

【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
冬になると、犬さんの「足がふらつく」「震える」といった症状が増えてきます。寒さで筋肉がこわばったり、関節が痛んだりするだけでなく、実は神経や脊髄の病気が隠れていることもあります。放っておくと歩けなくなることもあるため、冬は特に注意が必要です。
今回は、そんな時に疑うべき神経疾患について詳しく解説します。
目次
「ふらつく」「震える」は何のサイン?
冬場によく見られる変化として…
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足元がふらつく・よろける
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後ろ足がクロスする・ナックリング(足の甲を地面につける)
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立ち上がりに時間がかかる
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震えながら歩く、足をかばう
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抱き上げるとキャンと鳴く
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階段やソファを嫌がる
これらは
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単純な寒さ・関節痛・筋肉のこわばり
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低血糖・低体温・痛み・恐怖
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神経疾患(脳・脊髄・神経・筋肉の異常)
のいずれでも起こりえます。
特に「ふらつき+痛み」「急に歩けない」「進行していく」場合は、神経疾患を強く疑います。
冬に注意したい代表的な神経疾患
① 椎間板ヘルニア(胸腰部・頸部)
小型犬(ダックス、フレブル、コーギー、トイプーなど)に多い病気と言われています。
冬に増えやすい理由
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冷えによる筋肉のこわばり → 急激な運動で、脊椎や関節への負担が増加する
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運動不足+体重増加
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散歩に行かず室内にいることが多く、フローリングで滑ることも。また、階段やソファの上下運動が負担を増加させます。
こんな症状は要注意
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抱くと鳴く、背中や首を触ると嫌がる
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段差を登らない、急に動きたがらない
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後ろ足がふらつく、交互に出せない
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後ろ足に力が入らず立てない・引きずる
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排尿・排便がうまくできない
★痛み+ふらつきが出た時点で受診が必要です。また、立てない場合は緊急性が高いです。
② 脊椎・脊髄疾患(腰仙部疾患・脊柱管狭窄など)
高齢犬や大型犬で多く、
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後肢のふらつき
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段差を嫌がる
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尻尾が上がらない
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排尿・排便トラブル
などが出ます。寒さで関節・筋肉が硬くなり、隠れていた症状が表面化しやすくなります。
③ 変性性脊髄症(DM)
中高齢のコーギー、シェパード、プードルなどで知られる進行性の脊髄疾患です。
特徴
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痛みはほとんどないのに、後ろ足がふらつく
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足先を擦る・爪が削れる
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ゆっくり進行し、その後前肢にも広がる
冬は段差や冷えでふらつきが目立ち、「歳だからかな?」で見逃されがちですが、早期に診断してリハビリ・環境調整を始めることが重要です。
④ 脳疾患(ストレスによる脳への負担など)
「足のふらつき」に加えて、
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片側に傾く(斜頸)
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ぐるぐる回る
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意識がぼんやり
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発作(けいれん)
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目の揺れ(眼振)
がある場合、脳の病気も疑います。
寒さそのものが原因ではありませんが、運動不足や寒さによるストレスにより発作やふらつきが増えたら要注意です。
⑤ 末梢神経障害・筋疾患
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足先を引きずる
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ナックリング
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宙を踏むようなぎこちない歩き方
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すぐ疲れる・座り込む
などは、末梢神経(脊髄から先の神経)や筋肉のトラブルでも起こります。
重症筋無力症など、一部の病気は運動後や疲労時にふらつきや震えが悪化するのが特徴で、冬の散歩条件で気づかれることがあります。
今すぐ受診してほしい危険サイン
以下の症状があれば当日中の受診、もしくは救急レベルです。
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急に立てない・歩けない
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後ろ足を引きずる/交差する/全く力が入らない
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抱いたり背中を触ると激しく鳴く
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排尿・排便が出ない、もしくはダラダラ漏れる
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発作(けいれん)、意識がぼんやりしている
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頭が傾いている、目が揺れている、同じ方向にぐるぐる回る
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数時間〜1日で症状がどんどん悪化している
これらは放置すると、歩行障害が永久に残ることもあります。
動物病院では何をするの?
神経疾患が疑われる場合、獣医師は次のように原因を絞り込みます。
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神経学的検査(どの部位の障害かを評価)
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痛みや反射のチェック
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血液検査(炎症・代謝異常など)
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レントゲン検査(骨や椎間板の変化の確認)
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必要に応じて CT / MRI / 脊髄造影 / 脳脊髄液検査
を行います。診断により、
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内科治療(安静、痛み止め、ステロイド・免疫抑制剤 など)
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外科手術(椎間板ヘルニアなど)
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リハビリ・サポーター・車椅子
などを組み合わせて治療方針を立てます。
ご家庭でできるチェック&やってはいけないこと
観察ポイント
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いつから?突然か徐々にか
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前足か後ろ足か、片側か両側か
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痛がっているか(触ると嫌がる、震える)
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段差やジャンプの様子
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排尿・排便の変化
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動画撮影(診察時に非常に有用)
を行っていただき、早期発見と共に正確な情報をご提供いただくことで、速やかに診断と治療を行うことができます。
NG行為として
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様子見で数日放置する
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自己判断で人間用の湿布・痛み止めを貼ってしまう
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無理にマッサージ・ストレッチを行う
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高い段差をそのままにする
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痛がっているのに散歩を長くする
怪しい時は早めに受診+安静第一が鉄則です。
冬にできる予防&ケア
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フローリングにマットやカーペットを敷いて滑り止めをする
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ソファ・ベッドにはステップやスロープを設置する
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体重管理として、増加させない
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室温を一定に保ち、急な冷え込みを避ける
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無理のない適度な運動で筋力維持する
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シニア犬・ハイリスク犬(ダックス、コーギーなど)は、早めの健康診断と歩き方チェックする
まとめ
冬の「足がふらつく・震える」は、
「寒いだけ」「歳だから」ではなく、神経疾患のサインであることがあります。
特に、
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急な変化
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痛み
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進行するふらつき
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排泄の異常
があれば、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
「少し変だな?」と思ったら、動画を撮って、そのうえで動物病院に相談してください。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
神経症状に対して迅速な対応を行います。
必要な検査として神経学的検査(反応・歩様など)、血液検査、CT(脳構造評価)、(理想的には)脳波検査、CSF(髄液)検査、MRI検査を実施して、原因を特定し適切な治療を行います。
特に「けいれん」「発作」「失神」などのケースでは、的確な診断が非常に重要です。
また、専門診療の神経科(中津 央貴獣医師)を設けているため、セカンドオピニオン、さらには繰り返すけいれん発作など、治りが悪い症状の受け入れを行っております。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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