
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| Ⅲ | 中等度 |
聞き取りやすいが振動なし
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| Ⅳ | やや重度 |
聴診器を当てた部位で振動(スリル)
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| Ⅴ | 重度 |
聴診器の位置をずらしても聞こえる
|
| Ⅵ | 最重度 |
聴診器を浮かせても聞こえることが
|
👉グレードが高いほど病気が重いとは限りません。心臓の構造や血流変化の「原因」を調べることが重要です。
心雑音はどこから聞こえる?
場所によって、疑われる病気が異なります。
左側から聴取する部位は、大動脈弁口部、僧帽弁口部、肺動脈弁口部。右側からは三尖弁口部とされています。
| 聞こえる場所 | 主な心臓の部位 | 疑われる病気例 |
| 左側 | 僧帽弁・大動脈側 |
僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症など
|
| 右側 | 三尖弁・肺動脈側 |
心室中隔欠損、三尖弁閉鎖不全症など
|
※猫さんでは聞こえ方が犬さんと異なることも多いです。
なぜ心雑音が起きるの?
大きく3つの原因に分けられます。
①心臓の弁に異常がある
高齢の犬さんや猫の心筋症で多い原因
-
僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁がしっかり閉じない)
→逆流が起き、血液が渦を巻く
②心臓の形の異常
若い動物さんで見つかりやすい原因です。
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心室中隔欠損(心臓の心室に狭い穴があり、血液が通る音)
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動脈管開存症(生まれつき血管が閉じないで、大動脈から肺動脈へ血液が流れる音)
-
肺動脈狭窄、大動脈弁狭窄など血液の通り道が狭く、雑音が聞こえる
③血液成分の変化による雑音(機能性雑音)
心臓に構造の問題はなくても起きるとされています
-
貧血(血液が薄くなり音が乱れる)
-
発熱、興奮(血流が急増)
- 子犬や子猫(成長の段階や循環の問題で生じる)
👉雑音=必ず心臓病とは限りません。
犬さんで多い心雑音の原因
🔹僧帽弁閉鎖不全症(MVD)
小型犬・シニア犬に最も多い心臓病です
◎好発:チワワ、マルチーズ、トイプードル、シーズー etc
僧帽弁が年齢と共に傷み、逆流音が雑音として聴診されます。
進行すると咳や呼吸困難、失神がみられることもあります。
猫さんで多い心雑音の原因
🔹肥大型心筋症(HCM)
猫では弁の病気より心筋の病気が多いのが特徴です
◎好発:アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、メインクーンなど
心筋が分厚くなり、血流が狭くなるため雑音が発生します。
※猫は症状が隠れやすいため、雑音だけでなく無雑音でも心疾患がある場合があります。
心雑音が見つかったら何をする?
病気の有無・進行度を明確にするために以下の検査を行います。
| 検査 | わかること |
| 心エコー検査 |
弁の異常、逆流、心筋の厚さ、血流の向き
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| 胸部レントゲン |
心臓の大きさ、肺の状態
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| 血圧 | 高血圧の有無 |
| 血液検査 |
貧血、甲状腺など関連疾患
|
| 心電図 | 不整脈の確認 |
👉体調が安定していても、定期検査がとても大切です。
獣医師からのメッセージ
心雑音は「病気のサイン」である一方、見つけることで大切な心臓の健康を守れるチャンスでもあります。
-
今は症状がなくても将来のリスクが高い
-
病気を早期発見できる
-
定期検診で進行を防げる
心雑音を指摘されたら、慌てず、獣医師と一緒に今後の検査や治療計画を決めていきましょう。
ハグウェル動物総合病院の体制
セカンドオピニオン設置
今回の咳か、くしゃみか、逆くしゃみかの判断がわからないケースなど、的確な診断が必要な場合は、ハグウェル動物総合病院の循環器科をご予約ください。症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として身体検査、血液検査、心エコー検査、レントゲン検査、心電図検査、血圧検査などを実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
早期発見をしながら、どのタイミングで、どの投薬が望ましいのか、循環器認定医としっかり相談し決定することをお勧めいたします。
また、専門診療の循環器科(森山 寛大 獣医師・佐藤 貴紀 獣医師)を設けているため、セカンドオピニオンの受け入れも行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
ご予約・ご相談はお気軽に!
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