【専門診療】中津 院長
【担当科目】総合診療科・神経科・腫瘍科
犬さんや猫さんの腫瘍の診断では、早期発見と進行度の正確な把握が治療方針を決める上で非常に重要です。特に、腫瘍の位置や広がり、転移の有無を正確に確認するためには、CT(コンピュータ断層撮影)が大きな役割を果たします。
ここでは、CT検査が特に推奨される腫瘍の種類と、その理由をわかりやすく解説します。
目次
1. 鼻腔内腫瘍
概要:
犬さんや猫さんの鼻腔内腫瘍は、鼻の中に発生する腫瘍の総称です。高齢になるほど発生率が高まります。代表的な腫瘍には次のようなものがあります。
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鼻腔内腺癌(Adenocarcinoma)
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扁平上皮癌(Squamous Cell Carcinoma)
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線維肉腫(Fibrosarcoma)
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リンパ腫(Lymphoma)
主な症状
鼻腔内腫瘍の初期症状は風邪様の症状やアレルギーと区別がつきにくく、発見が遅れやすいことが問題です。また、鼻腔内腫瘍だけに起こる症状はなく、歯科疾患や呼吸器疾患など他の症状と似通っていることもあります。
主な症状には以下があります。
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鼻出血:鼻から出血が見られます
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呼吸器症状:鼻汁などにより鼻詰まりが見られ、くしゃみや咳が見られます
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膿性鼻汁:膿んでいる鼻汁が見られることがあります
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顔面変形など:顔の腫れや変形、眼の突出が見られることがあります
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呼吸音の変化:進行した場合に肺への転移が起こり、肺の音に異常が見られます
これらの症状が数週間以上続く場合は、腫瘍の可能性も考え、早めの検査が推奨されます。
2. 脳腫瘍
概要:
脳腫瘍は、脳そのものあるいは脳を包む膜や周囲の組織から発生する腫瘍の総称です。犬さんでは高齢になるほど発生率が上がり、猫さんでは犬ほど多くありませんが、まれに発生します。
代表的な脳腫瘍には次のようなものがあります:
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髄膜腫(Meningioma)
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グリオーマ(Glioma)
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下垂体腫瘍(Pituitary tumor)
主な症状
脳腫瘍の症状は腫瘍の位置・大きさ・進行度によって異なりますが、次のようなサインが多く見られます。
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繰り返す発作(てんかん発作)
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性格・行動の変化(怒りっぽい、ぼんやりするなど)
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視覚障害(物にぶつかる、視線が合わない)
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ふらつきや旋回運動(同じ方向にくるくる回る)
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食欲・飲水量の変化(下垂体腫瘍の場合)
これらの症状が徐々に進行するのが特徴で、発作がきっかけで受診し、検査で腫瘍が見つかることも少なくありません。
3. 骨腫瘍
概要:
骨腫瘍は、骨に発生する腫瘍の総称で、犬さんでは比較的よく見られ、猫さんではまれですが発生します。特に犬さんでは悪性度が高い腫瘍が多く、早期に肺などへ転移しやすいことが知られています。
代表的な骨腫瘍には以下があります:
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骨肉腫(Osteosarcoma, OSA)
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軟骨肉腫(Chondrosarcoma)
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線維肉腫(Fibrosarcoma)
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多発性骨髄腫(Multiple Myeloma)
主な症状
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跛行(足を引きずる):痛みにより歩行が困難になる
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骨の腫れ・腫瘤形成:触るとしこりを感じることがある
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骨折(病的骨折):弱い力で骨折することがある
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元気消失、食欲低下などの全身症状
特に、跛行が長期間続く場合やしこりが大きくなっている場合は、早めの受診が望まれます。
4. 胸腔内腫瘍
概要:
胸腔内腫瘍とは、胸の中(肺・心臓・縦隔・胸膜)に発生する腫瘍の総称です。胸腔には心臓や肺、気管、リンパ節などがあり、ここに腫瘍ができると呼吸や循環に影響を与えることがあります。
主な胸腔内腫瘍には以下が含まれます:
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胸腺腫(Thymoma)
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リンパ腫(Lymphoma)
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中皮腫(Mesothelioma)
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肺腫瘍(Primary Lung Tumor)
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血管肉腫(Hemangiosarcoma)
主な症状
胸腔内腫瘍は初期症状が目立ちにくいことがありますが、次のような症状が見られることがあります:
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呼吸困難:胸水が貯まることで肺が圧迫される
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咳:肺や気管に近い腫瘍で発生する
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食欲不振・体重減少:進行例でよく見られます
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嗜眠(元気消失):全身状態が悪化したときに現れます
特に胸水貯留(胸に水が溜まる状態)は、命に関わる呼吸困難の原因となるため、早期診断が重要です。
その他にも
犬さんと猫さんの腫瘍におけるCT検査の有用性
なぜCTが必要なのか
犬さんや猫さんの腫瘍診断では、腫瘍の正確な位置・広がり・転移の有無を把握することが治療方針を決める上で重要です。従来のレントゲン検査だけでは、腫瘍の詳細な評価が難しいことが多いため、近年ではCT(コンピュータ断層撮影)の活用が進んでいます。
CTは体を輪切りにした画像を撮影し、それを3次元的に再構成することで、腫瘍を立体的に可視化できる検査です。
CT検査が有用なポイント
1. 腫瘍の正確な位置と広がりの把握
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鼻腔内腫瘍や脳腫瘍、胸腔内腫瘍など、骨や臓器が複雑に入り組んだ部位ではレントゲンでの評価が難しいことが多いです。

鼻腔内腫瘤
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CTでは骨や軟部組織を詳細に描出でき、腫瘍がどこまで浸潤しているかを正確に判断できます。
2. 転移の有無の確認
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肺やリンパ節への転移は治療方針に大きな影響を与えます。
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CTは数mm単位の小さな転移巣も検出でき、外科手術や放射線治療の適応を正しく判断するのに役立ちます。
3. 手術・放射線治療計画への応用
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腫瘍の切除範囲の決定や放射線照射の精度向上にCT画像が欠かせません。

右眼瞼腫瘤
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腫瘍と周囲の重要な血管・神経の位置関係も把握でき、術後合併症のリスク軽減につながります。
4. 治療効果の評価
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手術後や化学療法・放射線治療後の再発や残存腫瘍の確認にもCTは有効です。
ハグウェル動物総合病院 横浜鶴ヶ峰院の体制
セカンドオピニオン設置
ハグウェル動物総合病院では、腫瘍疾患に直面した飼い主様と動物さんに、より良い選択をしていただけるよう セカンドオピニオン外来 (専門診療の腫瘍科、中津 央貴獣医師)を設けています。
腫瘍は種類や進行度によって治療方法が大きく異なり、外科手術・化学療法・放射線治療・緩和ケアなど多様な選択肢があります。そのため、診断や治療方針について複数の視点から検討することが大切です。
当院ではCTなどの高度画像診断を用い、腫瘍の性質や広がり、転移の有無を的確に把握したうえで、専門的な知見をもとに治療方針をご提案いたします。セカンドオピニオンを通じて、飼い主様が納得し、安心して治療に臨んでいただけることを第一に考えています。
横浜市から川崎・大和エリアまで、地域の皆さまの“かかりつけ”として、安心の獣医療をお届けします。
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